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結婚相談所にはならない

わたしが以前BARをハシゴしていた頃の話です。
不良主婦ではなかったつもりですが、女ひとりでBARに行くと奇異な目で見られるか、ナンパ目的か、遊び人か、その3択に当てはめようとするいわゆる世間の目というものがあったような気がします。
そんなの知ったこっちゃない上に、どうでもよかったのです。たまたま隣り合わせた人と仲良く話すのが楽しく、いろいろな人の経験談や知識をありがたく頂戴できるのでわたしとしては一石二鳥だったのです。
美味しいおつまみとカクテルもあるし言うことなしです。


そんなある晩、わたしはいつものようにいつものBARでひとりちびちび飲みながらカウンターに座っていました。
隣の席にわたしと同じように女性ひとりで座ったので珍しいなと思い、声をかけました。
そのBARはとても庶民的?な色合いが濃く、常連さんも多く、何かしら店主催のイベントを行なっていました。
たまたま花見BBQの告知を聞いていたので、よかったら参加しませんか?とお誘いしたところ、行きます、前回も参加したんですというではないですか。
彼女はわたしよりずっと前からの常連さんだったのです。

BBQでわたし達はいろいろお互いのことを知ることとなりました。
肉を焼きながら取り分けながら、ビールを飲みながらまあ実に多くのことを話しました。
と言ってもほぼ彼女の相談にわたしが答えるという形だったのですが。
テーマは結婚について。
どうしたら結婚できるのか。
結婚相談所に行っていたが思うような結果にならず退会した。
BARに行っても出逢いはないわけではないが、結婚相手としておメガネにかなう人はいない。
オラヴさん、もしよかったら誰か紹介してくれないだろうか。
頼み込まれるとわたしはヨワイ。
なんとかメンズを探してみると言ってしまったのでした。


取引先やら何やら男性が多い職場です。
何人かに声をかけてみました。
独身でなかなか落ち着いた方に思い切って誘ってみるといいですよとあっさり承諾してくれました。
しかしその彼から尋ねられたのです。
ところで、その方は何歳なんですか?
えーと…たしか…40…2歳かな。
彼の顔から先ほどまで浮かんでいたにやにや笑顔が消え、戸惑いの色がありあり浮かびます。仕方のないことです。
彼は34歳。今まで歳下としかお付き合いしたことがないのです。
えーと…一応、僕の友人で飲み会とか合コン好きな奴を誘ってみますけど…とトーンダウン。
オラヴさんも来てくれますよね?
逃げないでくださいね!そんな念のこもった目でみないでください。
行きますよ、もちろん。
心の中では高跳びしたくてたまらなくなったのですが。


物事は引き寄せの法則が働きます。
大丈夫だろうか。そんな不安が引き寄せたのは合コンセッティング日の前日のキャンセルの連絡でした。
すいません、オラヴさん。
奴が急に仕事が入ったとかで。
そうすると僕一人しか独身がいなくなってしまいますし、それも申し訳ないので…
苦しそうに説明をする彼の声を聞きながら、わたしは彼女にどう言おうか、ぐるぐる考えていました。
どうにもなりません。
仕事が入ってしまってどうしてもその日は無理みたいで。
そうLINEを入れると、思わぬ返事が返ってきました。

わたしが20代なら対応が違ったでしょうね。


返事のしようがありませんでした。
そして改めてどんな人なら良いのか、理想を聞くことにしました。
するとスクロールしてもスクロールしても延々と書き連ねてありました。
個人事業主がいいとありました。
夢を持っているなら会社員でも可。
外車に偏見がない人。
年齢はプラマイ5歳まで。
他にもいろいろありましたがほとんど読む気力もなくなっていました。
結婚相談所に対しての不満や、紹介された方とデートしたもののつまらなかったことなどがびっしりとありました。


髪型や服装がバブル時代の頃からアップデートされていなかったので、やんわりそれも伝えてみましたが理解してもらえませんでした。
これがわたしに似合っているからの一点張りです。
50代の方ならすごく良い方がいるんだけど…と伝えてみても反応なし。
そして翌日。
彼女からまたLINEが届きました。
驚いたことにわたしへの恨みつらみ、悪口と言ってもいいような言葉が、これでもかと書き連ねてあったのです。
わたしがいつ50代の人と付き合いたいと言いましたか。
あなたの言ってくれた程度のことは結婚相談所の方にも言われたことばかり。
そんなアドバイスを欲しいと頼みましたか。
わたしがあなたに望むのは、男性がいる時にいい子がいると紹介してほしいということです。
あんぐりと口を開けて読んでいましたが、たった2回しか会っておらず、合コンをセッティングしようと奔走した人に対してこれはないと思いました。


結婚相談所じゃないんだから。


その後、一度だけあのBARで彼女とばったり会いました。
彼女も気がついたようでしたが、互いに気づかないふりをしました。
何か言いたげにちらりとこちらを見やりましたがわたしは聞く気になりませんでした。


彼女が結婚をどう捉えているのかわかりません。
年齢が支障となっているのも事実で致し方ないのかもしれません。
ただそれだけを言い訳にしては何も進まず始まらない。仕事でも恋愛でも人間関係においても、人を思いやる気持ちが無ければ幸せは逃げていってしまうのではないかと思います。
いま彼女が幸せであればいい。
それだけなのです。



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