『きっかけ』の話
神保町裏路地日記(69)
2025/01/20㈪
色んな人と色んな話をさせて頂く時に「そう考えるきっかけって何だったんですか?」と聞かれることがよくあります。『きっかけ』ってとても大切です。初めてのことって忘れませんから。いろんな経験を積み重ねていくうちに初めての記憶が薄れていってしまっても、その思い出を捨てているなんてことはなく、必ずどこかの引き出しにしまってある。それをひょんな事から引っ張り出してみると、「あぁ、そう言えばそうだったな」と立ち返って改めて新鮮な気持ちになれるのも嬉しいものです。
週末、友人達と山に行きました。「雪山を歩いてみたい」とリクエストがあったから、いくつか候補を出して、そのリストの中から決めて貰いました。
行き先は長野県の入笠山という山です。初夏になるとスズランが咲き誇る自然が美しい山で、僕は以前夏山で訪れて以来二度目になります。
山に着いてみるとたくさんの登山者がいて、トレース(道筋)は踏み固められているものの結構な積雪量です。トレースを外せば腿くらいまでは簡単に埋まりそうな雪量。何だか楽しくなってきます。
昨日の午前中はとにかく天気が良かった。たくさんのレンズ雲が空に浮かんでいるのが不思議な光景です。踏み固められた登山道で雪道に慣れた後はちょこっとそれを外して自分達で道を作ってみたりなんかして、いわゆる『真っ白なキャンバスに絵を描くように』歩いてみたりするのも楽しいものです。
結果的にこの山を選んだことは大当たりでした。初めての雪山に友人達も大満足してくれたみたいで、また来月も行こうと言って山行を終われたのはとても良かった。
きっとこの『初めての雪山』を彼らは忘れないんだろうなと思います。そのくらい感動的な景色と体験でしたから。僕の『初めての雪山』もなかなか良かったという自負があるのだけど、今回はそれに勝る素晴らしい一日だったな。この忘れられない一日が、もしかしたら今後どこかで大きな方向転換に至る可能性だって無くはないほど、それを言っても言い過ぎではないほど素晴らしかった。
あ、そうか。これは僕にとっても『はじめて』ではあるのか。雪山を歩いたことのない友人を誘って行った『初めての雪山』か。そう考えると、それが入笠山だったというのも不思議なご縁だなと思います。だって、以前ここにスズランを見に来た時は『山に慣れていない妻と花を見る目的で来た初めての山』だったんですから。これは僕も忘れないだろうな。