自由なんて不自由だ- MBA組織行動論
オハイオ州立大学MBAのOrganizational Behavior(組織行動論)のクラスでのひとこま。
チームは、結成された目的によって求められる要素が異なる。
■戦術実行チーム(心臓手術のチーム、軍隊、スポーツチーム等)
明確なプランが必要。
■問題解決チーム(疾病予防管理センター、国立研究所、核兵器チーム等)
信頼関係を築くことが重要。
■クリエイティブチーム(Google、Apple等の新技術等を生みだすチーム)
メンバーの自発性を促進することが重要。
チームのタイプに関わらず、クリエイティビティ(創造性)が求められるときはある。そんなときブレインストーミング(”ブレスト”)が頻繁に行われる。
以下は講義内で出題されたミニクイズ。
答えは「1番以外全部うそ」。1番に関しても、個人が出した最良のアイデアをチームとして潰さないように注意する必要がある。
ほぼ全ての研究で、「一人で考えるほうがブレストより多くのアイデアや創造性を生み出す」と結論付けられ、ブレストの有効性は裏付けられていないようだ。アイデアの数、柔軟性やオリジナリティ等どの点を取っても個人で考えるほうが効果が出ている。
もともとブレインストーミングを開発した研究者は4つの基本ルールを提示している。
■量:量は質に繋がるためより多くのアイデアを出すべき
■構築:関連するアイデアは繋げて考える
■表現:自己検閲なしで自由にアイデアを共有する
■批判しない:アイデアを判断しない。つまり責任や実現可能性を問い詰めない。
実際のブレストの場で問題になる可能性があるのは、「表現」と「批判」。
「表現」という点では、いくら自由といえども顔がわれているので、結局はより地位の高いメンバーを喜ばせるような、つまり彼らに有利になるようなディスカッションになりやすい。また、「批判」をなんでもかんでも禁止すると、「意見の相違」がもたらす創造的な緊張感が生まれなくなる。良質な批判はアイデアを昇華させるものだ。
さらに、ブレストは個々人のインプットが特定されないので手を抜きがち。そして、グループだと話す順番を待つので、各自の頭の中にあるアイデアの連鎖が途切れてしまい生産性が低下する。
多くの場合、ブレストはコントロール不十分でルールも少なく構造化されていない環境になりがち。社会的地位の高い、声の大きい人の意見がとおり、より多くのことを知っているかもしれない現場の小さな声を聞く機会を逸してしまうことになる。
クリエイティビティを最大限に引き出すには、まず個人でブレストしてもらい、各自からアイデアを集め、それらの関連性を見つけてマッピングする。
エレクトロニックブレインストーミングといって、個人のアイデアをコンピュータが匿名で集計するツールもあるようだ。
無制限に「自由に考える」のは難しいと思う。逆説的だけど、範囲やルールが設定されているほうがアイデアが浮かびやすい。
課題やお題の範囲を特定して、一人ひとりが持ち場で真剣に考える。そして、各自が真剣に考えたアイデアを互いに尊重する環境があると、クリエイティビティが広がるのだと思う。
残念ながら色んなところで逆のパターンをよく見る。
「ブレストは効果があるのだろうか?」と常々思っていた。
やり方次第だということだった。
教わったことは腑に落ちるし、良いことを聞いた。