ワインと音楽のペアリング法則
ワイン好きにとって、「ワインと料理のペアリング」はとても重要である。それに纏わる様々な本やセミナーなども存在し、最近ではよりロジカルに解説されたものも多く、それはそれは興味深い。
私も日々の食事の中で、できる限りそれらを取り入れながらワインと料理のペアリングを楽しむ一人である。
そんな私が、ライフワークとしている「音楽」と「ワイン」。実はこれらも、ワインと食事同様、とても相性の良いものなのだ。
実際、今まで出会ったワイン好きの方々の中には音楽も好きな方は多く、逆に音楽を通して出会った方が、ワインやお酒が好きで話が盛り上がった経験が何度もある。
私はシンガーとしての活動を続けながら、ワインのインポーターに勤めるうちに、いつかワインラバーの方々が、ワインと料理のペアリングを楽しむのと同じ様に、ワインと音楽のペアリングを楽しむ日常がやってくるのではないかと思った。そして、ミュージシャンであり、ソムリエでもある私にとって、それを推奨していくことが”使命”のように感じ始めたのであった…。
それから私は、「ワインと音楽のペアリング」を様々な角度から試してみた。何度も試していくうちに、ワインと音楽の相性も、ワインと料理の相性と同じ様に、”法則”のようなものが見えてきた。
私はその法則をある程度まとめた上で、そのひとつひとつにフォーカスしたコラムを執筆し、それらは私が勤めるインポーターのWEBサイトに掲載されている。
ここではその、私が見出した「ワインと音楽の法則」をまとめて記すことにする。
【ペアリングポイント】
●ストーリーを合わせる
生産者やワインのストーリーとアーティストや音楽のストーリーを合わせる
●産地を合わせる
ワインの産地とアーティストや音楽の産地を合わせる
●品種であわせる
品種の特徴と音楽の特徴を合わせる
●重さを合わせる
ワインの味わいと音楽の調·テンポを合わせる
●エチケットや名前で合わせる
ワインのエチケットや名前と音楽のタイトルなどを合わせる
これらは、いずれかのポイントを合わせればOK!また、合わせ技もOK!
①ストーリーを合わせる
生産者やワインのストーリーとアーティストや音楽のストーリーを合わせる
例)
・伝統を重んじる造り手のワインと伝統的な音楽を追求するミュージシャン
・注目度の高い若手の造り手と新進気鋭のミュージシャン
・兄弟で営むワイナリーと兄弟バンド
・同じような信念を持つ醸造家とミュージシャン
etc…
特徴
★下調べが必要なので直感的なペアリングは不可
★日常シーンでの採用は難易度が高いが、ギフトや持ちよりパーティーなどのシチュエーションには適用可能
参照コラム
アンプラグドなワインとリアン・ラ・ハヴァス~ワインと音楽~
②産地を合わせる
ワインの産地とアーティストや音楽の産地を合わせる
例)
・スペインワインとフラメンコ音楽
・ポルトガルワインとファド
・カリフォルニアワインとウェストコースト·ジャズ
・デントン·ヴュー·ヒル·ヴィンヤードとハイエイタス·カイヨーテ(コラムをご参照下さい)
etc…
特徴
★初心者にも合わせやすい
参照コラム
テロワールが聞こえるハイエイタス・カイヨーテのNAKAMARRA~ワインと音楽~
③品種で合わせる
品種の特徴と音楽の特徴を合わせる
例)
・香りが甘く華やか、優しい味わいのゲヴュルツトラミネールとビッグバンドジャズ
・バランスが良くみんなに好かれるポピュラー品種、シャルドネとマイケル·ジャクソンやマドンナのようなポップミュージック
・エレガントなピノ·ノワールとオーケストラ
・糖度が高めで果実味が豊富、酸味が穏やかでしっかりとしたボディが魅力的なジンファンデルとホセ·ジェームズ。(コラムをご参照下さい)
etc…
特徴
★品種の特徴を知っている必要があるのでワインの知識がある程度必要
参照コラム
赤の重めをホセ・ジェイムズの歌声と共に~ワインと音楽~
④重さを合わせる
ワインの味わいと音楽の調·テンポを合わせる
特徴
★短調·長調の理解が必要だが感覚的にでもそれがわかれば上記のチャートを用いてペアリング可能
参照コラム
グレッチェン・パーラトのロゼな世界~ワインと音楽~
⑤エチケットや名前で合わせる
例)
・月が描かれた「セレニータ·ニット」と「Fly Me To The Moon」
・「Love You」と「Lovin’You」
・カサ·ベナサルと「Butterfly」
etc…
特徴
★初心者でも合わせやすい
★造り手の想いや意図が表現されているであろうエチケットやワイン名と、曲のテーマが現れる曲名のペアリングは合う
参照コラム
蝶のように飛び立つ一年を。クレオ・ソルの『Butterfly』 とカサ・ベナサル~ワインと音楽~
【ペアリングの考え方】
●同調
「同じ」を合わせる一番合わせやすい方法
●中和
逆のものを合わせることでバランスを取る方法
●補完
足りないものを補うことで成り立つ方法
<同調のペアリング>
遅い・低い+重い
速い・高い+軽い
例)
・スローバラードと重めの赤
・テンポの速いエレクトロニカと弾ける泡
・ミドルテンポのボサノヴァとロゼワイン
etc…
参照コラム
FKJの『VINCENT』と『ヴーヴ・デュ・ヴェルネ』でChillなひとときを~ワインと音楽~
<中和のペアリング>
遅い・低い⇔軽い
速い・高い⇔重い
例)
・低温響くゆっくりめのHip Hopと微発泡·発泡ワイン
・速めのバイオリン協奏曲に落ち着いた赤ワイン
etc…
参照コラム
2022年を振り返る。『BLACK RADIO III』と『サンテロ ブラック ブリュット』 ~音楽×ワイン~
<補完のペアリング>
音楽をプラスすることで美味しくなる
例)
・ミネラルを感じる海の近くで造られたワインにサーフミュージック
・スパイス香を感じる赤ワインにエイミー·ワインハウスのようなハスキーで力強いボーカル
・気軽に飲めるスパークリングワインに明るいポップスソング
etc…
参照コラム
ジャック・ジョンソンとワイン持って海へ。五感を満たすペアリング。~ワインと音楽~
以上が私がまとめた「ワインと音楽のペアリング法則」である。
この、「ワインと音楽のペアリング」には、”正解”があるわけではない。
ワインと音楽が好きな方々が、自分の”感覚”や”想い”で好きな様に楽しむのが一番だと思う。
しかし、「合う!」「ピッタリ!」と感じるものには、何かしら理由があるのではないだろうか…。
私はその”理由”と考えられるものをまとめ”法則”としている。
私たちの生活を豊かにしてくれる「ワイン」と「音楽」。それらのペアリングによって、心地の良い空間や安らげる時間を生み出せることができたら、とても素敵だと思うのだ…。