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成長のために縮小する?ーー逆説的な戦略「Shrink to grows戦略」とは

「高く飛ぶためには、一度しゃがまなくてはならない」

この言葉は、企業経営にも当てはまり、「Shrink to Grow(成長のための縮小)」戦略とも呼ばれます。



成長のための縮小戦略「Shrink to grows戦略」


「Shrink to grows戦略」とは、企業が本業の固定費を削減し、筋肉質な組織に変身した上で、成長分野への投資を加速するというものです*1 2。

事業が一度成功しても、その成功が永遠に続くわけではありません。市場環境の変化により、従来の成功パターンが通用しなくなることもあります。

こうした非効率的な部分や不採算な部分が生じた場合、企業は規模を意図的に縮小し、長期的な競争力の強化と持続可能な成長を目指すことが大切です。

IBMも縮小によってV字回復を遂げた!?


この戦略の代表例として知られるのが世界最大手規模のIT企業、IBMです。

IBMはかつてハードウェア事業で世界をリードしていましたが、2000年代に大規模な戦略転換を行い、ハードウェア部門を売却し、ソフトウェアとサービスに焦点を移しました。

この「縮小」は短期的には痛みを伴いましたが、長期的にはIBMの収益性を向上させ、新しい成長機会を掴むための基盤を整えたとされます。


「Shrink to Grow」戦略の光と影


このように、成長が鈍化する企業にとって「Shrink to Grow」戦略には多くの利点があります。いくつかその例を見てみましょう。

まず、財務の健全化です。不採算部門の売却や閉鎖によって、企業の財務状況が改善されるのは間違いありません。同時に、整理することで生まれたリソースを核心事業に集中させることで、特定の分野での競争力を強化することも見込めます。

さらに、資本再配分によって期待できるのが、イノベーションの促進です。新規事業や成長市場への投資を行えるようになれば、企業は新たな収益源を確保し、持続的な成長を目指すことができます。また、組織の簡素化によって、環境変化に迅速に対応でき、よりアジャイルな組織運営も可能になるでしょう。

ただし、当然ながら良いことばかりではありません。この戦略の何より難しいところは、組織に対する短期的な痛みや混乱です。従業員の士気や企業文化に影響を与える可能性があるだけでなく、もしも誤った部門の売却や縮小をすれば、企業の競争力を損ないかねません。

「Shrink to Grow」戦略は、企業が競争力を高め、持続可能な成長を達成するための有効な手段である一方で、それはリスクも伴います。この戦略を採用することは、企業が自身の規模を意図的に縮小し、その結果として生じる短期的な痛みを受け入れることを意味します。

しかし、その痛みを乗り越えた先には、より強固で競争力のある企業の未来が待っているでしょう。


(参考情報)
*1 ハーバード・ビジネス・レビュー「【書籍拝見】学習優位の経営 普通の会社であっても勝ち残る方法はある」https://dhbr.diamond.jp/articles/-/2194(2024年5月22日アクセス)
*2  「『Shrink to grow戦略』を考える」https://note.com/markanada2018/n/n903a13836944(2024年5月22日アクセス)

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