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9つの国・地域の博物館事情の発表を聞いてきました

大雨警報の出る中でしたが、せっかくの機会なので、
「公開フォーラム 世界の博物館2024」@国立民族学博物館
に行ってきました。

何が折角かと言いますと、
9カ国の人のライブのプレゼンテーションを近くで聞ける、それも最近しばしば訪れている博物館について現状を話してくれるのは貴重だと思ったのです。

結果、雨の中、駐車場の料金を払っても行ってよかったと考えています。(ふだんは徒歩か自転車で行っています。)

主催者挨拶によると、この企画は1995年から始まり今回で30回目。おそらく来年も開かれると思いますので、同じような興味をお持ちの皆さんに紹介したいと思います。


国際協力機構JICAが国立民族学博物館に依頼して行っている、海外の博物館担当者を対象とする「知識共創研修プログラム」の一環としての企画であるとのことでした。

今年度の参加は、ザンビア・スーダン・エジプト・セーシェル・モルディブ・モンゴル・パラオ・パプアニューギニア・ペルーから。この順で、休憩を挟みながら、15分発表+5分質疑応答の形で進められました。

発表は英語ですが、通訳付きなのでよく理解できました。また、フロアからの質問を積極的に受けてもらえました。


簡単に印象的だった内容を紹介しますと、

🔹ザンビア:
70以上の部族からなる国。伝統的な飲み物や食べ物を作るなどの教育プログラムを行っている。毒蛇による死者が出る。自分は「人を守り、蛇も守る」ための出張授業を学校に出向いて行っている。
🔸スーダン:
2023年に起きた紛争の現場に博物館が位置していたため、多くの収蔵品が壊されたり持ち去られたりした。ネット上で売りに出された物もある。取り戻すためリストを作成しインターポール(国際刑事警察機構)に提出した。
🔹エジプト:
大エジプト博物館(Great Egyptian Museum)が完成し、2週間前にメインギャラリーの試験公開を始めた。総工費10億ドル以上とみられるとても豪華な施設。半分は日本政府による円借款を利用。
🔸セイシェル:
115の島からなる国。移動図書館やSNSでの発信に力を入れている。奴隷の歴史についての企画展を行った。資金を観光客に依存していることやスペースの制約が課題。NGOとのコラボレーションに積極的に取り組んでいる。
🔹モルディブ:
1192の島からなる国。人が住んでいる島は約200。他の島は農業や観光のために貸し出している。時代区分は、イスラム教以前・スルタン王朝時代・その後の3つに分けて展示している。教育プログラムはあるが全てのatoll(環礁)ではできず首都でのみ実施。スタッフとスペースが不足。
🔸モンゴル:
南は中国、北はロシアに接しており、最低気温は-25℃、最高気温は+25℃。1924年開館の自然史博物館は今年100周年と歴史あり、施設も立派。ゴビ砂漠で見つかる恐竜の骨格や卵の化石が特徴。新館を今年着工し、2027年に開館予定。現在内容の構想を検討中。
🔹パラオ:
自国ではパラオではなくBelauと呼ぶ。1955年に開館したBelau National Museumはミクロネシアでは最古の博物館。台湾の先住民から資金提供を受け、彼らの展示があったり、インターンシップを受け入れたりと、台湾との関係が深い。(台湾の原住民ラピタ人が海を渡ってパラオの祖先となった可能性がある?)
🔸パプアニューギニア:
1975年にオーストラリアから独立。800以上の言語、1000を超える部族からなる。博物館は1977年に開館、独立後初の国立機関となった。罠の展示・先祖崇拝の展示・戦争に関わる展示が特徴的。
🔹ペルー:
スペイン人によって消滅を図られたチャチャポヤ(Chachapoya)文化を展示する民間のコミュニティー博物館で働いている。ペルーでは民間・私設博物館が主。Qhips(結び目による記録システム)やミイラは、文化を消すために燃やされ、ほとんど残っていない。博物館は社会変革のツール。ホテル・レストラン・観光バスなど地域経済が活発になった。


国の歴史・地理的な条件・経済状況により、博物館の規模・テーマの選択・財政基盤の強さ・課題の有無と内容が違うことがわかりました。

また、多くの発表者が民族衣装や国の色を配した衣装を着て発表してくれました。各国の様子を、お手製のスライドやその人の服装や話し方と共に知ることができたので、ネットや書籍で読むのとは違う強い印象が残りました。

直接会うことの力、ライブ好きの人が感じているものに近いかもしれません。

帰りには雨が上がっていました。


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