見出し画像

二人一緒なら【神様時計】(毎週ショートショートnote)

私たち、もう少し出逢うのが早かったらねぇ。
最近の君はそればかりだ。
しかたないよ。
でもいいじゃないか。
今こうして2人でいられるんだから。
そうね、君は少し笑う。
ごめんねえ、と君は小さく俯く。
こんなにおばあさんになってしまって。
僕もこんなになってしまったよ。
そう言って僕は君の手を取り、薄くなった頭を撫でさせる。
昔のハリウッドスターみたいよ、ブルース・ウィルスみたいで素敵じゃない。
君はメリル・ストリープみたいじゃないか。
皺だらけの互いの指を絡ませる。
神様も意地悪よね。
もう少し若くて綺麗で細くて、あなたの子供を産めるくらいの歳に逢わせてほしかったのに。
時計の針を逆回転なんて無理よね。


窓の外を眺めていると同僚が横に並んだ。
あら、またあそこに座ってるわ。
徘徊してるおばあちゃん。
家族はいるのかしら。
どうかしら、心配ね。


その女性はベンチから立ち上がり、誰かに腕を絡ませるようにしてゆっくりゆっくりと来た道を歩いていった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?