テレパシーで会話ができた不思議な子
美容専門学校を卒業して、渋谷にあった憧れの美容室の面接に落ち、途方に暮れて2ヶ月プー太郎をやっていた。
同じように、プー太郎仲間がいたから毎日のように遊んでいたが、突然その友達の就職先が決まり、焦って私も就職先を探した。
そこで決まったのが家族経営で美容室を3店舗構えている美容室。
私が配属されたのは社長の奥さんが店長でもう1人スタイリストがいて、私含めアシスタントは3人。
そんなこじんまりとした美容室。
制服はないけど、基本黒い服を着るのが決まりだった。
「普通」とか「当たり前」とかに対してとっても違和感のあった私は、ワンポイントで柄ものを入れて、どこまで許されるか様子を見ながら許されるギリギリを探しながらオシャレを楽しんでいた。
そんなチャレンジャーな私を店長は気に入ってくれて、仕事中のファッションはだいぶ自由度が効くようになっていった。
そんな職場で出会った同い年の子。
2ヶ月プー太郎をやっていた私から見れば2ヶ月先輩。
とても不思議な女の子だった。
プライベートな事はほとんど話さない。
いつもニコニコしていて可愛いらしい子。
だけど、どこか寂しげ。
心の奥に何か抱えているものがあるのだけは伝わってきた。
だから、私もあえて突っ込むこともしなかったけど。
何を考えているのかはわからない。
今にも消えてしまいそうな、そんな感じの子だった。
だけど、仕事中は言葉を交わすことなく、ほぼアイコンタクトのみでお店を回していた。
もう一人いた3つ上の男性のアシスタントは正直あてにならなかった。
自分がやりたくない仕事はすーっと避けてその場からいなくなる。
またか…とか思いながら
年齢的には年上だから敬語で話してたけど、色んな検定がある中、絶対抜かしてタメ語で話しやる!って思って必死に練習していた。
結果的にその3個上の男性アシスタントを抜かして先にスタイリストになることができてタメ語で話してやる!っていう目標は達成できたんだけど。
話しがズレたので戻します。笑
逃げる頼りない男はほっといて、同い年の子とは不思議なくらい言葉を交わさなくてもお互いがお互いの仕事を振り分けてしっかりお店を回せていた。
店長からも
「あんた達何も話さないで気持ち悪い…」
なんて突っ込まれながら、とことん会話をせずお店を回すことを楽しんでいた。
たぶん普通に出会っていたら友達になっていたかもわからないくらい、性格も私とはかけ離れた子。
全く読めない子だったけど、その可愛らしい容姿の中にもミステリアスな雰囲気のある不思議な子にとても惹かれるものがあった。
心の中でだけ繋がる事ができた子。
結果的に私は妊娠を機にそのお店を辞めてしまったので、その後どうしているのかはわからない。
元々プライベートで連絡を取る事もなかったから。
消えてしまいそうな雰囲気を持ったあの子は今どうしているんだろう…って思い出す。
今まで出会った人の中であそこまで言葉を交わさず心の中だけで通じ会えた子はいなかったから。
もうお互い40過ぎて、どうしてるかな?
幸せに過ごしていることを願っている。