094 『負けヒロインが多すぎる!』、感想第一回目
第一回の感想シリーズ、締めくくりは『負けヒロインが多すぎる!』。二週目が初回でしたがその華麗な背景美術とそれに見合うキャラクターの細やかな演技に驚いたものです。そして本作のファーストカットがタイトル画像。濃淡のある青空に浮かぶのは陰影を持つ雲。発達しつつある入道雲と私は思いました。
この後の二カット目から、(後で主人公とわかる)少年の独白が続く。それだけならもともとラノベだし、恋愛論を打とうとラノベ、アニメを楽しんでもらうための指針表明なので定型ではある。しかし「もし、俺にそんな青春があるのなら、涙にくれるヒロインを目の前にしたのなら、俺がラノベの主人公なら、そんな時、何を思うのだろか」と、ラノベの主人公がラノベを相対化した点に、本作「マケイン」の特異さがある。
だから特殊OPが終わった後の本編がラノベを読んでいる主人公というのも理に適ってる。
しかも読んでる箇所、主人公が妹に甘えてる場面。メタで言えば作為で悪意ある始まり方。
追い打ちをかけたのが同じ高校の男女の場面に出くわしたこと。少年は少女に発破かけられる形で出て行ったが、それは少女が自分から(本当は望んでいないのに)負けヒロインになる展開だった。
その後で温水和彦のテーブルに八奈美杏菜が押しかけてきて、袴田草介との身の上話を打ち明ける。そこまでは大泣きされても温水くんは許せる範囲と思ったはず。
しかし杏菜さんが食い物を勝手に注文したため、温水くんの運命、展開がおかしくなる。
でもこの金額まで温水くんに弁当を作ってもらえるという、杏菜さんとの縁が出来たのでした。そのやり取りは校舎の外付けの非常階段でだったのですが、参考までにその中の一カットを取り上げます。
私が得意げになって主張している青春の象徴である青い空と白い雲、二人の背後にちゃんとあるのです。考え付いたことしか画に出来ない、押井守が言うように実写では偶然撮れたショットなどはないのがアニメ。だからこのシーン、アニメスタッフの悪意にも似た作為があると考えるのが自然かと。『タッチ』や『ヤマノススメ』に象徴される爽やかで元気な青春、屈託ない目で後ろを振り返ればそんな青春を発見できるはずなのに、邪念の目では前を見てもラノベのような青春は見つけられないと。
上のカットは校舎の屋上で杏菜さんが失恋を改めて身体でわかったことを、温水くんに告げた後の行動。どんなに悔しくて悲しくても、やはり青い空と白い組雲はある。上ではアニメスタッフの悪意と記しましたが、キャラクターへの限りない愛情でもあると思う。誰でも気づけば、青春を手に入れられると。
本当に素晴らしい思想、テーマのアニメ、原作読まずに視聴したいと思います。
しかし、
こいつ誰だ? 非実在の脳内妹でしたというオチでも納得するぞ。