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26『ジム史上最弱女がトップボディビルダー木澤大祐に挑んでみた』
#26 復帰
パーソナルの期間が空いた。ふてくされて休んでいたからだ。理由として、なぜわたしがブログを更新していないのか木澤さんに尋ねた人に、本人が答えた原文を載せる。びっくりしないでほしい。
「いや、イラッとしすぎて『顔見るだけでイラッとする』(※)って言ったらなんか1ヶ月休んだ」
(※本当の原文「あなたを見てるとなんかめちゃくちゃ言いたくなるんですよ。何がこんなにイラつくのかわかんない。でもなんかイラつくの。あなたみたいな人間見たことなくて対応がわかんないの。だからもうとりあえず罵倒しようと思って。イラっとくるのは態度とか言葉じゃなくて存在!存在だから直しようがないですよ!」)
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そのくだりを聞いた第三者は、「言う方もおかしいし、それでも来る方もおかしい」というジャッジをしていた。仰るとおりだ。「あと、“辞める”じゃなくて“じゃあ1ヶ月休む”の意味もわからない。休止期間意味ある?」とも言われた。仰るとおりだ。
実際、辞めるか続けるか迷っていた。そこまで嫌なら行くことで迷惑をかけたくなかったからだ。しかし、休んでからというもの「あの人、挫折しましたよ」「お花やさん脱落ですよ、脱落組」と触れ回られた上、ずっとチクチク「あなたはもうやらないんですね」「僕のパーソナルはもう諦めたんですよね」と言ってくるので、これは「イラつくから来てほしくない」というわけではなく、「俺は変わらずめちゃくちゃ言うけどちゃんと来いや」というオラオラ営業の亜種なんだなと思って再開した。オラ営は嫌いじゃない。あと、単純にこの程度で逃げたと思われるのは癪に障る。
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多分解釈は合ってる
そして、単に休んでいたわけではない。自己鍛錬のレベルを上げることで無用な怒られ率を低くしようと思って助走期間を設けていたのだ。
週4でジムに通い、毎日1時間歩き、食事管理もアプリでやってるため痩せてきた。ほんの僅かな余力も見逃さない発注先からの、賽の河原に等しい業務量の合間を縫って次のパーソナルのために力を蓄えてきたのだ。今回は、その成果を見せていきたい。
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ナフコで拾ったピクミン
減量期にお好み焼きを食べていそうな顔だ
……………………
①バーベルスクワット(バー)……評価△。
全然だめではないが、重すぎるとのこと。挙げられていると思っていたのは、かかとを浮かせて負荷を逃がしているからだと判明した。「20kgを支える体幹はまだない。でも10kgならやってもいい」ということだった。前は論外で禁止されていたのでやや進歩だ。秘密裏にチャレンジしていた甲斐があった。
②レッグプレス……評価⚪︎
なんと一番難敵だった種目で「特につっこみどころはない」との評価を得た。この光景を見ていた人が「想像していたより木澤さんが優しい」と評するほど穏やかに終わった。木澤さんは「いや、疲れてて言うのめんどいだけだから」と憮然と返していたが、疲れていようがいまいがダメなときは瞬間発火するのを知っている。褒めるほどではないが、普通にはできていたということだ。やった。
③スミススクワット(ナロー)……評価⚪︎
これも良かった。重量の軽さはともかく、動きとしては問題ないとのこと。最後に戻しきれず潰れるか逃げるところだけは要改善。ようやくケツ押し付けマンからスミススクワットをしている人への昇格を果たした。
いい感じすぎて、このあたりで「ブログ書くことないでしょ」と言われ始めた。甘い。
④ラットプルダウン……評価「ちゃんとやれコラ貴様」
耳を疑った。『貴様』なんて言葉を常用するのは、三島由紀夫か古のオタクだけだ。「よく今までこんな筋力で生きてこられましたね。力がないどころじゃない、弱すぎて話にならない」。罵倒エンジンがかかってきた。小声でずっと「オイオイオイちゃんと胸まで引けよ何やってんだ」とか聞こえてた。
あと、忘年会でもらったパワーグリップが少し緩いような気がしていたので大丈夫か見てもらったら、やはり私には大きすぎたようだ。確認しただけなのに、「タダで貰ったんだから文句言うんじゃねえ」と凄まれた。理不尽すぎてメルカリに出品してやろうかと思った。
⑤チェストプレス……評価「なにやってんだお前なんでこれが押せないんだよそういうとこがイライラすんだよまじで」
出た。イラつき発言。最低の重さすらまともにプレスすることができないため、木澤さんが引き上げて落ちてくるのをネガティブで耐える動作をする。何度「ゆっくりおろせ、片方だけおろすな」と言われてもできない。木澤さんが言葉荒く凄むときは大抵リミッターを外させるための脅しだ。しかし、できないものは何を言われてもできない。ちなみに、その辺を察してガチ怒られ時と対応を変えていること自体もイラっとくるらしい。
以上。ひさびさのパーソナルは本当にきつかった。最後のほうは、ペットボトルを持ち上げるとブルブル震えて水がこぼれた。
総評として、「まあ下半身はだいぶ良いです。有酸素の時間なくして上半身もっとやりこんで」と、ほぼ居なくなりながら残していった。今回はやはり怒られたは怒られたが、実りのある怒られ方だった。頑張れば進歩はある。これからもジム通いをいかなる状況でも続けていきたい。
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ひさしぶりにブログを書けて楽しかった。また喧嘩しなければ月1程度で更新します。引き続きよろしくお願いいたします。
#36につづく
◼︎◼︎◼︎おまけ◼︎◼︎◼︎
ジュラシックアカデミーの愉快な仲間VOl.1
この日、一番の叫び声は私ではなかった。
やわなガラスなら一撃で破砕する雄叫びとともにハックスクワットを上げ下げするのは、『ジュラシックカップ』レジェンドウォーズ木澤大祐推薦枠で出場した荘田巧登(しょうだ・たくと)選手だ。
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ジュラシックアカデミーでは声出しは禁止されていない。そのため、YouTubeでもしばしば恐ろしい唸り声や悲鳴がBGMとして流れているのが確認できると思う。ただ、彼は格が違う。彼が叫んだあとは音が聴こえなくなるほどうるさい。もしかして、全部のジムを出禁になったから自分のジムを作ったのだろうか。
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しかし、ここでは許される。何故なら誰も気にしないからだ。『耳栓』スキルを4まで上げていなければ怯んでしまう咆哮のなか、全員が各自の鍛錬に没頭している。ときおり「いい声だよ」「ナイス声」という野次のような応援が飛ぶだけだ。
しかも、行動もうるさい。途中で腹筋が攣ったらしく突然ハックから前転しながらくずれ落ち、密集したマシンに頭を強打した。しかし、やはり誰も駆け寄るどころか何も言わない。都会の群衆以上の無関心に私は心底引いたが、「いつものこと」で済まされた。こんないつもがあってたまるか。
荘田さんの動向だけで5台は救急車が来てもおかしくないが、実はジュラシックアカデミーに救急車が来たのは設立以来一度だけである。ある人が落ちてきたマシンのアームで頭を切ったときだ。
「それ以外は(救急車の)お世話になったことがない。これが、うちがいかに安全に追い込めてるかの証拠だよね」
唯一、運ばれた人間でありジムオーナーである木澤さんがそう自慢げに言っていたが、単に普通だったら呼ばれるレベルが日常茶飯事として黙殺されているだけの気がしなくもない。だが、実際「やれないことはやらせない。やれる範囲の最大限を引き上げる」を徹底しているのは、自身の体験でも実感している。
一人あげただけでわかるように、ジュラシックアカデミーは個性がそのまま人間の形をして生きているような人ばかりだ。ジムに行ったことがなく馴染めるか心配、という人にこそおすすめだ。誰も自分の筋肉以外に関心がない。社会生活が営めているのか不安になるレベルでトレーニングに生を捧げている人ばかりだ。
迷っている人は、ジュラシックアカデミー公式ラインにそっとパーソナル予約希望を入れてみてほしい。全部自動返信かと思ってたらどうやら手動で木澤さんが返しているメッセージがくる。たまに文章が変なのも味だ。一緒に地獄を味わおうや。
おわり