E.M.フォースターの民主主義万歳
私はE.M.フォースターの大ファンである。今回は評論を紹介してみたい。その評論とは『私の信条』である。民主主義への讃歌である。
この評論は"私は絶対的信条を信じない。"といきなり梯子を外す文章から始まる。しかし内容は完全に絶対的心情吐露である。
議会はただのお喋りの場にすぎないと揶揄されるときがあるが、実はその気軽なお喋り、批判が大事だという。イギリスは公僕による行政国家だ。完全なエリート社会である。そのエリートが間違ったときに牽制する役割を果たすのが「お喋りの場」であるという。
こう文章にある。"民主主義には、もうひとつ長所がある。それは批判を許すことであって、もし公然と批判ができなければスキャンダルはかならずもみ消される。"
そしてフォースターは民主主義への讃歌を贈る。"というわけで、民主主義には二度万歳をしよう。一度目は、多様性を許すからであり、二度目は批判を許すからである。ただし、二度で充分。三度も喝采する必要はない。三度の喝采に値するのは「わが恋人、慕わしき共和国」だけである。"
流麗な文章で高らかに謳い上げた評論は少し滑稽な文章で終わることも楽しい。"裸でこの世に生まれてきた私は、裸でこの世を去っていく! これは、またすばらしいことなのだ。おかげで、シャツの色は何色でも、その下の自分は裸であることに気がつくのだから。"
E.M.フォースターはいつも読ませる。
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