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divest=投資を引揚げる/減らす | 教科書に出てこないニュース英語 《フランス・イスラエル関連》

イランの国際ニューステレビ局 PRESS TVのウェブサイトで、2024年8月22日に配信された記事の見出しで使われていました。

French insurance giant Axa divests from Israeli banks
フランスの保険大手アクサ、イスラエルの銀行から撤退

https://www.presstv.ir/Detail/2024/08/22/731881/French-insurance-company-Axa-divests--20-million-from-Israeli-banks--Report


◾️'divest'を辞書で引くと

divest [divést | dai-]
[動]他
1…から(…を)奪う,取り上げる[除く]≪of≫
1a((やや古/戯))〈人などから〉(服などを)脱がせる,はぐ≪of≫
2《法律》(人などから)〈財産・権利などを〉剥奪はくだつする≪of≫;…を譲渡する(◆《法律》では devest のつづりも用いる)
3〈会社から〉(子会社・持ち株などを)売却[分離]する≪of≫

goo辞書 - 小学館 プログレッシブ英和中辞典

goo辞書では他動詞の用法しか書かれていませんが、この見出しでは自動詞です。
あれれ!?

名詞形のdivestmentをMacOS付属の辞書(ウィズダム英和)で引くと

di・vést・ment 名詞⦅米⦆ = disinvestment.

とあるので、disinvestを引いてみると、
こちらには自動詞の用法がありました。これだ!

disinvest [dìsinvést]
[動]自
投資を引きあげる;運用資産額を減らす;固定資産を削減する

語の成り立ちは、dis-(否定を表す)+invest(投資する)です。

投資を全て引き揚げたのか、減らしたのかは、本文を見ないとわかりません。
どうなのでしょう?


◾️市民運動の結果、アクサは戦争犯罪に加担する3銀行から資金を引揚げた。

アクサといえば、日本では「自動車保険のアクサダイレクト」で馴染みがある会社です。

まず、見出しとリード文を見くらべておきましょう。

<見出し>
French insurance giant Axa divests from Israeli banks
フランスの保険大手アクサ、イスラエルの銀行から撤退

<リード文>
French insurance giant Axa has withdrawn $20 million worth of investments in three Israeli banks, which the United Nations has accused of being involved in the construction of illegal settlements and the theft of Palestinian resources, corporate accountability group Eko says.
フランスの保険大手アクサは、国連が違法な入植地の建設やパレスチナの資源の盗用に関与していると非難している3つのイスラエルの銀行への2000万ドルの投資を撤回したと、企業の説明責任を追及するグループ「エコ」が発表しました。

大見出し(↓)に出てくる言葉が言い換えられています。
・divests → has withdrawn $20 million worth of investments 
・Israeli banks → three Israeli banks
また、次の情報が追加されています。
・3つのイスラエルの銀行は、違法な入植地の建設やパレスチナの資源の窃盗行為に関与していると国連が非難している
・企業の説明責任を追及するグループ「エコ(Eko)」が発表した

では、本文に進んでみましょう。
長くなりますが、「神は細部に宿る」ので…

・アクサは、ハポアリム(Hapoalim)銀行、ルーミ(Leumi)銀行、イスラエルディスカウント(Israel Discount)銀行から「明確で、早急な、そして意図的な」投資引揚げを行った。

・2023年9月30日から2024年6月24日までの間に、株式250万株(約2040万ドル相当)を売却した。

・パレスチナ支持の活動家たちによる継続的なキャンペーンを受けて行われた。

・このグループの報告書によれば、アクサは少なくとも2022年12月31日以降、ファースト・インターナショナル・バンク・オブ・イスラエル(First International Bank of Israel)やミズラヒ・テファホット(Mizrahi-Tefahot)銀行への再投資も拒否しているとされている。

・この2つの銀行は、2019年に出された、イスラエルの戦争犯罪におけるアクサの財政的共謀に関するEkoの報告書の中で批判の対象にされていた。

・その報告書では、アクサがルーミ銀行にまだ「(痕跡と言えるほどの)わずかな」投資を保有しているものの、その「残存額」は報告や内部会計の処理がまだ行われていないためであり、これを完全な撤退と見なしているとしている。

・また、アクサは2019年にイスラエルの兵器会社エルビット・システムズ(Elbit Systems)からも完全に撤退していた。

・エコの上級キャンペーン担当者であるダフネ・クローニン(Daphne Cronin)氏は、アクサの撤退を称賛しつつも、アクサは「完全には免罪されていない」と述べた。

・彼女は「この成果は、イスラエルの戦争犯罪の共謀関係にある金融機関に対する市民の圧力と市民運動の結果を示すものである。他の金融機関にもイスラエルのアパルトヘイトと戦争犯罪への資金提供が良い投資でないという信号を送ることを願っている。アクサはまだ兵器会社への投資をしており、投資引き上げを求め続ける」と語った。

<背景解説情報>
・1967年のイスラエルによる西岸地区と東エルサレム(East al-Quds:アル=クッズ)の占領以来、230以上の入植地が建設され、60万人以上のイスラエル人が住んでいる。

・国際社会は、テルアビブによる領土の占領以降、西岸地区に数百の入植地が建設されていることを国際法やジュネーブ条約に違反していると見なしている。

・パレスチナ人は、西岸地区を将来の独立した国家の一部とし、東エルサレムをその首都とすることを望んでいる。

3銀行からは「実質的には完全撤退」した、という内容でした。

     ********

イランは、イスラエルによるパレスチナに対する攻撃に関し、このような運動を積極的に取り上げようとしていることが伺えます。

イランは、イスラエルを承認していません。
また、イスラム教を国教としています(スンニ派ではなく、少数派であるシーア派のイスラム教を国教としている唯一の国)。
ちなみに、主要な言語も、他の中東の国々とは違い、アラビア語ではなくペルシャ語です。
( 外務省「イラン・イスラム共和国(Islamic Republic of Iran)基礎データ」https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iran/data.htmlより)

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Ekoは、
環境を尊重し・労働者を正しく待遇し・民主主義を尊重する企業
…から購入し、
…をサポートし、
…に投資する

ことで、
強大になりすぎたグローバル企業の力をコントロールしようとする団体
とのことです。↓

このようなNGOのニュースを見ると、
消費者・投資家としての力と責任を市民が持っていることを認識させられます。











































































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