自衛官給料安すぎ問題
まず、自衛官の給料安すぎ問題を語るに当たって、私の防衛政策に関する立場を明らかにしておこう。
私は自衛官ではないし知り合いにも自衛官は居ないし、防衛費増を是とするわけでもなく、国防軍創設推進派でもない。
ただ、現状の中国、朝鮮、ロシアの、日本領土を明白に侵略する意図を背景とした軍事活動や、アメリカの脱昭和日米安保政策を鑑みるに、日本がもはや自前で自国領域の防衛を推進せねばならないことは、議論の余地がないところであると考えている。
したがって、最低限度の武力たる自衛隊はあるべきと考えており、現行の憲法では自衛隊が違憲であることも明白であることから、自衛隊を(あくまで軍ではなく自衛隊として)憲法に規定することも必要と考えている。
さて、いつものように前置きが長くなったが、自衛官の給料は安い。と思う。
自衛官は任官に当たって、国民のために命を捨てる覚悟を求められる。
なのに、給料で報いていない。そう思うのである。以下のとおり見ていこう。(自衛官の給料情報は、給与関連法のほか、日刊ゲンダイの以下のページも参考にしている。https://www.nikkan-gendai.com/articles/image/life/223039/87803)
45歳(扶養親族:配偶者、子2人) 年収7,846,000円(階級=三佐)
さて、いかがだろうか。高い?安い?
私の感覚では、ハッキリと、安い。
三佐であれば、わりかし大きな隊であったり、艇長や護衛艦副長、あるいは戦闘機部隊の隊長であったりするだろう。部下の数も、所属によるが数百人以上という場合もあると思われる。それだけの人の命を預かりながら、780万円の年収。
果たして高いか、、、?(こちらは日刊ゲンダイの記事で、2009年度給与として掲載されていたものである。その当時、ボーナスの月数は4.15月分だった。)
防衛省による概算要求資料からの数値とのことなので、おそらくこの額に広域移動手当や単身赴任手当などが付くし、艦艇乗りならかなり加算がある。大都会配属であれば地域手当も大きい。
しかし、自衛隊の基地は大都市ばかりではない。
たとえば、地域手当が10%付くそこそこの都市の、高等学校教諭の年収はどうだろうか。
高校教諭といえば、一般公務員の中ではかなり基本給が優遇されている部類である。その試算結果が以下である。
45歳、配偶者、子2人、教諭(つまりヒラ社員)で、約771万円
この中には、基本給・基本給の4%の教職調整額、教員特別手当(約6千円)、扶養手当、地域手当が入っている。
さらにこの給与は、ボーナス月数は4.0月分、かつ、勤務成績は万年標準評価の場合である。実際には勤務成績はかなり多くの人に「優秀(A)」評価が付くので、多くの高校教諭は三佐と同程度以上の給与を得ていると考えられる。しかも、特別支援学校の教諭であれば職務の難易度に従って給料の調整額というものが基本給に加算され、確実に800万円を超える。
こんなことでいいのか??部下が一人もいない平社員でこれだぞ??言いようによっては、生徒という1クラス30人と部活30人の60人と言えるが、それでも三佐が抱える部下の数には到底及ばない。
さらに、自衛官という職は、その業務内容が極めて政治的である。
政治的とはつまり、一歩間違えると国際問題に発展したり、国会で防衛省が糾弾されかねない、ということである。
自衛官は上官の命令が絶対であるので、最終責任者は首相及び防衛大臣である。しかし、時として、首相の判断を待たずして自らの判断だけで命がけの任務を遂行しなければならないことがある。
たとえば、護衛艦がEEZや領海の付近で突如中国軍艦と遭遇。どんどん接近してくる。対応如何について、艦隊司令に報告、指示を待つ。しかし、指示を待つ間に中国艦から砲撃を受ける。どうする。
このとき、自衛官はどう行動するか、自らで判断しなければならない。来るかもわからない指示を待っていては撃沈される。敵艦を攻撃するべきなのか、逃げるべきなのか。その選択一つで、日本国が国際社会で非難されるかどうかも決まってしまう。
一方、教諭の仕事で失敗しても、国際問題にはならない。
私はというとまさしく教育関係の仕事をしているので、子供たち一人ひとりの人生を預かっているという自覚がある。(教諭ではないが)
だから、教諭の失敗は、最悪の場合数人の生徒の人生を狂わせかねない。
それでも、誰かの命に関わったり、国際問題に発展したりすることは、99.99%無い。その年収が、極めてシビアな政治的判断と命を投げる覚悟を求められる自衛官と、大して変わらない。ひょっとすると、自衛官より高い。
ちなみに、一般行政職の公務員であっても、月平均30時間くらいの残業をすれば、同程度の年収を得られる。教諭も自衛官も、30時間以上の残業をしつつも残業代が支払われないことは有名な話である。更にちなみに、47歳一佐は約1,280万円。防衛省本省の行政職キャリア課長や、大都市県庁・指定都市役所の局長と同程度である。
ヤバい。ハッキリ言ってヤバい。虐げられているとすら言えるだろう。
当然、世間一般の社会人からすれば相当に高いと言えるし、殉職以外で職を失うことはない。しかし、自衛官は一佐でも56歳で定年となるし、ほとんどの自衛官は二佐以下で定年を迎える。二佐は55歳が定年だ。つまり、年収約800万円~900万円をもらえるはずの5年間が、丸々無いということだ。
我が国は、こんな待遇で自衛官に命を捨てさせるのである。
「命」極端な話ではない。中朝露の活動は加速度的に侵略的になっており、自衛隊史初の防衛出動もそう遠くない未来であると感じる。同じように感じる自衛官は多かろう。
日本は国防軍でも自衛隊でも、形はどうあれ、とにもかくにも国土防衛要員とその地位を憲法に明記し、保護するべきなのだ。
そう、今のままでは有事の際、自衛官は敵国だけでなく、日本国憲法とも戦うことになってしまうのである。
普通の公務員として。普通の給料で。
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