『宗教法人の非課税』は『国家神道』の反省から施行された。
日本人は経済不況に陥るや腹いせに公務員の保証された給料と『宗教法人の非課税』をやり玉にあげバッシングに走る傾向があるが、これは天に唾する行為であり、近視眼な思考過ぎると思う。
まず戦時中日本は現人神天皇と靖国神社を組み合わせ『国家神道』を成立させ、日本の中央官庁である内務省が管理していた。これは思想統制を行うためで、欧州が侵略戦争を肯定する為に用いた『キリスト教を広めるため』との方便を模倣したものであった。
そして「思想統制こそが戦争勝利のカギ」と考えた軍部国家は神札を拒否する宗教団体を『国家神道』に対する『不敬罪』だとして徹底して逮捕投獄、激しい弾圧を加えた。当時は国家の弾圧を恐れ、本来『国家神道』とはなんら教義が一致する事のない伝統宗教を始めとする各宗派は『国家神道』の軍門に下り神札を掲げていた。
やがて日本は敗戦し連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は新憲法をとりまとめ、憲法20条で『信教の自由と政教分離原則』を規定し第89条も設定しました。その中で様々に『国家神道』と内務省による当時の誤った思想と行動が再現しないよう、それは仔細にもおよび、『税を管理するという名目での権力の介入』を排除するため宗教法人を非課税とした。
実際は国税庁が示している通り純然たる宗教活動部分は非課税であっても34業種に渡る収益事業部分は課税される。つまり宗教活動部分と収益事業部分の「境目」の問題があるので、申告自体は全体を提出する事になる。
『天に唾する』との表現を冒頭に使ったのは、結局憲法では『国家神道』の在り方からの反省が反映され憲法21条では『表現・言論・集会・結社の自由』も保証されている。これは宗教と無関係と考えている皆さまがもはや「当然」と考える自由な思想や表現と団体の設立も憲法によって保証されているから可能という事を今一度自覚すべきと思う。
確かに——おそらくこれが皆さんの反発を駆り立てている要因かと思うが、『伝統宗教はともかく明らかな金儲け目的の新興宗教は許せない』との意見も多いと思う。例えばオウム真理教の事件などを目の当たりにすると宗教のダークサイドが根強くなる事は充分私も理解出来る。
しかしここが肝心なのだが自由は個々人の好悪に左右されてもいけない。例えると右翼団体は「政治結社」とも呼ばれ彼らもまた憲法に保証されている存在である。実際は暴力団の別働隊であっても結社自体は保証されている。問題を起こせば刑法で対応する——という仕組みになっている。
もっとも、金儲け目的の新興宗教の非課税に怒り心頭するという事もどこか宗教に対する蔑視が見え隠れしているように思える。見方によっては我々の自由な活動が憲法によって保証され、容易に国家権力が介入出来ない事実を証明している一つの象徴とも言える。こう考えるとむしろ宗教法人が課税になる事の方が国家政府が思想統制に走る「蟻の一穴」として大きな問題ではないかと私は考える。
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