見出し画像

ストーリーで学ぶ|美咲のバレンタイン商戦~フィナンシェに想いを込めて~【特別短編・前編】

Kindle本『マーケティング女子、起業します!』
書き下ろし編・前編

美咲と仲間たちが贈る、
バレンタイン商戦のマーケティング物語です。

AISASフレームワークを実践しながら、
想いの込もったフィナンシェを
全国のお客様に届けるまでの軌跡を
お楽しみください。

【登場人物】

・今井美咲
株式会社ビューティマーケティングの共同代表。
システムエンジニアから営業職を経て起業。
中小企業診断士の資格を持つ。

・佐伯里奈
美咲の大学時代からの親友で、
ビューティマーケティングのもう一人の共同代表。
行政書士、中小企業診断士の資格を持つ。

・斎藤彩香
美咲の姪っ子。
大学を卒業したばかりの新入社員として、
ビューティマーケティングで働き始める。

・新田俊介
美咲の元上司で、現在も良き相談相手。
中小企業診断士として第一線で活躍中。

▼本編はこちら
KindleUnlimitedをご利用の方は、
無料でお読みいただけます。

【マーケティング女子、起業します! 書き下ろし短編・前編】

「美咲お姉ちゃん、見て!」
大学を卒業して間もない彩香が、
モニターを指さします。

姪っ子の彩香は、
今年の春から
株式会社ビューティマーケティングで
働き始めていました。

この会社は、
美咲と里奈が共同で立ち上げた
ウェブマーケティング支援の会社です。

美容とヘルスケア分野に特化していましたが、
最近では健康志向の飲食店のコンサルティングも
手がけるようになっていました。

その中でも主要なクライアントの一つが、
オーガニック食材にこだわった
レストラン・ルミエール。

オーナーの平山亜紀子さんとは、
美咲が個人事業主だった頃からの付き合いで、
健康的な食事と美容の関連性を
意識したメニュー開発などで
成果を上げてきました。

新入社員として日々奮闘する彩香に、
里奈も画面を覗き込みます。

「何を見てるの?」
美咲が近づきます。

「レストラン・ルミエールの
平山さんからメールが来てるの」
彩香が説明します。

『バレンタイン限定の
チョコレートフィナンシェを企画しています。
いつもご好評いただいている
アーモンドフィナンシェをベースに、
オーガニックチョコレートを
使った特別なバージョンです。
全国のお客様に想いを届けたいと思い、
今回初めて通販にも挑戦したいのですが、
アドバイスをいただけないでしょうか』

「面白そうね」
美咲がコーヒーを
一口飲みながら言います。
「でも、通販となると」

「美咲お姉ちゃん、
何か心配なことでも?」
彩香が覗き込みます。

「そうね。
お店で直接お選びいただいているお土産の良さを、
通販でどう伝えていくか。
それが課題になりそうね」

「早速、平山さんと
オンラインミーティングの時間を
調整しましょうか」
里奈がスケジュール帳を開きます。

その時、オフィスのドアが開き、
俊介先輩が顔を出しました。

「やあ、お疲れ様。
近くまで来たから、
ちょっと寄ってみたんだ」

「先輩」
美咲が立ち上がります。

「実は、ちょうど相談したいことが」
美咲は、通販での価値伝達について
抱えている悩みを話しました。

「なるほど」
俊介先輩が穏やかに微笑みます。

「でも、お客様が求めているのは、
商品そのものじゃないかもしれないよ。
どうしてそのお土産を選ぶのか、
その理由を考えてみるといい」

「...!」
美咲の目が輝きます。
「そうか。レストランのお土産として
選ばれ続けてきた理由、
その想いを伝えることが大切なんですね」

「その調子」
俊介先輩は立ち上がります。

「じゃあ、頑張ってね。
また様子を見に来るよ」

「ありがとうございます」

先輩が去った後、
チームは改めて平山さんのメールを見直します。

「バレンタイン商戦までの準備を考えると、
できるだけ早く方向性を固めたいですね」

里奈が提案します。

「そうですね。
平山さんと詳しく相談する機会を設けましょう」

美咲が頷きます。

後日、オンラインでの打ち合わせが
設定されました。
画面越しの平山さんを交えて、
チームは現状分析から始めることにしました

「まずは、どんなお客様に届けたいのか、
整理してみましょう」
美咲が提案します。
「レストランでのお土産購入の方々の特徴や、
バレンタインならではのニーズを
確認していきたいですね」

「そうですね」
里奈も頷きます。
「実店舗での評価の高さを、
どう通販でも伝えていけるか。
まずはそこから考えていきましょう」

「お客様の声を見てみましょう」
美咲が画面に向き直ります。

オーガニックレストラン・ルミエールでは、
アーモンドフィナンシェが
人気のお土産商品として知られています。

平山さんは、
これまで集めていた顧客の声を
共有してくれました。

・香ばしくて上品な甘さが素敵
・オーガニック素材のこだわりが好き
・大切な方へのお土産に最適

「では、整理してみましょうか」
美咲がゆっくりと立ち上がります。

「AISASのフレームワークで
整理していきましょう」
里奈が提案します。

「AISASって?」
彩香が首を傾げます。

「お客様の行動を5つの段階で考えるのよ」
美咲がプレゼンテーション資料を共有しながら説明します。
「2004年に電通さんが
提唱したフレームワークなの。
インターネットが普及した後の消費者行動を
理解するのに、とても役立つのよ」

「具体的には?」

「Attention(注目)、Interest(興味)、
Search(検索)、Action(行動)、Share(共有)。
この流れに沿って戦略を立てていくの」

チームは各段階の施策を
書き出していきます。

【Attention(注目)】
「実店舗のお客様へのDM配信、
インスタグラムでのプロモーション投稿、
そして食品メディアへのプレスリリース。
これらを通じて
『オーガニックチョコレート×人気フィナンシェ』
という新しい価値と、
バレンタイン限定という話題性を
発信していきましょう」

【Interest(興味)】
「商品ページでは、
オーガニックチョコレートの産地や品質へのこだわり、
アーモンドフィナンシェとの組み合わせの妙など、
商品ストーリーを詳しく紹介。
実際のお客様の声も、
写真付きで具体的に掲載していきましょう」

【Search(検索)】
「店頭QRコードからの誘導に加えて、
インスタグラムやグルメサイトでも
商品ページへのリンクを設置。
『バレンタイン』『オーガニック』
『限定スイーツ』などの検索キーワードで
上位表示されるよう、SEO対策も行いましょう」

「今、バレンタインって
変化してきているのよね」
彩香が指摘します。
「SNSでも、義理チョコより
『本当に贈りたい人への特別なギフト』
という投稿が増えてるの」

「そうね」
里奈が付け加えます。
「1960年代に日本で始まった時は、
女性から男性へ愛を告白する日として
広まったのよ。
でも今は、
大切な人への感謝や想いを伝える機会として、
より自由な形になってきているわ」

「面白いですね」
平山さんが目を輝かせます。
「私たちのフィナンシェも、
単なるお菓子としてではなく、
想いを込めたギフトとして提案できそうです」

平山さんが話を続けます。
「200セット限定で考えています。
品質管理もしっかりできる数なんです。
でも、通販は初めてで」

「その数なら、
一つ一つ丁寧に対応できそうですね」
美咲が頷きます。
「実店舗での評判を大切にしながら、
新しい挑戦ができる規模だと思います」

「では、最後に次のステップを確認しましょうか」
美咲が共有画面のスライドを進めながら説明します。
「AISASの後半、ActionとShareの段階ですね」

【Action(行動)】
「スマートフォンに最適化された注文フォーム、
複数の決済方法、お届け日時指定、
ギフトラッピングオプション。
特に、バレンタイン期間中の配送スケジュールは
分かりやすく表示して、
安心して注文いただける仕組みを整えましょう」

【Share(共有)】
「パッケージは開封時の驚きを演出し、
写真映えする工夫を。
商品と一緒にストーリー性のあるメッセージカードを同封し、
インスタグラムでシェアしやすいハッシュタグも提案。
さらに、シェアいただいた方には次回使えるクーポンを
お送りする企画も検討しましょう」

バレンタインまであと1か月と少し。
オーガニックチョコレートの香り漂う
フィナンシェに、それぞれの想いを込めて。

新しい挑戦の1ページが、
今始まろうとしていました。

(後編に続く)

▼本編はこちら
KindleUnlimitedをご利用の方は、
無料でお読みいただけます。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集