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『梯子苦手病』の話

神保町裏路地日記(61)
2025/01/09㈭

 今年のお正月は久しぶりに山に行かせて貰いました。独身時代はよく一人で正月に山に行ったような気もしますが、結婚してから山に行ったのは初めてです。行き先は山梨県は北杜市の甲斐駒ヶ岳。黒戸尾根と言う長い長い登山道を、テントを背負わせてもらってえっちらおっちら登りました。アイゼンを付けた雪山も久しぶり、雪山のテント泊なんてもっと久しぶりで、年甲斐もなくワクワクしてしまいました。

 黒戸尾根はその道中なかなかに険しい登りが待ち構えていて、所々に岩をよじ登っていくシーンがあります。その岩場を予め用意された鎖を使って登ったり、掛けられた梯子を使って登ったりしていくわけですが今日の小ネタの『梯子苦手病』と言うのはこの急峻な岩場に掛けられた梯子が苦手だというお話です。

 黒戸尾根に限らず山に行くと歩きづらい箇所、登りづらい箇所には梯子が掛けられていることがよくあります。安全な登山のための対策で、これがあるおかげで僕達は本来なら登れないようなところも登ることが出来ています。ところが僕は昔からこの『梯子』というものが苦手。別に山に限らず苦手です。公園の滑り台くらいならまぁ怖いことも無いのですが、割と脚立も好きじゃないくらいには苦手。

 何が苦手かと言うと、あの段と段の間の隙間。あそこから下が見えちゃうのが苦手。ましてや急峻な山の梯子たるや、下手をするとあの隙間から何十メートルも下の斜面が見えてしまったりするともう大変。子供の頃から、高いところに行くと「落ちちゃったらどうしよう…」なんて想像をしてしまう性格のようで、膨らんでしまったイメージが恐怖感を加速させてしまうみたいです。

 いやいや、決して『黒戸尾根の梯子が安全じゃない』とか言う話ではないです。むしろ、あの尾根上にあれだけしっかりした安全対策が為されているのは、実際に目にすると感動ものです。これを作るのにどれだけの時間と労力がかかるかなんて想像もできません。だからこそ、ここで事故なんて起こせないぞと思いながらとても慎重に登らせてもらいました。登りも下りも恐怖感はあれど、終わってみれば楽しかったりするのだから不思議です。

 「落ちちゃったらどうしよう」という気持ちの問題は何も梯子に限った話ではなく、同じ理由で東京タワーやスカイツリーのガラス張りの床も苦手です。パリのエッフェル塔もガラス張りなもんで、ここで妻押されてブチ切れたのはほろ苦い思い出です。あと、一面ガラス張りの観覧車。これも。

東京タワーの参考画像
ブチギレエッフェル塔のガラス張り

 結局、ハシゴに限らず『下が見えるもの』は落ちるを連想するから苦手です。極端な話、下が見えてなかったりすれば意外と平気です。黒戸尾根の梯子も、周りが木に覆われているとか、傾斜が少し緩やかとか、気持ちを落ち着かせる要因を何か見つけられれば大丈夫。要は気の持ちようってことかしら。

 でも、こういう『梯子苦手病』の人は少なくないはず。そういう人の話も聞いてみたいですし、逆に『梯子大好き症候群』もあるでしょうからそう言う話も聞いてみたい。こういう何でもないようなネタも、酒場では意外と盛り上がったりするんですよね。

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