台東区の避難所ホームレス受け入れ拒否騒動、悪いのは台東区だけか？ #1

【定期購読マガジンについて】
[内容]　元芸能記者、元AV監督などなど流浪の人生を送るライター荒井禎雄が、主に実体験を元に様々なジャンルの記事を書いています。
[特に高評価された時事ネタ] 　表現規制問題 ・フェミニズム問題・セックスワーカー問題・ネットウヨク問題など
[フィールドワーク]　地域批評・商店街批評・グルメ
※主に東京23区の下町や商店街を中心に、その街の住みやすさや特色などについて解説します。
[料金] 　月額500円（継続購入になりますので、購読を中止する場合はお手数ですが解除手続きをお願いいたします）
[更新頻度]　2018年11月の開設以来、毎月約20本の記事を掲載しています。 マガジン購入者限定のネット配信番組やイベントなども思案中ですので、ぜひ応援＆ご購入よろしくお願いいたします。
[ご購入はこちらから]
https://note.com/oharan/m/me7f4e089bacd

台東区の避難所ホームレス受け入れ拒否騒動、悪いのは台東区だけか？
#1　https://note.mu/oharan/n/n776bbed21bc2
#2　https://note.mu/oharan/n/n24f01a034ea6
#3　https://note.mu/oharan/n/n9b6a6379835a

台東区がホームレスの避難所受け入れを拒否

今回の台風騒動の中で少し気になるニュースが流れていた。なんでも台東区の避難所が、「住所が分からないから」を理由に、ホームレスの受け入れを拒否したというのだ。

台東区のホームレスの人の避難所受け入れ拒否問題を考える（大西連） - Yahoo!ニュース

これに対し、台東区に批判の声が向けられているのだが、どうにも私はこの話を台東区だけの責任としてしまうのは筋違いな気がしてならない。

そこで、今回は東京都のホームレスを含む生活困窮者や社会的弱者が、歴史的に世の中からどう扱われてきたのかを考えてみよう。

それによって「誰がどう悪いのよ？」という、世間の皆様が最も見たくない現実が浮かび上がってくるに違いない。

「歴史的に押し付け合いしてたよね？」という説明をするために養育院の話をしよう

生まれも育ちも板橋区で、板橋区の専門家なんて肩書きでライター活動をしている人間として、まず最初に取り上げたいのは 「養育院」である。

この養育院とは、今でこそ老人医療の専門病院（東京都健康長寿医療センター）として生まれ変わったが、遠く大正・昭和の時代にはホームレスなどの社会的弱者だけではなく、ハンセン病・結核・精神病などを患った人間を隔離するための施設という側面もあった。

早い話が「ごく普通の一般市民の皆様が近くに置きたくない人間をかき集めて閉じ込める施設」それが養育院だったのである。

この養育院は言ってみれば江戸・東京の街の福祉の始まりというべき施設だったのだが、様々な理由で常にあっちこっちを転々とさせられていた。

養育院の流浪の歴史

養育院が誕生したのは明治5年。本郷の加賀藩上屋敷跡（現・東京大学）の一角に作られた。そもそも何故この時期に養育院が作られたかというと「海外の要人が日本を訪れるのに、街に浮浪者や孤児がうろついてたら恥ずかしいから、どっかに閉じ込めとけ」という理由である（この前身となる存在や概念としては、松平定信の時代からあったという事も併記しておく）。

そうして建てられた養育院だったが、そういう始まり方をした施設だけに周辺住民が嫌がったり、収容者が増え過ぎて手狭になってしまったりと、一か所に腰をすえるという事が出来なかった。

本郷にいたのは要人が日本を去るまでのほんの５日間で、その後は浅草溜（千束）に移された。ちなみに溜（ため）というのは、病気になった囚人や浮浪者などを収容する施設で、そこを管理するのは「非人のお仕事」とされていた。この時期の養育院というのは ”そういう扱い” なのである。

明治６年になると、上野の護国院（現・東京芸術大学）に敷地を確保し、そこに移動。さらに上野の次は神田和泉町（秋葉原近くの三井記念病院の辺り）、本所長岡町（墨田区石原4丁目）と流浪の旅を続けるも、大塚辻町（新大塚駅近くの大塚公園・大塚病院一帯）に移ったところでやっと腰を落ち着け、その時代に各地により専門的（病気や用途など）な分院を建てて行った。

板橋区にすら追い出されそうになった養育院

その後、大正3年～12年にかけて板橋区に広大な土地を手に入れ、まず分院を建てた（幸町・交通公園の近く）。続いて大塚の本院を移転させるべく、栄町の今の土地（一部は板橋競馬場跡地）で大規模な工事を始めるが、その頃に関東大震災により大塚本院が再建不能レベルの壊滅。急いで本院機能を移転させ、これ以降は板橋区栄町の同じ場所に在り続けた。

「さすが、愛する我が板橋区が器の大きさを見せて養育院を引き取ったのだな」と言いたいところだが、実際にはそうではない。

むしろ板橋区も養育院を喜んで区内に置いていた訳ではなく、実は戦後の焼け野原の時代に「イメージが悪いから」と、再建のどさくさに紛れて養育院を追い出そうとしたのだ。

ところが、なんやかんやあって追い出しに失敗し、養育院は「現地で復旧する」という事になり、今に至る。

余計な話を付け加えると「本院の追い出しには失敗したが、今の遊座大山商店街の中ほどにあった養育院の入り口にあたる土地を譲渡させた」なんて話もある。その土地に作られたのが区立文化会館や板橋一中だ。

現地を知っている住民にしか通じないと思うが、昔の養育院とは文化会館から ”栄町のあの一画” まで繋がる超巨大な施設だったのだ。

ストリートビュー（板橋区立文化会館）· Google マップ

※実際の絵があった方が分かりやすいと思うので、遊座大山商店街と文化会館のストリートビューをどうぞ。この位置からひたすら前で進んで行くと東京都健康長寿医療センターがあり、そこまでの敷地すべてが "そもそもの養育院" でした

このように、日本において養育院に代表される 「福祉施設」 は各地をたらい回しにされて来た存在だ。

治療が難しかった伝染病や精神病を患った人間、障がい者、浮浪者や孤児、そうした人間の受け皿は江戸の昔からあったが、冒頭にも述べたように「ごく普通の世間一般の皆様」の民意によって、街の隅へ隅へ追いやられて来たのである。

これがホームレス問題の根底に流れているのだという事を忘れるべきではない。今だってこの手の施設だけじゃなく、例えばペットの火葬場が街に作られるとなったら猛烈な反対運動が起きるでしょう。

全てはそういう話であって、誰が悪いとか、台東区だけが悪いなんて話じゃないんだよ。

という訳で、長くなる悪寒がしたので今回はこの辺で続く。

※ 本文は以上です
以下はテンプレートがあるだけなので、応援してくださる方のみご購入ください。

https://note.com/oharan/m/me7f4e089bacd
ちなみに、有料マガジン（500円/月）も記事単品も同価格ですので、課金してくださる方には全ての記事が読み放題になるマガジンのご購入をオススメしております。