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読書録:『海のアトリエ』

今年は誕生日が休日で、ひとりだった。
いちおう自分をもてなそうと、すてきな本屋Titleさんに行った。
どれを取ってもすてきな本という中から、今の自分が欲しいものを探りながら物色するのは楽しい。
店内をくまなく味わって、数冊購入した。

お店は1階が書店、2階はギャラリーになっていて、本を買って落ち着いたところでギャラリーに向かった。
その日は(そして今も)堀川理万子さんの絵本『海のアトリエ』の原画展だった。

軽い気持ちでふらりと観て最後に絵本をよんだら、
思いがけず何かしっくりくるものがある。
それは何かな?と思いめぐらしたけど、
それは読んだ後に希望のようなものが残るところだと思う。

絵本には3人の女性が出てきて、
中心は子供の頃のおばあちゃんと海の近くで一人で暮らす絵描きさんだ。
絵描きさんがその子のことを大切に、一緒にいる時間を素敵なものにしようとしているのがわかる。
絵描きさんが素敵だと思うことが、女の子にも伝わる。

そういうことが繰り返し繰り返し起こって、いろんな人の人生が紡がれていくんだなと。
この子にとっては、絵描きさんだったけど、いろんな人がそうなり得る。
そういう人に出会うことも、そういう人に自分がなることも、感動的だ。

そして私にとっても、この絵本の中の絵描きさんはなんとなく希望だ。
ひとりで誕生日を過ごす寂しい女かもしれないけど、
素敵だと思うことや、日々の楽しみは、けっこう持っているし。
もしも自分に似た子が落ち込んでいたら、その子と一緒に過ごして、
こんな楽しみ方もあるよと見せてあげられるかもしれない。
そんな希望だ。

最後に、絵やシーンがとても素敵だ。
どのページも心地よさそうで、人の表情にもアクがなく、全体にシンプルだけど描き込みはたくさんあって見ごたえがある。

誕生日にピッタリの本で、嬉しかった。

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