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大吉。中吉くらいの方がいいって聞くけど、それでも大吉って見ると、やった!と思う。

初詣に行けてなかったので、昨日やっと出かけた。
毎年恒例の恵比寿神社詣だ。
その神社はいつも物凄い人出で、お参りする所に到達するまでに軽く1時間はかかる。お参りに来た人が作る参道の長い行列の両側には、ずらっと屋台が出ててお祭り騒ぎ。
行列が進むにつれて、甘い香りや香ばしい香りが交代に押し寄せてくる。縁起物の干支の置物や恵比寿様の置物なんかも売られていて、それらの屋台はなんだかキンキラキン。見るからに縁起良さそう。
別にスポーツ選手じゃないけれど、縁起って結構好き。そんな事で楽しくなれるのなら縁起が悪いよりいいと思う。
あんなに長い列に並んでても、みんなどこかしら楽しそう。家族連れも会社の同僚っぽい人達も、ニコニコしてふざけあったりお話ししたりしてる。
毎年思うんだけど、ここにこうやって来てる人たちは、きっと前の年はいい年だったんだろうなって。恵比寿神社はお商売の神様だ。だからあんまりにも業績不振だったりしたら、こんなに楽しげで活気のある長い行列の仲間入りがしにくいんじゃないかと思う。
並んでる人の顔や声に、前の年へのありがとうが溢れかえってキラキラしてるし、屋台の人の威勢のいいかけ声も、こちらがご機嫌だから受け止められるって感じ。そんな列に一緒に並んでると、みんなが幸せで健康で、景気の良い1年を過ごせますようにって素直に思える。

恵比寿神社の近くのレストランで、季節の特別定食なるものを食べた。オーダーした時には気が付かなかったけれど、宿敵のカツオのたたきがついて来た。
うぎゃあああぁ!なんだよう。メインの豚ロースの味噌仕立てとか、とろとろきのこのたんまりスープとかは、むっちゃ美味しそうなのに、小皿の上でそれらにもまして燦然と光を放っている。
子供の頃、カツオのたたきの無数の塊に、まるで宇宙戦争の世界観の中、しつこく追いかけられる夢を見てから、カツオのたたきを見るのも嫌なのだ。本当にしつこくて怖かった。

もう1人のデザイナーと一緒に行ってたんだけど「オーダーする時気が付きませんでした。カツオのたたきですね。残したら良いですよ」と言われて、じっと眺めてみた。

赤い、いやボルドーか。うげっ、絶対血の色だ。
あんまりにも見ていると「普通のと違って、ヅケにしてあるみたいですよ」と被せてきた。ヅケ・・・。見ると紫蘇がたくさんのってる。紫蘇は好き。

なんだかなぜだか突然、食べてみる事にした。今まで2回程挑戦したことがあるけれど(一回はお節介なお姉さんに「食べてみなさいよー、絶対美味しいんだからー、ただの食べず嫌いでしょ?それに美味しくない物を食べたんじゃないの?」と居酒屋に毛が生えた程度の店で(失礼)しつこく言われて、くっそー、こういうやつって苦手なんだよなと思いながら、負けず嫌いなせいか口に入れてみた。吐くかと思った。あわてて飲み物で流し込んだ)2回とも生臭くてゲロゲロだった。

紫蘇につられたのと、ヅケっていう響きとに操られて食べてみた。これは私にとって、あんなに好きなゴラムでも、生のピチピチナマズにかぶりついて、前歯の隙間から水と肉を迸らせながら噛みちぎるシーンで毎回思う、あの瞬間一体全体どういう食感と香りと味が口の中に広がっているんだろうという、そこだけは共有できない冒険を乗り越えるくらいの恐ろしい出来事だ。

生臭くない。ヅケにしてあるカツオのたたきに胡麻油と塩がかかってて、そこにたくさんのった千切りの紫蘇の爽やかさがのっかって美味い。衝撃!
嘘だろ?顔に出たのかそれを見て「食べれましたね。大丈夫そうですね」と言う声が聞こえた。思わず「これは美味しいんだけど、カツオのたたきってこんな味だっけ?」って聞いたら「いや、これは普通のカツオのたたきの味じゃないですね、全然カツオ臭さもないし美味しいです」との事だった。おうっ、そうなのか。
って事はカツオのたたきを克服出来たというより、この料理方なら美味しくいただけたって事なのか。にしてもタイトルにカツオのたたきって言う単語が入っている以上、極悪宇宙戦艦カツオのたたき号に勝利した日と言っても過言ではないと、地球を危機から救ったくらい強くなれた気がした。
時期になったら新鮮なカツオのたたきを買って、ヅケにして胡麻油と塩と紫蘇で食べてみようとさえ思えた、どえらく長く続いた戦闘後の勝利の瞬間だった。

お母さん、私はまたひとつ大人になりました。

おみくじは大吉でした。中から小判が出てきました。財布に入れて持ち歩くと良いそうです。
どうしよう、億万長者になったら。
その時は必ずお裾分けします。

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