受験の目的を見失わないこと
中学受験をする際に最も重要なこと、それは「受験コンセプトを決める」ことだと思います。何のために受験をするのか、どういう中高生活を送って欲しいから受験するのかをよく考えてほしいのです。それは大人が考えることであって、年端も行かぬ子どもが長期的視野に立って考えることは先ず無理だと思います。最初にそこをきちんと考えておくことで、後々起こる「ブレ」を回避することが出来る場合が多いものです。
そもそも中学受験生は「子ども」ですから、いくら本人がやりたいと言ったとか、本人の意志で受験を志したと言ったところで、そんなに自己責任を追求するわけにはいきません。子どもゆえに集中力ややる気にムラがあることも考えられますし、モチベーションが上がったり下がったりすることもあります。受験指導の現場にいる我々からすれば、そんなことは最初から分かりきっていること、つまり「想定の範囲内」のことなのですが、どうも親御さんはそこの見積もりが甘い気がします。我が子しか見ていないから、不安になることもあるでしょうし、我が子の出来なさに愕然としてしまうというケースもあるのものです。
「受験をあきらめます」
受験勉強が思うように進まなかったり、成績が思いのほか伸びなかったり、なかなか志望する中学校に合格できる偏差値に到達しなかったりすると、受験のそもそもの目的をいきなり見失い、おかしな方向へ行ってしまう方がいます。
まず最初に見かけるのは、「成績が伸びないので、受験をあきらめます」というケース。もちろんそれぞれのご家庭の事情や方針もありますから、こういうケースは特に引き止めることもなく、致し方ないと思って送り出すことが多いのですが、それがどうも「無理筋」である気がしてならないことがほとんどです。
例えば受験生なのに、1日の勉強時間が全然足りないと嘆き、やる気が見られないと子どもを責める親御さん。毎日一体どのくらい勉強しているのかと聞くと、2時間とか3時間。「立派じゃないですか!」と言うと、キョトンとされます。毎日そのくらい勉強してくれていたら、1年後には偏差値が10上がりますよ。要は、一体どこを目指して勉強しているのですか?という話。もちろん麻布だ開成だというのであれば、その勉強時間では足りないのかもしれません。しかし、あなたのお子さんが目指している学校なら十分ですよ、と言いたくなります。
きっと、大手塾に通う子の話をママ友どうしの会話などで聞いたりしているのでしょうね。確かに不安になるケースもあるでしょうが、お子さんがどういう学習をしてどういう学校に行くのかというコンセプトがきちんとしていないと、どんどんブレて、結局は最上位の学校を目指す子と同じような勉強を強いてしまうケースは、世の中、結構多いのではないかと思います。それが出来ないから、「もう諦める!」…… 大人が自棄を起こしちゃいけませんよね。
そもそも、小学4年生、5年生になるまで、そんなに勉強するような下地を作ってきたわけではないでしょう?と突っ込みたくなるケースも多いものです。大人じゃないわけですから、「受験生になったのだから、自覚を持って勉強に取り組む」などということが簡単にできるわけがありません。かといって、他所のお子さんの出来が極端に良いわけでもないです。他所のお子さんは、幼い頃から勉強させてきたとか、能力の開発に相当なお金と時間を投資してきたとか、学習習慣をつけるために定期的に塾や学習教室に通わせてきたとか、ちゃんとそこへ至る「下準備」をしてきたのです。中学受験を始めるまではノビノビと遊ばせてきて、急に塾に入ったのだから勉強しろといったところで、そんな都合よく勉強を始める子などいるわけがありません。
子どもが勉強しないのを理由に受験をあきらめるというのは本当なのかな?と勘ぐりたくもなりますし、そう簡単に子どもをコントロールできるものでもありません。親御さんは短気を起こさず、もう一度何のために受験させているのだっけ?と思い返すことが重要です。
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