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女友達とアルコールとノスタルジア
何年ぶりかに銀座線に乗ったせいで、燻っていた記憶に火がついてしまった。
一滴もお酒を飲まない私には、アルコール中毒のことは何もわからない。
けれど、かつて仲の良かった友人が、毎日のようにお酒を飲んでいたことを思い出した。
私は、自分が飲めないことにコンプレックスを抱いていた。
「飲まない=つまらない人」
そんなふうに見られている気がして。
だから、朝からファミレスでビールを飲む彼女を、カッコいいとすら思って眺めていた。
彼女は、「飲むことで自分らしくなれる」と言っていた。
そして、決まってこう口にするのだった。
「飲んだ勢いで言うけど〜」
飲まないと言いたいことも言えないなんて、私には信じられなかった。
でも、飲んで毒舌になる彼女のほうが、ずっと面白かった。
だから、飲んでくれると嬉しかった。
私にしてみれば、
言いたいことといっても、大したことじゃない。
言いづらい本音というほどのものでもない。
なのに、飲まなければ言えないなんて、不思議だった。
彼女は、飲んでも人が変わることはなかった。
だから、朝からファミレスでビールを飲んでいても、違和感はなかった。
私たちは趣味が合い、一緒に行動することが多かった。
けれど、いつもどこかで感じていた。
「同じ色の血が流れていないなぁ」と。
彼女は、常に自分を抑制しているように見えた。
そして、私の発言に戸惑うことが多かったらしい。
「ちょっと待って、今気持ちを整理してるから」
そう言われることが、何度もあった。
彼女の服装は、どんなときも少し浮くくらいオシャレだった。
私が一番好きだった彼女は、ドレスダウンして、お酒を飲んでいるとき。
旅先では、笑いのツボがぴったり合っていた。
楽しい時間を、たくさん共有した。
私にとって彼女は、少し先を歩く人だった。
いろんなことを見せてくれた、とても大きな存在だった。
まるで小さな子供が、姉のやることを真似して覚えていくように。
臆病で、小さな一歩すら踏み出せなかった私に、
「こうするんだよ」と見せてくれた、大切な人。
たとえ彼女がアル中でも、
どんなふうに自分を表現していようとも、そんなことは関係ない。
今もどこかで、自分を貫いているのなら、
今の私で会って、ありがとうを伝えたい。