テスト:第十八話
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藤野君・・・・
藤野君・・・・
私は藤野君を求めてゆらゆらと歩いた。一年生の教室までの道のり、窓から見える木々のざわめきに耳を澄ませたかった。私は三つ飛ばしに廊下の窓を開けて、足を弾ませていった。
コンコンコン。
「失礼します。藤野君いますか」
私は教壇に立つ先生とクラスメイト全員に聞こえる声でそう言った。先生は驚きと少し困った顔を見せ、私に尋ねた。
「どうしたんだ?今は授業中のはずだが・・・藤野に何の用だ?」
「大事な話があります」
「それは・・・授業後でもいいんじゃないか?」
「いえ、今が丁度良い時期なんです」
私の言葉は理解されていないのか、先生は口を半開きにして眉を顰めた。
「・・・・何を言っているんだ?君は・・・」
先生は暫くしてからハッとした顔をした。
「君は確か・・・言切結衣」
この教室も、私のクラスと同じ淀みが発生していた。
この教室から、藤野君を連れださなくてはならない。
この教室から、藤野君を連れださなくてはならない。
この教室から、藤野君を連れださなくてはならない。
この教室から、藤野君を連れださなくてはならない。
この教室から、藤野君を連れださなくてはならない。
藤野君が、私のベストフレンドになるかもしれない男が、この淀みに汚されてしまう。
だめだ。早く何とかしないと。
藤野君は、手を上に掲げ、一言放った。
「先生、結衣は体調が優れていない様なので・・・俺が保健室まで連れていきます」
藤野君の声がクラス中の淀みを薄めた。
藤野君は私の元へ歩みを進めた。
傍にきて、低い声で言った。
「大丈夫だから」
今夜嫌いになる男が、私を安堵させようとしていた。
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