イラストに取り入れたい光と空間表現
イラストに取り入れたい要素、テクニックを自分なりにまとめました。
■影を手前に置く
イラストを描く際の小技の一つに「影を手前に置く」という手法があります。これは非常に効果的なビジュアル表現なのですが、なぜその効果があるのか解説していきましょう。
まず「手前が影で後ろが光る」ことで、奥行きの遠近感が生まれます。影と光の明暗差が近くと奥を区別しやすくしてくれるのです。空間表示に大いに役立つテクニックといえます。
光の方向については、斜光を当てるのがポイント。正面光の場合、影が後ろに回りこみにくくなります。斜め前方から差し込む光が遠近効果を出しやすいでしょう。
影の形状ですが、主体から影が尾を引いて伸びているイメージ。是非参考に形状を調整しつつ、長さや透明度を加減して立体感を演出しましょう。
加えて、影の色合いも重要です。主体の色が反映されていると説得力が増します。例えば青空と緑樹の影など、環境を汲んだ色がベストです。
デメリットとしては逆に手前に影がある自然な場面でないと違和感になるので注意が必要です。
■コントラストに注意
影を設置したことだけで明暗の差が十分に出ているとは限りません。影自体が色彩的に主体とコントラストが弱いと効果が薄れてしまいます。
例えば、緑色の樹木の影だとしても、その影の部分はかなり濃い緑色にする必要があります。はっきりと色を付けることでコントラストが生まれ、明暗の差が際立ちやすくなります。
単純に「影を付ける」だけでなく、影部分の発色を主体よりも濃くすることがポイント。明度、彩度共に主体より高めることでメリハリを付けましょう。
■使う色数のコツ
イラストを描く際、最初に気になるポイントの一つが「どのくらいの色を使えばいいのか」ということ。少な過ぎても多過ぎても印象が悪くなります。
コツは、メインとサブの色を定め、その中間をグラデーションさせること。青と黄色のメイン2色をベースに、その中間の緑系統の色を徐々に変化させていけばいいわけです。
特に温色と寒色の移り変わりは、上品で幻想的な世界観を作品に与えてくれます。ぜひ積極的に取り入れたい技法だと言えるでしょう。
■散る、舞うは積極的に使う
イラストの中で「散る」「舞う」といった動的な表現は、効果的に用いるべき大切な手法だと考えます。
背景に桜の花びらを舞わせたり、前景で草むらの葉っぱが風に舞ったりする演出を入れることで、以下のようなメリットがあります。
・空間の奥行き感や遠近法が表現しやすくなる ・動的な表現で生命感と動きのある風景が描ける ・視線の流れをコントロールしやすくなる
特に花びらや水しぶきなどは、重力に逆らう浮遊感も演出しやすく、空間の大きさを感じさせます。
■光源を意識する
キャラクターの正面や斜め上方向から当てる光と、背後や下方向からの逆光では、印象が完全に違ってきます。
前者の場合は、温かみや安心感のある明るいイメージになりやすいでしょう。後者の逆光では、厳しさや荒々しさ、切迫感が増す効果が期待できます。
■イラストにおける照明効果
【プレーンライト】 主に上方または前方向からの平行光。地味ですが人物や物の立体感が出しやすい照明。
【フロントライト】正面への照明効果。主体の表情や質感がクリアに捉えられ真正面からの印象が出る。
【エッジライト】 主体の輪郭線に添って光を当てる効果。コントラストの強調と浮き立ち効果が期待できる。
【アンダーライト】 下方向からの逆光照明。不気味な印象を与えたり、主体の表情を際だたせる効果がある。
【スポットライト】 特定の限られた範囲だけを強く照らす照明技法。アクセント効果で存在感を高められる。
■反射光の表現
反射光とは、ある物体に光が当たり、その光が跳ね返ってできる光のことです。
光の当たっている面から離れた側面や上部には、寒色系のブルーの反射光の影を入れることが多い。
下側など光沢のある部分には、暖色系のオレンジ等の反射光を入れるとリアルになるようです。
このように反射光の色味を影の位置に応じて変えることで、光の当たり方を立体的に表現でき、リアリティのある質感が表現できます。
■空気遠近法とは
空気遠近法のポイントは、遠方の物体ほど寒色系の色合いで描き、手前の物体ほど暖色系の色合いで描画することです。
これは、現実の大気と空気の濃淡による影響を表現した手法で、遠くの山が寒色寄りに見えたり、遠景が霞んで見える現象を再現しています。
このため、空気遠近法を使うことで、自然な遠近感と立体感をイラストに付加することができるのです。
背景の山々を寒色で、近くの木々を暖色で描くと配色すれば、メリハリのある遠近表現が可能です。
■透視図法とは
【一点透視図法】
一点透視図法は、水平線上の一点に全ての線が集まる構図のことです。鉄道のレールのように、奥に行くほど線が寄り集まる効果が生み出せます。
遠近感こそ出ますが、左右のバランスが取りづらいのが難点です。正面の風景や建物の概観を描くのに向いています。
【二点透視図法】
二点透視図法は、水平線上に2つの消失点を設定し、左右の線をそれぞれの点へ集中させる構図法です。
一点法より左右のバランスをとりやすく、自然な幅感と奥行き感が表現できるメリットがあります。
【三点透視図法】
三点透視図法は、水平の左右2点+上下の1点の計3点を消失点として設定する構図法です。 一番遠近感や立体感が得られる方法です。
■青空の表現の仕方
青空を描こうとすると、イメージよりも鮮やかな色にしてしまいがちです。しかし実際の大気から透過して見える青空は、思っている以上に明度・彩度共に薄いのです。
そのため、イラストの青空も実際の目に見える色より少しくすんだ色合いにしてあげることをオススメします。水色よりも、鉛筆色に近いような淡い青がリアルな色合いです。
一方で、季節感や印象的な場面を描きたい時は、ある程度恣意的な表現が必要です。例えば夏空の場合は強めの水色で表し、雲を真っ白にすることで夏らしさを演出できます。
■夕暮れの表現の仕方
夕暮れの空を描く際、グラデーションの幅を広げるという手法があります。例えば黄色からオレンジ、ピンク、紫へと多段に色を変化させることで、ドラマチックな夕焼け空が描けます。
またコントラストを意識することもポイントです。空と山や建物などの対比を強めることで、光の印象が際立ちやすくなります。
そのほか、空自体にグラデーションがなくても、光が当たる部分だけ色を入れるという手も。山肌や建物の端などを遠くの空の色で着色することで開放感が出ます。
夕焼けの光の表現では、明度だけでなく彩度を高める表現がオススメ。メリハリのある色使いが印象的な雰囲気を生むでしょう。
■日没の表現の仕方
日没時の特徴として、空から下方向へ夜の色が広がっていくイメージがある点です。そのため、画面上部を夜の色(青紫)、下部を昼の色(黄や赤)と分け、グラデーションで繋げるのがリアルな表現です。
夜部分は単なる青ではなく、若干の赤味を入れることで夜空らしい幻想的な雰囲気が出ます。ただし赤みが強すぎると不自然なイメージに。好個のバランスがポイントです。
また日没時は対象が暗くなりがちなので、コントラストの状態に注意が必要です。例えば銀河を描き入れることで、夜空の明るさや描写効果を補完できるでしょう。
■人物画は全身を描かない
人物全身を描いてしまうと、キャンバスのスペース的に取りにくくなったり、人物が小さく描かれがちになります。
一方で、腰辺りで切って上半身のアップにすることで、以下のメリットがあります。
人物の顔や表情を大きく描きやすい
手元の小物など細かい描写がしやすい
空間の余白が取れるため背景を描きやすい
特に背景との調和という意味でも、人物のアップがおすすめです。イラスト全体のバランスも重要だからです。
■キャラクターの全身絵を描きたければ
キャラクターの全身を描く際のコツとして、「宙を落下している様子」や「空を飛んでいる様子」を描くことが効果的です。
浮遊している状態や落下している状態を描くメリットは、キャンバスに人物が収まりやすいことです。宙に浮いている状態なら画面に収めやすく、空間的な制約を受けにくいでしょう。
加えて、このようなダイナミックなポーズは見た目の印象も良いでしょう。着地の瞬間でドラマチックな表情を浮かべたり、宙返りをしたりとアクロバティックに動きを描写できます。
浮遊や宙返りなど、自然な姿勢から外れたポーズは人物のキャラクター性も際立たせられるでしょう。ぜひ全身描写の際にはこうした演出を試してみましょう。
■三角を用いた構図
イラストの構図において「三角形の形」を意識することは、視覚的な安定感を生むうえで効果的です。
三角形は非常に安定した幾何学的形状です。三角構図もまた、人物や要素のバランスを安定させる効果があります。
さらに三角形の3つの頂点や辺にそれぞれアクセントを置くことで、視線の流れが明快になります。提示したいポイントへスムーズに導く演出ができるでしょう。
以上のように、三角構図はバランスも取りやすく目線の誘導効果に優れていることから、視覚的な安心感や信頼感を与えやすいと言えます。主要なモチーフの存在感も際立ちやすいでしょう。
参考資料はこちらです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?