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どこでも活躍できる人事パーソンには「社会関係資本」が必要?

昨日、人事図書館で初のラーニングバーが開催されました。

大変光栄なことに、その場で話題提供をさせていただき、「社会関係資本」の重要性について触れる機会を得ました。

普段あまり持論を展開することは多くないのですが、思考を整理も兼ねて、人事パーソンと社会関係資本の関係性について考えてみたいと思います。



改めて「社会関係資本」とは何か?


社会関係資本とは、人と人の関係性を資本として捉える考え方で、個人間のつながりを持つことで社会の効率性を高めることができる「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織を表しています*1。

米国の政治学者であるロバート・パットナム氏が提唱した概念ですが、定義だけ読んでも、あまりイメージが湧かず、難解に感じるかもしれません。

誤解を恐れずに言えば、「ルールが共有され、信頼し合う関係が築かれている場合、困ったときにお互いに助け合える資本」と表現できるでしょう。


人事の仕事における社会関係資本の位置付け


さて、この社会関係資本は人事パーソンにとって今後ますます重要になってくると考えています。

例えば、採用や育成など、人事の仕事はどの局面においても非常にコミュニケーションコストがかかるものです。加えて、人事は直接的・間接的に人材評価に関わることがあり、現場との信頼関係が必要になってきます。

こうした特徴を持つ仕事を遂行するには、まさに社会関係資本が重要になってくると考えられます。社会関係資本を多く有していればいるほど、社内での業務は円滑に進み、現場との調整もスムーズに遂行できるでしょう。

一方で、ここで悩ましいのは、こうした社会関係資本は一朝一夕では蓄積されにくいという点です。社会関係資本は長くその会社にいればいるほど蓄積されるものだと考えられます。したがって、他社から転職したての人事パーソンが苦戦するのは、社内での社会関係資本がほぼゼロの状態から業務をスタートしているからだと考えられます。


人事の仕事は細かくて固有・変化性が高く、明文化されていない


さらに厄介なのは、人事の仕事の特徴です。人事業務には次の4つの特徴があると考えています。

① 少量多品種型であること
人事の仕事は、評価、配置、育成、報酬などさまざま存在するが、一つひとつの仕事は数が決して多くない

② 固有性が高く、内容も変化しやすいこと
各企業ごとに独自の要素が含まれ、法改正やテクノロジーの進化などにより内容も変わりやすい

③ 従業員起点で始めること
仕事は従業員からの問い合わせに基づいて発生するため、受け身の姿勢になりやすい

④ 規定には明記されていない例外ケースも存在する
限りなく明文化しようと試みているが、実際には規定には明記されない例外ルールも存在する

https://note.com/oh1ta/n/n5178da5096a4

要するに、人事の仕事は、細かい業務が多数存在し、それぞれが高い固有性や変化性を持ち、発生ベースで仕事が始まり、それらは明文化されていないのです。前職で活躍していた人事パーソンが、他社に転職するとすぐに活躍できない理由のひとつは、こうした特徴があるからと言えるでしょう。

人事図書館の500人ネットワークは、人事パーソンの活躍に効く


ここまで、人事パーソンにとっての社会関係資本の位置付けと、人事の仕事の特徴を見てきました。ではなぜこの社会関係資本が、今後ますます人事パーソンにとって重要になるのでしょうか?

ここで深く理解しておくべきは、社会関係資本には二種類があるという点です。

具体的には、① 企業内の人脈や関係性(縦のつながり、横のつながり)を指す「企業特殊的社会関係資本」と、② 労働市場全体で通用する人脈やネットワークを指す「一般的社会関係資本」です*2。前者の企業特殊的社会関係資本は時間をかけて築くものであり、すぐには蓄積できませんが、後者の一般的社会関係資本は転職してもそのまま持ち運ぶことができます。そして、どのような環境でも活躍できる人事になるためには、人事業務の特殊性に対応するのに役立つ「一般的社会関係資本」が必要なのです。

人材の流動性が高まる中、人事担当者が一社に長く勤め続けるケースは少なくなってきています。しかし、人事業務は企業ごとに独自の方法があるため、他社から転職してきた人事担当者にとって、その業務を円滑に遂行することは容易ではありません。さらに、社内に閉じこもって仕事を全うしようとすると、企業特殊的な社会関係資本は蓄積されますが、その一方で、社会の変化に対応できず取り残されるリスクもあります。

こうした構造的な問題に対しては、一般的社会関係資本の価値が発揮されます。具体的には、目の前の問題を客観的に捉え、解決策を見出すためには、一般的社会関係資本から得られる多様な視点やネットワークが役立つのです。

では、こうした一般的社会関係資本をどう蓄積すれば良いのか。この観点で人事図書館が果たす役割は大きいと考えています。というのも、従来、人事担当者がこの一般的社会関係資本を築く機会は限られていました。これは、人事業務が秘匿性の高い話題を多く含み、社外はもちろん社内でも利害関係が絡みやすいためです。

このような状況から、人事担当者は孤立しがちでしたが、人事図書館がその問題を解決する重要な役割を果たしているのではないかと考えています。

2024年8月時点で、人事図書館のコミュニティには500名を超えるメンバーが参画しています。この500名のネットワークがもたらす力は、多くの人事担当者にとって貴重な支えとなると考えています。


*1 日本の人事部「社会関係資本」https://jinjibu.jp/keyword/detl/1554/(2024年9月1日アクセス)

*2 日経ビジネス「「人的資本」と「社会関係資本」は何が違うのか」https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00587/103100002/(2024年9月1日アクセス)

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