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心のケアは「お姉さん・おばちゃん」の仕事ではない

はじめに

職場で「心理的安全性」が重要だという話はもはや当たり前になった。そして、そのためには「組織開発」が重要で「心のケア」は仕事であるという認識も、そういう言葉を使うかどうかはさておき常識になりつつある。

もっとも、心理的安全性も組織開発も「昔から存在していた」ものだ。問題は、これを誰が担ってきたのかということだ。結論からいうと、ボクの持論は、組織開発を担っていたのは現場の「お姉さん・おばちゃん」で、これをゼロ査定し続けてきたのが男性中心の役員であり社会だという説だ。


心のケアの実態

外資系企業の心のケア

持論を展開する前に、そもそも心理的安全性が外資系企業でどのように担保されるのかを概説しておこう。結論からいうと、外資系企業は「仕組み」として心のケアをする。外資系企業が「冷たい」というのはウソだ。ケアをどう担保するのかの発想が異なるだけだ。

具体的には、いわゆる「1on1」は外資系企業で生み出された仕組みで、このような仕組みを通じて心理的安全性を担保しようとする。もちろん、1on1をする人物の質で結果が変わるのはどこも同じことだが、この「仕組み」で解決しようとする姿勢が外資系企業にはある。

日系企業の心のケア

これに対して、日本はどうだろう。僕は「遅れている」とは思わない。心のケアはどうしたって必要だからだ。この点、多くの企業は心のケアを「お姉さん・おばちゃん」に暗黙裡にやらせてきたのではないかというのが僕の持論だ。

コミュニケーション感度が高いのは往々にして女性だ。そして、心のケアが必要な人をいち早く見抜くのは現場にいる「お姉さん・おばちゃん」だ。そして、彼女たちが見えないところでケアをして何とか現場をもたせている。それが心のケアの実態ではないか。

心のケアのフリーライド

そして、「お姉さん・おばちゃん」が見えないところでケアをするので、上司としての「感度の低い男性」が何も気づかないまま数字や事業のことばかり偉そうに語っている。それに全員が呆れている。それと同時に、全員が「言えない・言ってもしかたない」とやる気を喪失しているのではないか。

そんな状態で「1on1」等と仕組みだけ導入すると、ただでさえ「感度の低い男性」と喋らなければいけない。その1on1の時間が苦痛でしかないという悲鳴をケアするのは、結局は「お姉さん・おばちゃん」だったりする。もはや尻拭い以外の何物でもない。

そうして「お姉さん・おばちゃん」の心のケアというシャドーワークに全員がフリーライドすることによって何とか心理的安全性のようなものを身近なところで必死につくりあげて耐えているのが日本の職場のココロの風景ではないか、というのが僕なりの見立てである。

心のケアを本気でやる

では、外資系企業のように1on1をやって「お姉さん・おばちゃん」が果たしてきた役割を上司がやればよいのだろうか。それでは僕は本質的な解決にはならないと思う。仕組みを入れれば何とかなるというのは、経営陣が抱く幻想にすぎない。

まず「心のケアを本気でやる」という覚悟を経営陣が行動で示すしかない。うまくやれるかどうかはさておき、フリーライドは絶対にしない、心のケアは自分の仕事だという当たり前の事実を素直に受け容れて、日々の行動に落とし込む以外に「本気」というのは伝わらない。

そして、「心のケアを本気でやる」と、実は「お姉さん・おばちゃん」は今まで以上に心のケアをしてくれる。隠れてやっていたことを隠さずやれるからだ。そうして全員で「表舞台」でケアをする文化を形成するプロセスが、僕は「組織開発」や「心理的安全性」の実務のエッセンスだと信じる。

おわりに

心理的安全性や心のケアは大切だ。そんなことは当たり前の話だが、多くの企業ではこれを「仕組み」として導入して、あとはお願いしますと現場に丸投げする。たしかに、そういうことも組織開発が「仕事」であるという認知を形成する上では重要だろう。

しかし、本質的に重要なことは、多くの職場では心のケアを「お姉さん・おばちゃん」にフリーライドしてきた、特に往々にして上司になる〈男性〉はこの実態に無頓着であったということから目を逸らさないことだ。「お姉さん・おばちゃん」が必死にやってきてくれた仕事をゼロ査定しないことだ。

そういう自己反省なくして、心理的安全性や組織開発という「キレイゴト」はうまくいかない。僕はそう思う。


最後に

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