温かく見守りながら失敗させてあげる。
先日、テレビ番組「はじめてのおつかい」を見ました。その中で感じたことをまとめてみたいと思います。
万全の見守り体制
「はじめてのおつかい」は、幼児が初めておつかいにいく様子を放送するドキュメンタリー番組で、予想外のハプニングの面白さと、子ども達の純粋で一生懸命な様子が視聴者の心を打つ人気番組です。
保護者からおつかいを言い渡された子ども達は、一人で、もしくは兄弟と一緒におつかいへ出発する訳ですが、その様子を撮影するために、テレビクルーが本人達に気付かれないように同行しています。当然ですが、テレビ番組なので本当のトラブルや事故があっては放送出来ないので、不測の事態が起きないように大人達が見守っている状況で、おつかいが行われるのが番組の特徴です。
助けない大人達。
知らない大人に知らない間に囲まれながら行われるはじめてのおつかい。撮影クルーはもちろん、訪れる店舗にもテレビカメラが入っているのですから、当然、撮影許可が事前に出されているわけで、各店舗のスタッフさんも事情は承知しています。
そして、この番組の素晴らしい所は、これだけ見守り体制を整えておきながらも、必要以上に子ども達を助けないことです。先日の回では、おつかいに出た姉弟が必要のないおもちゃを買ってしまい、お金が足りなくなるシーンがありました。最終的、会計の際に店員さんが一部を割り引きしてくれて支払いを済ませることが出来ましたが、結局、一部の商品は買えないまま家に帰ることになりました。これ以外にも、落としたトマトを本人が気が付くまでほっておいたりなど、あくまで失敗も含めて経験の一部として、おつかいが行われています。
子どもの挑戦の機会を妨げていませんか。
このようにはじめてのおつかいは、失敗も沢山ありながら最終的には無事に家に帰り、保護者に温かく迎えられて、ハッピーエンドで終わるのがお決まりのストーリーです。このストーリーに感動する視聴者が沢山いるからこそ、年数回定期的に放送され続けているのわけですが、残念ながら私はまだその境地には達していません。
そんな心の渇いた私がいうのも何ですが、この番組は単に感動を売るような安っぽい番組ではなく、子育てにおいて大切なことを社会に発信している素晴らしい番組だと思います。
そのポイントとは次の2つです。
① 失敗を許容して挑戦させる保護者
② 子ども達を温かく見守る大人達
日常生活の中で子ども達に接していると、どうしても失敗しそうになった段階で手を出してしまいます。水たまりの前で声をかけたり、お茶をこぼしそうになったら手を出したりと、子どもの失敗を未然に防ぐことが大人の役目と思われている節すらあるように思えいます。しかし、”失敗は成長のもと”と言われるように、本来失敗は人間が成長していく上で必要不可欠な要素です。水たまりで転けて汚れたのを嫌だと思うから避けて通るようになるわけですし、お茶がこぼれて冷たい思いをしたり、お茶が飲めなかったりするから、次は慎重に行動するようになるものです。最近の日常生活で失われつつある失敗の機会が提供される貴重な機会が、はじめてのおつかいなのだと思います。
そして、その失敗を周囲の大人が温かく見守る光景も少なくなってきているように思います。私が子どものころ、公園でボール遊びをしていてお地蔵さんを壊してしまったことがありました。その後、そのお地蔵さんを管理する近所のおじさんに怒られて、両親が謝りにいったのですが、それ以降も普通にその公園でボール遊びをしていましたし、管理のおじさんもトラブルがなければ怒ったり、遊びを禁止するようなことはありませんでした。しかし、最近では騒音などを理由にボール遊びや遊び自体が禁止される公園が出てきたり、保育園や幼稚園などの設置が近隣住民の反対でストップするというようなニュースを耳にします。子どもは国の宝であり、成長を見守ることは国民の義務のひとつと言えるものですが、近年は子どもとの関わりすら毛嫌いされているような状況です。このような社会にあって、はじめてのおつかいに関わる大人達の姿勢は、番組制作という背景があるにせよ、社会全体に重要なメッセージを発信してくれているのではないでしょうか。
子ども達がのびのび育っていける社会へ。
以前住んでいたベトナムは国民の平均年齢が20代で人口が増え続ける勢いのある国でした。子どもや若者が多いと、国はどんどん成長していきますし、国全体に明るく前向きな雰囲気が漂っていました。一方、日本の平均年齢は40代後半で50歳に迫ろうとしています。そんな今の日本に漂うのは、格差拡大や不況、老後への不安などのどんよりした空気であり、この空気を変えるには、若者の勢いや子どもの純粋な笑顔が必須だと思います。子ども部屋おじさんという子育ての対局にある私ですが、私なりに子ども達の成長に、そして日本の未来に関わっていければと思っています。
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