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2024年12月26日第79回労政審雇用環境・均等分科会はある意味「異常」だった

女性活躍推進関連の他に、カスタマーハラスメントや就活ハラスメント、自爆営業の防止の措置義務の法制化に向けて踏み出した今年の労働政策審議会・雇用環境・均等分科会。
昨年末の第79回で労使の検討を終え、年をまたいで立法に向けた手続き段階に入っています。内容についてはすでに詳しく報道されていますので、ここでなぞることはしません。

さて、タイトルの第79回分科会ですが、通常、前回までに労使から意見や主張が出し尽くされ、この79回までのあいだに厚生労働省の担当部局が裏方の事務局となって最後の根回しが行なわれていたはずです。

したがってこの回は多分に形式的な回です。
つまり今日までの検討の結果について労使双方から謝意と所感の表明といういわばエール交換があり、〆として分科会長から「本日の決定稿を以って労政審会長に報告する」旨の確認が労使に対して為され、異議なしで閉会。
ですので、わずか15分で終わりました。これもいつも通り。

ただし、「おや?」というか「ほぉ」というか、小さな驚きを禁じ得なかった発言がありました。
それは、経団連の布山委員が所感の中で語ったことです。
「2019年6月のILO総会で決議・発効しながらまだ日本国政府が批准していないILO第190号条約「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」の批准に向けて、政府は努力して欲しい」(要旨)
という発言。
そして事務局の厚生労働省雇用機会均等課からも、これをなぞる形で「前向きに取り組んでいきたい」(要旨)との回答がありました。
これは、あえて「公式に記録に残す」ための発言であり、厚労省も応じたということは事前にその合意・了解が出来ていた、ということです。
そしてこの時、連合をはじめとする労働側委員も特に驚いた様子がなかったので、完全に官公労使の意思統一ができていた、ということになります。

ちなみにこの条約は日本国政府は上記のILO総会で賛成票は投じているものの批准はしていません
ついでに言うと、労働法関連では他にも2本、未だに長年批准していない条約があります(105号と111号)。
批准すると1年以内に国内法を整備する義務が生じるので、政府は「他の法令との整合が取れていない」との理由でそれらを批准しないで来ています。
例えば、男女雇用機会均等法も
 ・1979年 国連総会で女子差別撤廃条約を採択
 ・1985年 日本国批准(↑ 上記の6年後)
 ・1986年4月 男女雇用機会均等法施行(↑ 上記の1年後)
というプロセスを踏んでいます。

えっ
しかし、この190号条約の批准は今まで再三再四、労働側から主張されることはあっても、使用者側としてはこの手の労働関係の法制化には経営の手足が縛られることを警戒してか、常に「慎重であるべき」と対応してきたのに!?
しかも、今日は労働側からの所感でも言及していないのに、なぜ使用者側から!?

これはいったい、どういう風の吹き回しでしょう。いよいよハラスメント防止についてより強固な法制化に向けた号砲が鳴った、ということでしょうか。
少なくとも形式的なエール交換と確認だけで終わると思っていた今日の回は、この通りある意味「異常」であり、意外なところでめちゃくちゃ面白い回でしたが、公式議事録がどう表記するのか、とても興味深いです。

※議事録等のURL(⇩)

2025年1月30日現在、まだ第79回の議事録は掲出されていません。

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