逢魔が時の光と影
その日は、夕方のわりに不気味なほど静かだった。街灯の光が地面に降り注ぎ、光と影のコントラストがはっきりしだした。だが、この一見美しい夜景には、何か邪悪なものが潜んでいるかのように感じられた。
突然、街灯が消えた。その時、静寂が破られ、アスファルトで敷き詰められたはずの道に、ジャリッジャリッと、石を掻き分けるような、不気味な音が鳴り響いた。
彼の足元に、何者かがまとわりついているような感覚が沸き起こった。そしてなにか得体の知れないものの気配と痛いほどの視線が、ザワッと彼の神経を逆なでした。
やがて、悪魔としか言いようのない、実体化した影が急速に近づいてくるのが見えた。その影は人間の姿をしていたが、顔は醜く歪み、目は赤黒く光っていた。このおぞましく、見るからに邪悪な存在は、いわば逢魔が時に現れる、悪夢のようなものだった。
彼は身の毛がよだつほどの恐怖に襲われ、懸命に逃げようとしたが、徒労に終わるのは目に見えていた。この邪悪な存在は、彼だけをターゲットにしていたのだ。彼は必死に逃げ続けたが、息を切らしてふと立ち止まった瞬間、ついに追い詰められてしまったのだ。
彼が最後に見たものは、その存在が自分に襲いかかる瞬間だった。ヒィッと息を呑むような悲鳴を上げたと同時に、彼自身もこの不気味な存在に取り込まれてしまったのである。
誰ひとり、見ていない間の出来事だった。次の逢魔が時に、再び同じ悲劇が起こることは、容易に予想できる。
逢魔が時に、ご用心…
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