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loophole=(法律などの)抜け道 | 教科書に出てこないニュース英語 《スイス・牛乳》

「スイス・牛乳・抜け道」ーこの3つのキーワードでどういう話かお分かりになったとしたら、あなたは牛乳業界の関係者に違いありません!

この単語、'loophole'は、スイスの公共放送 swissinfo.chのウェブサイトで2024年10月8日に配信された記事の見出しで使われていました。

Raw milk: regulatory loophole gives Swiss the freedom to skip pasteurisation
生乳: 規制の抜け穴がスイスに低温殺菌処理を省く自由を与えた

出所↓

この見出しでみなさんおおよそ内容が想像できたのではないでしょうか。

まず、英単語'loophole'から見てみましょう。


◾️'loophole'がなぜ '抜け道' なのか

loophole を辞書で引くと…

lóophòle  社会人必須レベル
[名]C
1(監視・通風用の)小窓;(要塞さいの)狭間はざま,銃眼,(一般に)開き口,すき間
逃げ道,抜け穴[窓];(法律などの)抜け道

goo辞書 ー小学館 プログレッシブ英和中辞典

holeにloopがつくとなぜこういう意味になるのでしょう?
語源辞典の解説は…

…Medieval Latinの loupa、lobia は、中オランダ語の lupen「見張る、じっと見る」のような大陸ゲルマン語源から来た専門用語かもしれません。
比喩的な意味での「出口、逃れる手段」としての使用例は1660年代からあります。

https://www.etymonline.com/search?q=loophole

なるほど!
見張り用の小窓→抜け穴→抜け道 
という繋がりなら納得できそうです。

もう一つの長い単語pasteurisationの語源も意外でした。

「加熱殺菌によって殺菌する」という意味のpasteurizeは、ルイ・パスツール(Louis Pasteur)が開発した、食品、牛乳、ワインなどを加熱処理して殺菌する処理方法に因んで、1881年に使用されました。この処理方法は、その食品中の微生物の大部分を殺菌することを目的としています。すべてを殺菌するsterilizeとは区別されます。

https://www.etymonline.com/search?q=pasteurize

あのフランスの生化学者・細菌学者パスツールの名前が動詞化されていたのでした!

ちなみに発音は、[pǽstʃəràɪz]です。


◾️牛乳の殺菌に関する法律とスイスの抜け道とは?

記事の内容を見てみましょう。

[リード文]
かつて危険と見なされていた生乳が、今では再び人々の冷蔵庫に戻っています。世界中の法律が適応しつつありますが、スイスではラベル表示と個人の責任に依存しています。
[本文]
アメリカの共和党の政治家、ジェイソン・シュルツが、生乳または非低温殺菌乳の販売を合法化するために、アイオワ州で法案を通すのに16年かかりました。

<中略>

アメリカ同様、生乳の販売に関する法律は、国によって異なります。オーストラリア、カナダ、中国、スコットランドでは販売が禁止されていますが、ヨーロッパのほとんどの国や日本では、一定の衛生基準を満たし、ランダムな検査を受けることに同意した農場が販売できます。ブラジルでは、低温殺菌乳の安定供給がない辺境地域を除き、生乳の販売は禁止されています。

スイスでは理論的には生乳の販売は違法ですが、特定の条件下で販売することができます。スイスの食品規制では、生乳を宣伝したり、直接消費用として販売することを許可していません。スイスで販売されるすべての牛乳は、少なくとも72°C(161°F)で15秒間加熱され、その後急速に冷却される低温殺菌が必要です。しかし、アルプスの国スイスには、国内に散在する農場が運営する約400台の生乳自動販売機があります。

スイス連邦食品安全・獣医局の広報担当者は、「スイスでは、生乳は消費に適していないと見なされており、賞味期限、保存条件、適切な加熱方法を消費者に知らせる場合にのみ供給されることができます」と電子メールで回答しました。

このようにして、スイスの酪農家は自動販売機に「牛乳を加熱する必要がある」と警告するラベルを貼ることで規制を遵守しています。消費者が実際に加熱するかどうかは、酪農家の責任ではありません。


「生乳の開放販売や自動販売機での販売には、明確な表示が必要です。その後の責任は消費者にあります(自己責任)。この規則に関して、これまでほとんど問題は発生していません」と、スイスの乳業協会のプロジェクトと支援部門の責任者であるトーマス・ラインハルト氏は言います。

ベルン近郊の生乳自動販売機の横に置かれたプラスチックカップは、一部の消費者が家に持ち帰って加熱することなく、その場で生乳を飲んでいることを示しています。

<中略>

生乳に関する法律は、生乳を消費することによる健康上の利益とリスクに関する大きな議論の一部です。

4年前、スイスの農業研究機関アグロスコープは、生乳の健康効果に関する研究を実施し、生乳とその派生製品が腸内微生物叢の多様性にプラスの影響を与えることと結論付けました。

一方、アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、「生乳やその製品を飲むことで、カンピロバクター、クリプトスポリジウム、大腸菌、リステリア、ブルセラ、サルモネラなどの病原菌にさらされる可能性がある」とされています。2023年7月、カリフォルニア州で生乳を販売していた1つの農場に関連するサルモネラ感染の発生で、165人(主に子供)が病気になりました。

また、新たな潜在的なリスクとして鳥インフルエンザが浮上しています。アメリカの酪農牛で高病原性鳥インフルエンザが確認されました。

上記ニュースを翻訳

「発がん性物質や、依存性のあるニコチンが含まれるなど、あなたの健康への悪影響が否定できません。」といった警告を表示しながら売られているタバコのようなものですね。

議論の分かれるものをどうルール化するか。
人間社会の知恵の見せ所です。



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