180 『アオのハコ』 第七話「一つちょうだい?」
雛ちゃんの新体操の県予選が終わった後の、千夏先輩の女バドの県予選直前から一回戦、そして大喜くんのシングルスの県予選直前までの話し。細かいエピソードの積み重ねで、大喜くんと千夏先輩の気持ちが丁寧に描かれた回でした。
最初に大喜くんが登校前にカレンダー、大喜くん本人と千夏先輩の予選日程を確認した後、大喜くんと針生先輩のダブルスのペア同士のゲーム。終わって佐知川の兵藤さんの伏線を貼った後、外に出て女バスの五人とちょっとした語らい。こういう何気ない会話、それにも関わらず人の気持ちを表現できるエピソードになってること、まさにあだちマンガの美しさでした。
多分その日の帰り、大喜くんが千夏先輩の荷物を持ってあげる場面は『タッチ』に敬意を表したところかと。私が真っ先に思いついたのは「NGだ。最初のコマからやり直す。俺は助けないで走り去る」だったのです。結局この場面は由加ちゃんの方が平謝りしておぶってもらったのですが、『アオのハコ』では本当に「最初から」やり直して笑わせてもらいました。
そのテイク2から始まる会話、私は 観てから原作読みましたが、アニメは声優の素晴らしい演技でよりコメディになって楽しんだのでした。千夏先輩が感謝するところも、多分大喜くんへの想いも載せているから、美しい台詞と思えました。そして神社、確かにバスケに夢中なら野山を駆けまわることがないから、自然が苦手という千夏先輩のお茶目は納得できました。
そして女バスの初戦。78対54で勿論栄明が勝ったけど、それを籠原学園が撮って観ているところに千夏先輩と渚が遭遇した。渚が怒ってくれたから千夏先輩は冷静になれたと思う。しかしもっと深い理由があるかどうか、ここではわからないようになってる。
その一端が表れたのが大喜くんと一緒に、渚ともう一人の女バス仲間が会話してるのを聞いた後の場面。
「やだ。気にする/気にして、そして勝つの」
千夏先輩の勝気なところが初めて露になった箇所と思います。それまでは女バスや大喜くんや針生くん、栄明の仲間とのやり取りだったので陽気ではつらつ、元気な面が描かれることが多かったと思うけど、こと昨年のインターハイを阻まれた籠原に対しては千夏先輩も怒りの感情を持つんだと新しい発見の場面でした。まさに静かに怒るキャラクター。
次は大喜くんが針生先輩から1ゲーム取った場面。私の二次小説では『アオのハコ』で重要な場面と考え、大喜くんからの受け売りとして千夏先輩の言葉として描いた箇所です。その後は私の二次小説では省いた、大喜くんと匡くんとの千夏先輩についての話し。
大喜くん(この時点での)の認識では「万が一フラれたら」なんだ。千夏先輩の方も自分に気があると思ってたんだ。千夏先輩の自分への接し方からそう思うのは納得と、やはり大喜くんは気配りができる人と、却って好感をもてるエピソードでした。
そしてコンビニ。先生の奢りで唐揚げを買って外に出た後、雛ちゃんと千夏先輩が待ち構える形になっていた。雛ちゃんは有無を言わさず奪った爪楊枝で刺したものを口に入れ、千夏先輩は大喜くんに刺してもらったものを受け取って口に入れる。アニメになってあからさまになったけど、千夏先輩は受け取る時、大喜くんの指先に触れるか触れないか。本当に千夏先輩は大喜くんに触れたい欲があるとわかる、微笑ましい場面でした。そして、
「これで試合も頑張れるよ」
千夏先輩、大喜くんが自分に気があるとわかってるから、この言葉がどれだけ破壊力があるかわかるはず。大喜くんにとってはほとんど小悪魔。千夏先輩と大喜くん、それぞれの部活とお互いへの想いについて、様々なことが新たに描かれた素晴らしい回でした。