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No.604 小黒恵子氏の記事-24 (初めて見たサバンナの風景を詩に)

 こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。

 今回は、2001年に産経新聞に紹介された小黒恵子氏の記事です。

歌って  音って
初めて見たサバンナの風景を詩に

   
もう四十年以上、童詩・童謡をつくっている小黒恵子さんは昭和五十三年夏、ケニアへ出かけた。サバンナにあるホテルと名のついた建物のドアはカンヌキ、天井にはヤモリがはっている。水は沸騰させてもダメだった。ミネラルウォーターを売っているが、やはりダメで、おなかをこわした。ふろがあり、ひもを引っ張れば水が出るはずだが、せいぜい五-六滴がこぼれるほど。
魚のフライが出た。少し近付くと、干しぶどうのようなものが乗っている。工夫しているな、とそばまでいけば、いっせいにハエが飛び立った。
ある夜中、ドアがゴツンゴツンと音をたてる。気になって寝られない。調べに行く勇気はない。夜が明けるのをまって確かめにいったら、ドアが開かない。それでも何とか開けたら、ヌーの糞(ふん)がいっぱいあった。夜中にやってきたヌーがドアをたたき、糞をして帰っていったらしい。
キリンはアカシアの高いところにある葉を食べる。アリはアカシアの葉で子育てする。成長したアリがいなくなった後、風が吹くと葉が「ピュウ」という音をたてる、という。
首都ナイロビのホテルで傘やゴルフクラブを売っていると思って近付くと、象の骨や足だった。
「自分の中に、子供の世界が残っている。まあ、社会性がないってことでしょうか」という小黒さんは、自然や子供が好きで、タイピストから童詩・童謡の世界に入った。初めて見たサバンナの体験がシマウマの詩になる。
「シマ模様、みんなにねらわれている。太陽へ向かって逃げなさい。ペガサスになって逃げなさい。太陽が守ってくれるでしょう」と書いた。
この純な幼心、深い愛情は、小黒さんならではの世界である。
これほどの危険、これほどの感性、すばらしい愛の世界・・・それでも、簡単には広く普及しない。
「一番孝行なのは、ドラキュラのうた、なのよ。何十年かかって、そうね五百万円くらいになるかな」。おカネになりにくい独特の世界。でも、小黒さんは明るい。                  (北沢高宏)

産経新聞夕刊 平成13年(2001年)2月27日

現在は、川崎市に遺贈され、リニューアルしてオープンしています。色々とイベントも行っていますので、当館ホームページでご確認ください。

  最後までお読みいただき、ありがとうございました。
  次回は、2001年に新聞に掲載された記事を、ご紹介します。(S)

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