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107『小市民シリーズ』、第6話「シャルロットだけはぼくのもの」、感想

 前回を新章一回目と思ったのは初回のように台詞のあるキャラクターが(本作にしては)多かったからで。しかし公式では今回の「トロピカルカフェ事件」の一発目、確認したところの前章の「いちごタルト事件」の二話目「おいしいココアの作り方」とちょっとした類似点がある。
 前回はアーケード付きの商店街で小鳩くんと小佐内さんが会うところからでしたが、今回は場所が夜の夏祭り、そして小佐内さんが不平を述べるという類似がある。そして本編は時と場所を変えた日常のなぞ解きという点も。しかし前回の犯人は堂島くんだったけど今回は小市民同盟の相棒、小鳩くんと言う決定的な違いがある。
 そう、今回謎を解くのは小佐内さん。それはまさに倒叙ミステリ、ハウダニット(Howdunnit)型、『刑事コロンボ』で散々使われたミステリの小気味いいパロディでした。
 小鳩くんは小佐内さんにパシリをやらされることになり、第一弾が十番目のケーキ屋さんで二種類、六個のケーキを買ってくること。しかし四個と指示されたケーキは三個しか残っておらず、小鳩くんはケーキを五個買って小佐内さんの家にお邪魔することになる。しかしテーブルを挟んで小佐内さんとケーキとコーヒーを戴く直前、電話があって小佐内さんは席を外すことになる。
 小鳩くんの「犯罪」は小佐内さんの電話が長引いたことから、三個しか買えなかったシャルロットケーキを一個先に食べてしまい、隠蔽工作を図ることから始まる。別に正直に一個食べたと白状すればドラマがない代わり、小畑くんが追いつめられることもなかった。しかし高校入学から様々な事件を解決してきたという自惚れから、自分なら完全犯罪できると驕ったのでしょう。もしかしたら小佐内さんの電話、長かったといっても小鳩くんが悪戯を思いつくほど退屈になる長さではなかったのかも知れない。そう、小佐内さんは小鳩くんを図った、試したという想像も十分可能。これまでの言動と態度から小佐内さん、その幼い風貌に似合わず「狙った獲物は逃がさない」計算高さと執念を持ってると示されてるから。
 結局オスの狐の小賢しさはメスの狼の執念深さにあっさりと負けてしまう。というより小佐内さん、戻ってすぐの小鳩くんの言動からすぐに隠しごとをしたと気付いたはず。小佐内さんが言及しないので私も説明しませんが、敢えて小鳩くんの最初の失態には触れず、ハンカチの件から説明したのは小佐内さんの優しさか、狡猾さか。どちらとも取れる、ということは小佐内さんに両方の感情があると想像できる。私はそんな小佐内さん、フィクションのキャラクターとして大好きです。

参考:フーダニット - Wikipedia

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