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帰省しないならせめて、地域の神様にご挨拶を。

地元を離れてから、お盆もお正月も一度も帰省していない。

職場の人には毎回「帰らないの?」と聞かれるけれど、わたしも毎回「帰らないですね〜」「家族と不仲なので」と、もはや定型文となった答えを返している。
いっそ地元を出た経緯をつまびらかに話してしまえば誰も聞かなくなるかも、なんて黒い感情が湧いたりもするけれど、実行に移すことはきっとない。

そんなわけで、今年のお正月も猫さんとふたりだ。

***

帰らないならばそれなりに何か予定は立てているのかと職場の人に聞かれ、予定も特にはないですねと答えると、家の近くの神社に初詣とか行かないんですか、と聞かれた。

———初詣。
実家にいた頃も母がお正月の混雑を嫌がるので積極的に行くことはなかったし、
去年、住んでいる地域の近郊にある大きな神社に行ってみたら、某夢の国のエントランスに負けず劣らずな長蛇の列で神社に入ることさえ叶わなかったので、今回はもういいかな、と思っていた。

でも、家の近くの、いわゆる地域の小さな神社ならそこまでは混雑しないかもしれない。
運動不足解消も兼ねて、神社まで歩いて行ってみることにした。

***

マップに「近くの神社」と入力して検索すると、歩いて20分ほどのところにあることがわかった。
往復40分、少し歩くのにもってこいだ。

家を出て歩き始めると、冷たい風が強く吹きつける。
寒さに身をすくめつつ、目的地をめざして歩き続けた。

***

そうして歩くうち、目指す神社の名前が書かれた看板が見えた。
目の前まで行ってみると、看板があるところから入ることができるようだった。

通路に人気は全くない。
いわゆる地元の神様が祀られた神社なのかと思ったけれど、そこまでではなかったのだろうか。

———なんて甘い考えは、中に進んですぐに打ち砕かれた。
境内は人で賑わっており、その奥にものすごい行列ができている。

どうやら、わたしは裏口から入ってしまったようだ。
本来最初に通るべきだった正門から出ると、参拝客の列はさらに続いていた。

正直、一瞬辟易してしまったけれど、混んでいるからと言って何もせず帰るのはもったいない気もする。

せっかくだからと意を決し、わたしも行列の一員に加わった。

***

なかなか進まないことを覚悟していたけれど、進むペースは意外と早かった。
並び始めて30分ほどで、手水舎の前まで来ることができた。

手水舎の横には花手水舎も飾られており、思わずカメラのシャッターを切る。

手を清めてさらに10分ほど経った頃には、拝殿の前までたどり着くことができた。
タイミングよくお財布にあった5円玉を賽銭箱に入れ、手を合わせてお参りする。

神社を出る頃には、なんだか心が洗われたような、すっきりとした気持ちになっていた。

***

家に向かって歩き始めると、来た時よりもさらに風が強くなっていた。
どうやら神社にいる間に体が冷え切ってしまったらしく、寒さが桁違いだ。

思い立ってコンビニに立ち寄り、あんまんを買った。
受け取ったあんまんはほかほかで、ビニール袋越しにかじかんだ手を温めてくれる。
カイロのように両手で包み込んで、再び家へと歩いた。

帰ったら、あんまんと温かいお茶でひと息つこう。
帰宅後の楽しみができたことで、足取りが少しだけ軽くなった気がした。

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