クワをふるう
備中鍬(びっちゅうぐわ)という農具があります。
刃先が三つまた以上にわかれている鍬(くわ)です。
固くなった土を砕きます。
私のような腕力ない人でも振り子の力で上から下に落とせば簡単に地面に刺さります。
今回は畑の通路幅を変更するために、
一度畑の約半分、既存の畝(うね)も通路も耕転(こうてん)します。
耕転することを、たたく、ともいいます。
農園では共同のガソリン式ミニ耕運機があり、ベテランの先輩方はそれを使っているのですが、
私はちまちまと狭い範囲を耕すことが多いので、同じく農園が共同で管理している農具の備中鍬を使います。
いつか耕運機も使えるようになりたいとは思いますが、
耕運機より先に覚えたいこともたくさんあり、後回しになっています。
(ミニ耕運機も私にはまあまあ重い、という理由もあります)
日本列島で農耕が始まったのは弥生時代と言われていますが、
そのころ鍬などの農具の刃先は木製だったそうです。
古墳時代と呼ばれる頃から、鉄製農具が使われ始めたそうです。
木製から鉄製へ、すごい進化ですよね。
農業の生産性もぐっとあがったと思います。
それの裏面として、武器にも鉄が使われはじめて、資源や技術をめぐる争いもあったことでしょう。
(古墳時代の有名な鉄製品の出土品として埼玉県の稲荷山古墳から出土した国宝「金錯銘鉄剣(きんさくめいてっけん)」があります。鉄が権力の象徴なのがわかります)
現代でいう石油利権やIT技術のようなイメージでしょうか。
当時、鉄を制する者は強大な権力を掌握したのでしょう。
かつて鉄が産出されたかは知りませんが、
私の父の兵庫県のふるさとの辺りは、
刃物生産が特に盛んなような印象があります。
私も高知の家の近所のホームセンターで買い求めた
草刈用の小さい縄切がまは
その兵庫県産のものです。
気に入ってつかっています。
私は大きい農耕車が大好きですが、
合理的に設計された、自分の身体ひとつで扱える小さい農具も
大好きです。
手で使う農具には
長い間、自然と対峙してきた
先人たちの知恵が凝縮されているように感じられます。
先人たちの知恵を、体でつかみたいと願いながら、ぎこちなくもクワをふるう40歳でした。