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予期悲嘆とは?大事な人の余命宣告で辛いときの8つのヒント
予期悲嘆とは、人が亡くなる前に、本人や周りの人たちに起こる悲しみ、嘆きのことです。「親がもうすぐ亡くなってしまうと思ったときが一番辛かった」「在宅介護をしていて迎える夜が辛い」という話を聞くことがあります。予期悲嘆を乗り越えるのは難しいですが、いくつかの工夫で辛い感情を和らげることは可能です。8つの対処法をお伝えするので、ご自身に合うと思える方法があったら、実践してみてください。
まずは予期悲嘆が「悪いことではない」と知って
愛する人や、他でもない自分が「もうすぐ亡くなるかもしれない」と知ったとき、悲しみや嘆きを感じるのは当たり前のことです。
「まだ亡くなっていないのに、こんなに悲しむのは良くない」
「辛さをなんとか克服して、しっかりしなければ」
そんな風に思っているなら、まずは自分の気持ちを肯定することから初めてみませんか。ただでさえ辛いのに、その辛さを否定したり、蓋をしてしまったりするのは、さらに辛いことです。
大事なのは、辛さを「乗り越え」たり、「克服」したりすることではありません。予期悲嘆に立ち向かうのではなく、辛さを抱えながら最後までなんとかやり過ごすことを意識しましょう。
予期悲嘆を少しでも和らげるため、なるべく多くのヒントを挙げますので、ぜひ参考にしてください。
ヒント1:誰かと話を共有する
辛い話を共有できるのは、家族や親族、友人だけとは限りません。公的な悩みごとの相談窓口やボランティア団体のホットライン、心理カウンセラー、いつも通っている整体の先生など。自分が置かれている状況や抱えている不安を、信頼できる人に話してみましょう。
誰かと辛い状況を共有できているということ自体が、辛さを和らげてくれます。「実は自分もね」と悩みを打ち明けてくれる人もいるかもしれません。辛さを抱えているのは自分だけではないと感じるだけでも、救われる気持ちになることがあります。
ヒント2:没頭できるものを見つける
何かに没頭している間は、穏やかな気持ちでいられます。辛さや嘆きは1人の夜に襲ってくることが多いため、夜間に家でもできる趣味を作るのがおすすめです。編み物、縫い物、塗り絵、書道、お菓子作り、ペーパークラフト、絵画など、黙々と手を動かせる趣味を見つけてください。
ヒント3:五感全てで「落ち着くもの」を見つける
ホットミルクを飲んだり甘いものを食べたりすると、気持ちが安らぐことがあります。「落ち着けるもの」を探すとき、食べ物が最も分かりやすいですが、味覚以外の感覚に訴えかけるものも見つけておきましょう。
嗅覚:落ち着けるアロマを焚く
聴覚:癒しの音楽を流す
視覚:「これを観ていると落ち着ける」と感じる絵画を家に置く
触覚:フワフワのぬいぐるみや暖かい毛布など気持ちが安らげるものを抱く
ヒント4:日々やるべきことを淡々とこなす
悲しみが深いと日常生活に影響が出てくる場合もあります。しかし、部屋が汚れていたり、不摂生な生活を続けたりすると、さらに心がすさんでしまいます。身だしなみを整え、三食しっかり食べて、部屋の掃除をしましょう。外側が整うと、心の居住まいも正されてきます。「しっかりしよう」という気持ちが高まります。
ヒント5:日記を書く
自分の気持ちを書き出すことが、感情の整理に繋がります。家族や自分の病状、心境を記す日記をつけてみましょう。落ち着かない気持ちになるとき、過去の日記を読み直すことで自分の気持ちを客観視できます。
ヒント6:自助グループに参加する
自助グループとは、心の専門家などを介すことなく、同じ経験を持つ人などが集まって話をしながら心を癒す会のことです。予期悲嘆や、すでに大事な人を喪った悲嘆について語る会が開催されていることがあります。市役所の福祉課に尋ねたり、役所や図書館など公的施設に置かれているパンフレットを確認したりして、自分の状況に合った自助グループを探しましょう。
ヒント7:大事な人と、なるべく一緒に過ごす
喪失感が強いと、辛さから逃れようとするあまり、亡くなりつつある大事な人と距離を取ってしまうかもしれません。しかし、その人とは、時間の許す限り一緒に過ごしましょう。まだコミュニケーションできる段階であれば、叶えられる希望は叶えてあげましょう。
辛さから大事な人を避けていると、いざ亡くなってしまったとき後悔の念が強くなる恐れがあります。「自分としてやれることは精一杯やってあげた」という気持ちになれるよう、後悔のない行動をしたいものです。
ヒント8:あえて終活してみる
葬儀やお墓の準備、生前整理など、あえて終活してみると気持ちの整理がつくこともあります。「これなら辛くない」と感じることから初めてみるのはいかがでしょうか。
・生命保険:余命宣告があると受け取れる生前給付金の手続きをする(リビングニーズ特約)
・葬儀の準備:遺影を決める、棺に入れるものを決める、連絡簿を作る、どんな葬儀にしたいか考える
・お墓の準備:霊園見学会に参加する、今あるお墓でよいかを考える
・相続の準備:財産目録の作成、通帳など貴重品を一箇所にまとめる
・生前整理:形見として手元に置いておきたいものを確認する
複数の工夫を組み合わせて辛い時期を乗り切って
ここにご紹介した方法のうち、自分に合うと感じたものはいくつでもやってみてください。実際に行ってみて、辛さが和らぐと思える工夫を大事にしましょう。予期悲嘆はとても辛い体験ですが、いずれ来る別れの準備をしているともいえます。大事な人にとっても、自分にとっても穏やかな最後となるよう、今の日々を大切に過ごしましょう。