Photo by withsmilepoko エッセイのご紹介408 真夜中の演奏会(小黒恵子著) 2 小黒恵子童謡記念館 2022年6月5日 10:29 こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。 今までは、神奈川新聞のリレーエッセイをご紹介してきましたが、今回は、神奈川新聞のサンデーブレイクに掲載されたエッセイをご紹介いたします。 記念館には、自筆の原稿が残っており、ここでは、原稿の方をご紹介します。実際の記事は、校正を重ね、少し異なっています。 詩人の書いたエッセイ、独特の言葉選び等を感じていただけると幸いです。エッセイ タイトル一覧(小黒恵子自筆の原稿より)「真夜中の演奏会」 詩人・童謡作家 小黒恵子 八月の中旬から下旬にかけて、毎晩あぶら蟬の大合唱がはじまる。 むかし住宅地には街路灯がなく、家庭の灯りも淋しいものだった。従って月のない夜など、真っ暗闇だった。 晝と夜の明暗が、はっきりしていたものだ。 その頃蟬の真夜中の演奏会は全くなかった。 ところが今は街路灯が明かるく、各家庭からもれる灯りで真夜中も明るい。 そこで蟬は、短い生命を惜し気もなく燃焼して、晝も夜も鳴いている。 七年も八年も地中生活を送り漸く明るい地上に出て、約一週間の生命と言う蟬。夜まで鳴いていたら、生命が縮むのではないかと思い、わが家の四つの外灯を消すことにした。 その結果、効果はてきめんだった。然し街路灯や各家庭の灯りが明るいので、蟬は移動して鳴いてはいるが、確実に夜の演奏会は半減したようだ。 過日取材で、ある新聞社の若い記者と庭に出た時、欅の大木に忍者のように、蟬がびっしりと止っていた。 私は、パッと素手で、蟬を捕った。 ジージーと悲鳴をあげる蟬を、すぐ放してやったが、若い記者は驚き且、あきれていた。 瞬間の出来事に、野生育ちがバレて了ったが、手の平をくすぐるあの感觸が、少女の頃を思い出させた。 1992(平成4)年8月30日 神奈川新聞サンデーブレイク掲載の原稿 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 次回も、小黒恵子の神奈川新聞のサンデーブレイク原稿をご紹介します。(S) ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #エッセイ #紹介 #生命 #原稿 #演奏会 #蝉 #真夜中 #小黒恵子童謡記念館 #小黒恵子 #神奈川新聞 #サンデーブレイク 2