『今どきの若い子』の話
神保町裏路地日記(62)
2025/01/10㈮
多分、今の10代20代の若者って僕が当時を過ごしていた頃よりも色んな事を考えているだろうなって思います。取り込める情報量も段違いだし、取り巻く環境も大きく変わっている中で日々アップデートされているような印象を受ける。パーソナライズされた情報に『考えなくなった』人も多いのかも知れませんが、それに疑問を持つ人も少なくないのだなと色んな場所で耳に入る話題からそんなことを思います。
昨日、よく行く喫茶店の店先で大学生が三人、寒い中冊子の販売をしていました。表紙には『能登の手(noto note)』と書いてあって、それはどうもその大学のゼミ研究の一環で昨年起きた能登の震災後の街に生きる人達に焦点を当てたインタビュー形式の報告書のようです。1000円以上の寄付で一冊プレゼントと聞いて面白そうだなと思って買ってみました。
冊子自体がとても読みやすくて内容も面白い。面白いと言うのは、能登で商売をされている方々の前を向く力が飾らない言葉で綴られているのが気持ち良いと言うか、とても素直な内容なのがいいというか。きっとこのゼミの子達は実際に現地に訪れて色んなものを見たのだろうなと思います。『悲惨だ』と思うような被災地の光景と、その悲惨さと裏腹にその地で強く生きようとする人の姿と言葉に考えさせられる事が沢山あって、その見たこと聞いたことを一生懸命形にしただろうなと想像すると、ゼミ研究の報告書としての質としてだけでない貴重な資料のように思えたのです。
そのゼミの子達とは別に先日お店に来てくれたご近所の大学の子達がいるのですが、その子達も面白かった。「日本酒が飲めるお店を探していて」と言ってうちに来てくれた女の子達で、最初は二人でお話していたのですがどうも隣で話している常連さん達の会話が気になっているようで。時折チラッと見てくすくすしています。タイミングが合った時に会話の流れに入れてみると、自分達のことも上手にお話するしおじさん達の話も上手に聞いてあげられるじゃありませんか。
おじさん達からすれば、男女に限らず若い子との意見交換は貴重な機会です。なんせ日頃『新入社員の子達』『部下の社員』や、ともすれば『娘や息子』とのコミュニケーションに四苦八苦している人達ばかりですから。距離感や言葉に気をつけながら酒場の話題に盛り上がる様子は見ていて結構楽しいものです。
ゼミの子達の研究や酒場に訪れた子達を見ていると、結局のところ、世代によるレッテルなんてものは印象付けでしか無いのだと思わされます。そういう人もいればそうでない人もいるという『ひとそれぞれの個性がある』なんて当たり前のことが、ラベリングで隠されて見えないだけだと思わずにはいられない。
「先入観や偏見を持たずに接してみなさい」と教わったことを思い出しながら彼ら彼女らと、世代を超えて共有できる部分に目を向けて楽しんだ方が良いじゃないかなんて、まぁ酒場のおっさんとしてはそんなことを考えるわけです。