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【脚本】がんばれ荘 3章 すれちがい荘
3章
すれ違い荘
舞台上には
大田、近藤、西川、中谷、鶴岡
大田と中谷はタブレットで動画を見ている
明転
西川 「また、値上げ、困るなー」
近藤 「また!?」
鶴岡 「仕方ないよね」
西川 「はぁ…ため息しか出ないよね」
鶴岡 「まぁ、なんとかなるさ」
近藤 「なんとかなるんですかね…」
西川 「確かにね」
近藤 「翔平とかはこんなの興味すらないよな」
中谷 「…」
近藤 「翔平!?」
近藤 「翔平!」
動画に夢中になって気づかない中谷
近藤 「翔平!」
中谷 「あ、はい。」
近藤 「何してんの?」
中谷 「あ、今、大ちゃんと動画みてて」
西川 「知ってるよ、そんなの見ればわかるよ」
近藤 「自分たちの部屋でやりなよ」
大田 「す、すすみません。誘ったのは僕なんで、翔平くんは悪くないで」
近藤 「あ…いやいや大田くんはいいですよ」
西川 「翔平さ、大田くんのこと舎弟にしようとしてるでしょ」
大田 「いや、違います」
中谷 「いや、違う そんなことはなくて」
近藤 「いや、今まで下っ端が翔平しかいなかったからな、それで」
中谷 「いや違くて」
大田 「そ、そうそうです!!実は僕たちアニメ『虹色しろちゃん』の大ファンで、そこで意気投合したんですよ」
西川 「なんかそれ聞いたことあるようなあああなんか一時期話題になったアニメだよね?」
鶴岡 「私も二人にそんな趣味があるとは知らなかったよ。大田くんは
しろちゃん以外に何か興味ないのかな?」
大田 「あ、ちょっと言いにくいんですけど」
近藤 「どうしたの?」
中谷 「なんか、そんな隠し事あるのか?」
大田 「みなさん怒るかもしれなくて」
中谷 「怒る!?」
近藤 「いいよいいよ」
大田 「いや、実は 福岡ソフトバンクホークスのファンでして」
近藤 西川 「…」
近藤と西川 驚く
中谷 「え、え、どうしたの?」
西川 「応援してるチームが敵テームなの!」
大田 「なので、あんまり言いだせなくて」
近藤 「あれ、確か、大田くんが入居した日さ、ファイターズホークスさ勝ったよね?」
西川 「うん」
大田 「はい。なので、ここで言ったら喧嘩になるかと思いまして、黙ってい
た方がいいかと」
近藤と西川土下座する
近藤・西川 「本当に申し訳ありませんでした。」
中谷 「本当だよ!謝罪って言うのはね、もっと深く頭を下げてね…」
近藤 「翔平じゃねーよ」
大田 「いやいや、負けたチームが悪いので」
西川 「静かに見ますね」
鶴岡 「まぁ、確かにあれはね。まぁ喧嘩はしないでね」
大田 「ちなみに、好きな選手は?」
近藤 「鶴岡選手かな」
大田 「え、いやそれはうちのホークスから来た〜」
大田、近藤、西川 野球の話しで盛り上がる
その間に中谷に何か伝えて下手へ去る
中谷 「喧嘩やめて やめてからの~あえてー僕が喧嘩に入る〜」
近藤 「君は黙ってて」
大田 「すみません。興奮してしまい」
中谷 「もう、わけわからナイチンゲールだよ」
近藤 「君が一番訳わからないよ」
大田 「まぁ野球は素晴らしいですね」
近藤 「今、強引にまとめたね」
大田 「あ、そうだ、僕今日はハローワーク行ってきます」
西川 「あれ、今仕事探してるの?」
大田 「そうですね」
西川 「そしたら、近ちゃんが紹介してくれるよ」
近藤 「勝手なこと言うなって」
大田 「本当ですか!」
近藤 「今バイトしてる近所のスーパーで品出しと裏の鮮魚コーナーでバイト
してるんだけど、バイトが今足りなくて
もしかしたら、そこだったらバイトだけどどうかな?」
大田 「勿論です!」
西川 「この人(近藤)バイトリーダーで間もなく社員昇格だから、この人に
ついていけば間違い無いよ」
大田 「ありがとうございます」
中谷 「あの、僕は」
近藤 「あんたはガソリンスタンドと芸人の二刀流なんでしょ」
中谷 「あ、忘れてた、記憶をアップデートしました。」
近藤 「よく、バイト先、クビにならないね」
中谷 「まぁ、それなりに」
西川 「そしたら、私は仕事なんで」
近藤 「私も、そしたら見学しにくる?」
大田 「お願いします」
西川 「あれ、翔平は?」
中谷 「今日さ、夜勤なんだよね」
近藤 「寝なよ」
西川 「あれ、鶴さんは?」
中谷 「あ、なんか用事があるから、木更津に行ったって、今日には帰ると」
西川 「なぜ、木更津?」
中谷 「木更津に行くと特殊能力が発動し、その後〜」
大田、近藤、西川 下手へ去る
中谷 「あれ、僕の特殊能力で3人をワープさせてしまったかもしれないな
あ、そうそう夜勤だ、寝るかぁ」
ソファで寝る中谷
チャイムがなる
中谷一度、無視する
また、チャイムが鳴る
中谷もう一度無視をする
また、チャイムがなる
中谷 「お呼びになったチャイムは現在使われておりません。恐れいりますが、
タウンワークでもう一度お調べください。」
中谷、ソファで寝ようとする
下手から、吉井の声がする
吉井 「開けてくださいーお話しだけでも!」
また、チャイムがなる
中谷下手に向かいドアを開ける
下手から吉井が登場する
吉井 「なんで、開けてくれないんですか!」
中谷 「ってか誰ですか?」
吉井 「私はケッペルハウスの吉井と申します。」
中谷、部屋の整理をしており全く聞いてない
吉井 「あの、聞いてます?」
中谷 「あ、すみません。あの何かの吉井さんですよね?」
吉井 「そうです」
中谷 「あの、今日はここで僕とお茶しに来たんですか?」
吉井 「いや、お茶というか…」
中谷の携帯から着信音が鳴る
中谷 「あ、ちょっといいですか」
中谷 上手へ去る
吉井 「よし、ついに来たぞこの日が絶対にここの土地を買うぞ
よし、練習するぞ
(紙を取り出す吉井 棒読みで紙を見て夢中になっている)
私、株式会社 ケッペルハウスの吉井と申します。
単刀直入に、この度、ここの土地を譲っていただけないかと思いまして
いや、ここの土地を売っていただきたい
上手から、中谷が登場
中谷 「すみません。お待たせしました~」
吉井 「買わせてください!」
中谷 「え?どういうことですか?」
吉井 「あ、あまあああいやですから、買いたいんですよ」
中谷 「買いたいってこのこと(自分のことを指す)ですか?」
吉井 「はははは、はい!是非買いたいです!」
中谷 「え、失礼ですがどれくらいで買ってくれるんでしょうか?」
吉井 「そそうですね、5億ですか?」
中谷 「ご、ご五億ですか!」
吉井 「それで、よろしければ是非」
中谷 「そんな高くていいのであれば。しかもこんな僕に5億円も…」
吉井 「ありがとうございます」
中谷 「ちなみに、今の事務所にはどう説明すればいいですか?」
吉井 「え、事務所?どういうことですか?」
中谷 「いや、いま一応所属してる会社がありまして」
吉井 「管理されている会社が既にあるんですか?」
中谷 「管理なんて、そんな丁寧な言葉遣いで〜」
吉井 「いやいや、でもそれは重要ですね」
中谷 「あ、でもそれは勿論、高額なお金出してくれるほうにいきますよ」
吉井 「本当にありがとうございます。」
中谷 「いやいや、そこまでしなくても」
吉井 「あと、これつまらないものなんですが」
吉井、中谷に持参した菓子折りを手渡す
中谷 「いや、本当につまらないですね」
吉井 「え、いや、あ、なんかすみません。」
中谷 「いやいや、冗談。マイケルジョーダンですよ」
吉井 「あ、よかったですよ」
中谷 「いやいや、こんな短期間なのにここまで褒めてくれる人いないですよ」
吉井 「そんなことないですよ。環境もいいですし、何より広さがありますし」
中谷 「あ、いやもうやっぱり心が広いのもバレてたんですね」
吉井 「はい?」
中谷 「いや、何でもないです」
吉井 「あとは、何よりアクセスがいいことですよね」
中谷 「あ、確かにアクセスはいいですよ!結構Twitterとかインスタグラムで
も評判はいいんすよ」
吉井 「やっぱり、そうですよね」
中谷 「なんか、やっぱ面白いよねってよく言われます」
吉井 「面白い?」
中谷 「あ、何て言えばいいんだろう 魅力がすごいって」
吉井 「あ、なるほど、ツイッターで賞賛されるとはすごいですよね」
中谷 「あと、ちなみにどこがいいんですか?とこが魅力なんです?」
吉井 「魅力ね…」
中谷 「いや、あんまり聞けなくて、五億で買ってくれる人なんてあまりいない
ので」
吉井 「そうなんですか?」
中谷 「いつも、否定的な声ばかりですよ」
吉井 「うーんあとは地盤の良さじゃないですか?」
中谷 「え?どういうことですか?」
吉井 「まぁ地震が来ても、骨組みがしっかりしてるので、強い揺れでも基本的
には大丈夫かと」
中谷 「つまり、真が強くて、どんな逆境にも乗り越えれると」
吉井 「まぁそんな感じですね」
中谷 「ありがとうございます」
吉井 「いや、そんな、僕もあなたが恩人ですよ〜」
下手から、大田、西川、近藤、鶴岡が合流する
大田 「ただいま帰りましたー」
中谷 「あ、おかえり」
近藤 「誰?」
吉井、住人全員に向かって一礼する
吉井 「私、吉井と申します。このたびは本当にありがとうございます。今後と
もよろしくお願いします」
中谷 「この人がさ、僕の事をさ、五億円で買ってくれるんだって」
近藤 「え?」
中谷 「だから、五億円でさ、なんと僕の事を買ってくれたんだよ」
近藤 「翔平。いつものでしょ」
中谷 「本当だよ。そうですよね」
吉井 「そうですね。契約させていただこうかと」
西川 「えっ、何かの間違えなんかじゃないの?」
中谷 「いや、本当だよ。いや〜これから贅沢できるよ。」
近藤 「そんなことあるか?翔平なんかおかしいぞ」
中谷 「そうかな?みんなが気づかなかっただけよ」
近藤 「あのーーーどこの事務所の方ですか?」
吉井 「私はケッペルの吉井と申します」
西川 「ケッペル?そんな事務所ある?」
大田インターネットでケッペル 芸能事務所を調べる
大田 「ないですね。これ新しくできた会社ですか?」
吉井 「いや、そんなことはないかと30年ぐらいは」
近藤 「え?これ詐欺なんじゃないか?」
吉井 「詐欺なんて!!そんなことありません。ケッペルハウスはそんなことしませんよ」
鶴岡 「ケッペルハウス?」
大田 「え?」
近藤 「これもしかして、不動産ですよね?」
吉井 「はい」
近藤 「あれ?ケッペルハウスさんってそういう事業も行ってるんですか?」
吉井 「そういう事とは?」
鶴岡 「あの、芸能のマネジメントとか?」
吉井 「え?うちは芸能のマネジメントなんてやってないですよ」
中谷 「えっ、どういう事?」
吉井 「うちは、不動産業しかやってないですよ」
中谷 「え?」
鶴岡 「もしかして、五億というのは、ここの土地を五億で買いたいって事?」
吉井 「そうですよ」
中谷 「え、全然違う」
吉井 「ですから、私はずっと土地の買収に関してのお話をしているものだと」
中谷 「いや、僕は芸人としての僕を五億円で買ってくれると」
近藤 「そんなの絶対ないわ」
鶴岡 「翔平くんそれはないね」
中谷 「鶴さんまで…」
西川 「当たり前でしょ」
中谷 「嘘でしょ!
僕この後夜勤なんだよ!寝ないといけなかったのに…」
近藤 「とにかく、ここの土地を五億で買いたいんですよね?」
吉井 「そうです。みなさんと次の移住先も我々ケッペルハウスのグループ会社
のアパートをご用意し、生活のサポートもさせていただきます。」
鶴岡 「そうですか。なら、帰ってください。」
吉井 「え?」
鶴岡 「ここの土地を手放すって事は選択肢にすらないです。希望にお応え
出来ず申し訳ありませんが、お帰りください。
吉井 「そうですか。わかりました。でも、僕は諦めません。」
鶴岡 「私はここを守らないといけなので。何が何でも守ります。」
吉井 「何が何でも、ここの土地買わせていただきます。
それでは、失礼させていただきます。」
吉井が下手に去る
暗転