おはようの物語2025/3/2
「あーあ、つまらない」
さちこはいつもつまらなそうな顔をしている。
鳥が地面をつついても、雲がもくもく模様を描いても、風が花の香りを運んできても。
さちこはいつもつまらないが口癖だ。
「あーあ、つまらない」
そんなさちこのまわりをくるり小さなつむじ風が笑った。
『さちこさん、つむじ風になってみるかい?』
「え?」
一瞬でさちこはつむじ風になった。
『ほらごらんよ』
さちこが見た世界はくるくる回る。歩く人走る人自転車の人車の人。親子連れスポーツの仲間一人の人年配のご夫婦。それぞれのいとおしい日々がなんとなく伝わってくるようだった。
いつもと同じ町のはずなのに、こんなにもじんわりと沁みる町だとは、全然知らなかった。
気がつくと、さちこはいつもの道にいた。いつもと同じ町に立っていた。
「なんだったのかしら?」
さちこはくるりと町を見渡した。いつもと同じ、けれどいとおしさがあるように感じたのはなぜだろうか。さちこはそっと歩き出す。
「あーあ、つまらな……、くもないかも」
さちこはそれから、道を歩くときはくるりと顔を回すようになった。最近のさちこの口癖はこれだ。
「あーあ、いとおしい町。おはよう」
おはようからの物語を作っております。
物語をつくる、練習です。つまらないと思っても、本当はいとおしいことがかくれていて、見えてないだけなのかもしれませんね。
ありがとうございます。良い日々をお過ごしくださいませね。
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