よつばものがたり(よつばのくに)
「くるしいよ」
「そうね」
「息ができないよ」
「フフ」
そうして私は頓服薬を、カフェインレスコーヒーで飲もうとカップをすする。
「……!」
熱い。口の中火傷する。
「ちょっとはおさまった?」
「勘弁してよ」
「フフ」
まったく。よつばちゃんはいつでも明るくて優しくて。私に気遣いまでしてくれる。ま、私の空想だけどね。
よつばちゃんは、小さな小さなよつばの妖精。妖精なのかな? なんだろう?? 宇宙からきたとかかな??
「あ、ちょっと。どこへ行くの?」
「ついてくる?」
「え……」
「フフ……」
私は少し思案した。
「ごめん。ギガがないんだ」
そう、スマホのギガがない。インターネットでよつばちゃんの4コマ漫画を読めないみたい。
「ヘーキ。ソレ!」
「あ!」
気づくと、そこは原っぱだった。虹のかかったお家もみえる。
ぼうぜんと見回す。360度見回しても、美しいのどかな世界だった。
「ここは……」
「ソ♪」
「よつばのくに!?」
「フフ」
「あ、ちょっとま……」
よつばちゃんは空をヒラヒラと飛んでいってしまった。
「……」
なんてのどかなのかな……。お日さまがポカポカあたたかい。
「ネェ〜?」
「ヒッ!」
「ネェ〜、あなたも人間さん?」
「え、人間……だけど……」
こよつばちゃんたちは顔を合わせ、フフッと微笑んでいた。
「ワーイ!」
「ヤッホー!」
「え、ちょっ」
こよつばちゃんたちは、私のまわりをヒラヒラと舞う。
「なにしてあそぶー?」
「えーと。じゃ、じゃあ、しりとりする? しりとり」
「りんごの木」
「きのこ」
「このは」
「はらぺこ」
「こよつばちゃん」
「ん?」
「ん、だよ。んではじまるコトバよ」
「ん??」
「ヤッター♪」
「ランランラン〜♪」
こよつばちゃんたちは、うれしそうにヒラヒラと空へ飛んでいってしまった。
「な……!」
また、ひとりぼっちになってしまった。
けれど、さびしくはなかった。さびしくは。
だってここは、のどかなよつばのくに。
「そう、さびしくなんて……」
ポロッ。
気がつくと、私のほっぺたに、大きな涙のつぶがこぼれていた。
私はあわててそれをぬぐって。
そっと原っぱに座った。
優しいそよ風。流れてく雲。草のささやき。
それはいつか、大好きだった友だちと座った原っぱと同じ景色だった。
けど、今は、となりに友だちはいなくって。
ひとりきり。
けど……。
なんでかな、ポカポカする。
まるでいつでもとなりに友だちがいてくれるような。
あったかいな。
……フフ。
「オーイ?」
「え?」
「もう時間よ」
「時間?」
「ソレ!」
「あっ!」
気がつくと、私のカフェインレスコーヒーは空っぽになっていた。
そっか。
「フフ」
「よつばちゃん。フフ……ありがとう」
「またね♪」
しばらくボーっとして、私はカフェインレスコーヒーのカップを片付けた。
それ以来、よつばちゃんと会ってないんだけど……。またどこかへおさんぽに行ったのかな?
ありがとうね、よつばちゃん。
ありがとう。
(ことば:おはようよねちゃん)
(イラスト:じゅんこ3)
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