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residential school=寄宿学校 | 教科書に出てこないニュース英語 《カナダ・先住民》

多文化共生の先進国カナダにもこのような状況があるのか、とその現実への理解が深まった記事でした。

(タイトルの写真はAIによるイメージ写真です。実際の建物の写真等は記事中の
動画 https://www.cbc.ca/player/play/video/9.6549964 を参照してください。)

この単語、'residential school'は、カナダの公共放送 CBCのウェブサイトで2024年11月1日に配信された記事の見出しで使われていました。

Survivors call on Canada to criminalize residential school denialism
生存者たちがカナダ政府に寄宿学校の存在を否定することを違法とするよう求めた

https://www.cbc.ca/news/politics/residential-school-denialism-1.7369449
NDP議員のリーア・ガザン(右から2番目)は、特別調停者のキンバリー・マレー(右)および寄宿学校の生存者たちと共に、木曜日にオタワの国会議事堂で記者会見を行った。彼らは、先住民寄宿学校(原文はIndian Residential Schools)に関連する行方不明の子どもや無名墓地・埋葬地に関する独立特別調停者の最終報告書の提出を受け、寄宿学校否認を刑法上の憎悪扇動と認めるよう連邦政府に求めている。(ショーン・キルパトリック/カナディアン・プレス)
写真・説明文ともに上記記事より

◾️'residential'の意味

この単語自体はシンプルです。resident(=居住者)の形容詞形です。
一応、residential を辞書で引くと…

residential [rèzidénʃəl] 大学入試レベル
[形]
1
〈場所が〉居住(用)の
  a residential hotel 長期滞在型ホテル
1a〈人が〉住み込みの
2〈地区が〉住宅用の
  a residential district [area, quarter] 住宅地区
3〈施設などが〉居住[寄宿]設備のある
;((特に英))〈学校・課程などが〉寄宿生用の

goo辞書 | 小学館 プログレッシブ英和中辞典

これにschool がついて、
residential school=寄宿設備のある学校です。

余談ですが、"レジデンシャルホテル"ってたまに広告で見ることがありますが、「
長期滞在型ホテル」っていうことだったんですね。


◾️カナダでのresidential schoolの意味は特別だった。

私がこの記事で初めて知ったのがカナダにおける「寄宿学校」の意味と現状でした。記事の内容を見てみましょう。

寄宿学校の生存者たちは、カナダに対し、寄宿学校否定主義を違法とするよう求めている。これは、寄宿学校に関連する無記名の墓や埋葬地に関する報告書の調査結果のひとつに呼応するものである。
<中略>
【寄宿学校とは?】
15万人以上の先住民の子どもたちが、強制的に寄宿学校に通わされ、最後の学校は1996年に閉鎖された。

6,000人の子どもが寄宿学校で命を落としたと推定されているが、専門家によると実際の数はさらに多い可能性がある。

【寄宿学校否認主義についての代弁者の指摘】
カナダの「無名墓地と行方不明の子どもに関する特別代弁者」であるキンバリー・マレー氏は、この「よく記録された事実」にもかかわらず、カナダの一部の人々が生存者や先住民の家族、コミュニティの真実を攻撃しようとする意図的な努力をしていると述べた。

2022年にこの役職に任命されたマレー氏は、専門家や寄宿学校の生存者、その子孫たちと面談を重ねた結果、2巻にわたる報告書を今週発表した。

彼女は、寄宿学校の事実を否定することはカナダの歴史に対する誤った見解を強化し、同制度の責任者たちがその行為を正当化するのを助けると指摘した。

また、マレー氏は、多くの人が寄宿学校の存在そのものを否定するわけではないものの、その目的や結果、影響について誤った解釈を行っていると記した。

「否認主義は単なる事実の誤解ではありません。意識的であれ無意識であれ、否認主義者は心理的、実利的、または政治的な目的を達成しようとしているのです」と彼女は書いている。

「インディアン寄宿学校否認主義は、真実と和解の重要な取り組みを危険にさらすため、真剣に取り組まなければなりません。無害な一部の現象として片付けられるべきではありません。」

彼女は「寄宿学校否認主義」と呼ぶもののいくつかの例を調査した。
その中には、ある政治家が「寄宿学校の良い行いが『真実と和解委員会』によってかき消されている」と述べたコメントや、寄宿学校は必要だったと主張し、無名墓地について「激しい告発」に対するモラルパニックだったとした書籍、またあるカトリックの司祭が「先住民の子どもたちは学校での時間を楽しんでいた」と説教したケースが含まれる。

「この否認主義が放置されれば、和解への重大な障害となるでしょう」とマレー氏は述べた。

【寄宿学校否認主義の法規制を求める動き】
マニトバ州のNDP議員リーア・ガザン氏は先月、寄宿学校否認主義を犯罪と定めるための個人提出法案を提出しました。自由党はこの法案を支持するかどうかまだ明言しておらず、政府の支持がなければ法案成立の見込みは低い。

この法案では、「カナダのインディアン寄宿学校制度を擁護、否定、過小評価または正当化し、または関連事実を歪曲して」先住民に対する憎悪を助長する者は、私的な場以外で行った場合、最長2年の禁錮刑が科される可能性があるとされている


法案にはいくつかの例外も設けられている。たとえば、発言が真実である場合や、公共の利益に関するものである場合、または先住民に対する憎悪を指摘する目的がある場合、宗教的意見である場合は、法律違反には該当しない。

カナダは2022年にホロコースト否認対策のための類似法を制定したが、これまでのところ、その規定で有罪判決が下されたケースはない。

マレー氏はガザン議員の法案のような立法措置を長らく求めており、昨年の中間報告書でも否認主義が増加していると述べている。

【法規制を求める動きの背景】
2021年5月、トゥケムルプス・テ・スクウェペムク族は、かつてのカムループス・インディアン寄宿学校の敷地で地中レーダー調査により215の無名墓地が発見されたと発表した。この発表は国際的に大きな注目を集めたが、このコミュニティを攻撃する人々もオンラインで現れた。

「中には真夜中にスコップを持ってやってきて、『子どもたちが本当に埋葬されているか自分たちで確かめたい』と主張する人もいました」とマレー氏は中間報告書に書いている。

最終報告書の中で、マレー氏は政府に対し、現在下院で審議中の「オンライン・危害法(the Online Harms Act」に、寄宿学校否認主義に関連する被害、例えば行方不明や死亡した子どもや無名墓地に関する被害を取り扱う規定を含めるよう提案した。

アリフ・ヴィラニ司法相は火曜日、「報告書とその中に含まれる『義務』を精査する必要がある」と述べ、ガザン議員の法案を採用するかどうかについても検討する意向を示した。

主流派への同化のために先住民の子どもを強制的に家族から引き離して学校に収容し、元の言葉や習慣を禁止し変えさせた、というのがカナダの寄宿学校でした。さらに、その中で多くの子どもが無名墓地に葬られたり行方不明になったということでした。

そして、このような学校を美化したり子どもの死が捏造だったとする動きがある。
それに対して法的規制を求める声が上がっている、という内容でした。


支配的な勢力が少数民族を同化するために強権をふるっていたという過去、
それだけでなく、そういった非人道的な過去の行いを無かったことにしようとする動きがカナダにもあった。それに対する批判の声を挙げている人たちがいる。

人類の残念な共通項と、それを許さないとする動き
…を知る記事でした。


《参考資料》
カナダの寄宿学校に関する博物館への訪問レポートを、一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)がHPに掲載していました。
自分の父親が通わされていたという人の話も書かれています。↓


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