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折爪岳・五つの滝をめぐる二人~先祖をたどる旅⑪

この旅はずっと一人旅のはずだったのだが、
ここに来てなんと道連れを得た。


親戚でも家族の縁者でもないが、
私の道中を気にかけて
折爪岳に一緒に登ってくれるという奇特な女性が現れたのだ。

この旅を決めたときに、
日本各地の自然や土地、水環境に関心がある人たちのつながりを得て、
南部地方在住者として、
同世代の親類や友人が現地にいない私の、
様々な相談にのってくださった方だった。

直接お会いするのははじめてだったけど、
一回り年上とは思えない若々しさと美しさと

なにより優しい空気をまとう親しみやすいお人柄で
ずっと前から知り合いのような気持ちになった。
仮にNさんと書く。

九戸村にある道の駅・産直オドデ館で待ち合わせしたとき、
Nさんは朝ごはんに開いたばかりの食堂でラーメンを食べていた。

Nさんの朝ごはんが終わったあと、
私のレンタカーに乗って、
九戸村江刺家(えさしか)の登山口から車道をあがって折爪五滝をめぐり、
展望台でピアニカ吹いて、
また同じ道を降りて帰ってくる計画となった。

折爪岳の車道は、頂上に至るまで広い。
行き違いでどちらかがバックしてよけるとかはしなくていいし、
ガードレールも標準装備だった気がする。
標高自体も852.2メートルということで、
低くもないが、高くもない。
頂上には職員常駐の岩手県立の自然の家があり、人の気配がある。

一人でもいくつもりだったし、
一人で行ってもそう危なくはない山なのだけど、
私自身が、山に慣れてるというほどでもない人間なので、
一人より二人で行けるのは安心感が全然違った。

下から順に、
オドデ様の滝、江刺家大滝、姫待ちの滝、織姫の滝、お清水(おすず)の滝を古来からの人たちがそうしていたように手を合わせ、
山の恵みである綺麗な水を触りながら、
登っていった。
(江刺家大滝だけ車道から山道に徒歩で入って行った先にあり、滝は人が触れる位置になかった)

地域の人たちの山への想いがわかる看板。


苔むした岩肌をを水の縦糸で織るような滝


滝を囲む草が個性的で綺麗。

どこの水もきれいだったが、
やはり山の上にいくにつれて、
水がきれいになる気がする。

そして折爪岳の滝は概ね、
女性らしい名前や佇まいを見せていた。

「名前の通り織姫っぽい滝ですね。」などと

それぞれの初めましての滝を前に、
感想を言い合える人がいるのは
とても幸いなことだった。

この山を私の母は登ったこともない。

ただ、この山のふもとで、祖母は独身時代に小学校の臨時教員をしていた。
もしかしたら祖母は、
この滝を学校の遠足などの行事でめぐったことがあるかもしれない。


折爪岳自体は約2億5000万年から1億年ほど前から存在してるそうで、
付近から縄文時代の遺跡も出ている。
今より温暖だったらしい縄文時代の東北地方。
清い水があちこちからこんこんと湧き、森の恵みをうけて生き物たちが豊かにくらす山のそばは、
人々にとって最上の土地だったに違いない。

この土地に住む人間の、
蝦夷や、滅ぼされた九戸氏、
気の遠くなるような歴史を、

そして伝説の「弘法大師」や、
唯人の私のような遠方からの客人(まれびと)の訪れを、見てきたに違いなかった。

12につづく

(下↓引用させていただきました。折爪五滝の詳細はこちらをご覧ください)








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