膝の痛みを「変形だから仕方ない」と諦めたくないセラピストへ
「変形しているから痛みは仕方ない」と勘違いしていませんか?
今回は変形性膝関節症について、トリガーポイントの視点を踏まえたアプローチの提案をしていきたいと思います。
変形性膝関節症は、セラピストであれば遭遇する確率の高い疾患です。
特に高齢者のリハビリを担当している人は、診断名がついていなくても膝の痛みがあり、O脚やX脚になっている人は担当することも多いと思います。
膝の痛みでよく言われるのは
「変形しているから、手術しないとこの痛みは取れませんね」
という言葉。
でもそれって本当ですか?
僕の臨床経験上の話ですが、膝の痛みがあり、手術をされた方の痛みは確かによくなっていることも経験しますが、
「手術をしたのに痛みが変わらない」というかたもいることが事実です。
このことからわかることは
「膝の痛みは骨の変形で決まるものではない」ということです。
実際に痛みとは、複雑な過程を経て、脳からアウトプットされるものなので、その原因が骨の変形意外にあったとしても、不思議なことはありません。
痛みの原因が様々あるのであれば、様々な可能性を考えてアプローチするのがセラピストの仕事です。
今回は膝の痛みについて、
トリガーポイントの視点から解説していきたいと思います。
トリガーポイントからみた膝が痛む理由
トリガーポイント的には、主に膝の痛みを引き起こす筋肉は大腿部の筋肉であることが多いです。
主に
・大腿四頭筋
・内転筋群
・縫工筋
などは膝の前面の疼痛を引き起こし、
・ハムストリングス
・膝窩筋、足底筋
などが膝の後面の疼痛を引き起こすと言われています。
これらの筋肉の過剰使用、過剰なストレッチなどが起こるとトリガーポイントが活性化され、関連痛を引き起こします。
大腿部の前面の筋は膝が屈曲位になっていると、通常よりも筋で姿勢を保持することが多くなるため、
膝関節に変形があり、伸展が制限されているような場合は、大腿前面の筋の過剰使用から膝の痛みを引き起こしやすくなります。
つまりトリガーポイントから考えると、膝の変形は痛みの原因ではなく、
痛みの増強因子(=トリガーポイントの活性化要因)と考えています。
膝が明らかに変形しているのに、膝の痛みを訴えない人がいると思いますが、
トリガーポイントで考えるとこのことも説明が容易にできますね。
ブレーキ筋としての大腿四頭筋
経験上、膝の痛みには大腿四頭筋のトリガーポイントが関係しているケースが多いので、大腿四頭筋に関しては、もう少し掘り下げて解説していきます。
大腿四頭筋は歩行時には基本的に駆動力として機能していません。
また階段昇降の際にも降段時に遠心性収縮をしてブレーキをかけていることが多いです。ゆえに大腿四頭筋はブレーキ筋と言われています。
変形性膝関節症の方で多いのが、立位や動作時の膝関節の伸展を大腿四頭筋優位で行なってしまっていることです。
膝関節単体の動きだけで考えれば、大腿四頭筋が主動作筋であることは間違いありません。
しかし立位など抗重力位での動作になると、膝関節の伸展運動には股関節の運動が絶対必要になります。
大腿四頭筋を立位でも優位に使用してしまうと、股関節の伸展が抑制され、屈曲位になります。そのため歩行時などに股関節が伸展できず歩幅が狭くなり、立脚期の短縮につながります。
それ以外にも、股関節の不安定性がある場合では、膝関節で安定性を補償してまいやすく、大腿四頭筋とハムストリングスの同時収縮などが起こりやすくなり、過剰使用してしまう場合があります。
この場合、立脚初期で膝関節が屈曲できないことで術側に荷重が乗りにくくなります。
また立脚後期〜遊脚期に膝関節が屈曲することができず、トゥクリアランスが低下したり、それを代償して腰背部の過剰収縮がみられる場合があります。
そのため、大腿四頭筋の過剰使用を抑制し、ハムストリングスや大臀筋などの股関節の伸筋をしっかり使っていけるように運動療法も併用して行なっていくことが重要であると思います。
膝の痛みに対するトリガーポイントの紹介
最後に大腿四頭筋のトリガーポイントのリリースの方法を紹介します。
セルフケアとして使える内容になっているので、「自分も膝が痛い」なんて人は試しにやってみてください。
今回はストレッチポールを使用します。手元にない場合は、テニスボールやその他のマッサージグッズなどで代用できます。
姿勢はうつ伏せで、大体前面をポールの上に乗せます。
その状態で前後に動いて筋肉を圧迫していきます。
トリガーポイントのリリースの目安は10段階の痛みスケールで7程度と言われています。書籍では「痛気持ちいい」レベルとされているので、強く行うよりも
その時の「気持ちよさ」「柔らかくなっている感じ」を意識しながらやることがコツです。
大腿四頭筋は大きい筋肉なので、細かく行うと時間がかかってしまいますが、このように広い面積のあるストレッチポールなどがあれば、比較的簡単に行うことができます。
トリガーポイントの好発部位は、
・大腿直筋は上前腸骨棘上から4横指下
・外側広筋は膝蓋骨上縁から3横指外側
・内側広筋は膝蓋骨上縁から3横指内側
・中間広筋は上前腸骨棘上から8横指下
になっているので、上記の場所を中心にリリースしていきましょう。
最後に
今回は変形性膝関節症に関して、
トリガーポイントの知識を利用しながら普段臨床で行なっている内容を本当にざっくりですが紹介しました。
トリガーポイントはただ筋硬結をリリースするだけの手技ではなく、
関節のアライメントを修正したり、運動指導の際に過剰使用している筋を予測したりと応用の幅が広いため様々な使い方ができるかなと思います。
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