詩のご紹介1 もう かえって来ないんだね(小黒恵子作)
こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。
今日は、小黒恵子の処女作をご紹介します。
(上の絵は、当館スタッフが詩をイメージして描きました)
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もう かえって来ないんだね
~今は亡き愛犬ロンに捧げるうた~
霧だったね 九十九里の朝
露にぬれて はしゃいだのだれ
イソギクの水玉 なめていたね
おいしかったんだね
青かったね 九十九里の空
波に向かって 吠えたのはだれ
マントヒヒみたいな かっこうだったね
うれしかったんだね
続いてたね 九十九里の浜
まるい海棉 ひろったのだれ
いつまでもくわえて 歩いてたね
とくいだったんだね
しめってたね 九十九里の砂
チビの磯ガニ みつけたのだれ
おさえてはとびはね 吠えていたね
こわかったんだね
光ってたね 九十九里の海
しずむ夕日を みてたのはだれ
まばたきもしないで すわってたね
みとれてたんだね
もうかえって来ないんだね
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小黒恵子氏は、33歳の頃、サトウハチロー氏が主宰している「木曜会」で勉強していましたが、3年ほどで木曜会からは退会しています。
「毎週詩を書いて行かなければならないので大変でした。」と雑誌のインタビュー(月刊財界にっぽん 2000(平成12)年8月1日発行)記事で答えています。
サトウハチロー氏には、なかなか詩を褒めてもらえなかったようですが、愛犬ロンが亡くなったことを読んだ詩「もう かえって来ないんだね」を見せた時には、「これなんだよ、小黒君!」と、初めて褒められたのだそうです。
「『悲しい』『寂しい』という言葉を一言も書かずに、悲しみ(哀しみ)を表現しているところが良い。」と言ってくださった、と、1992(平成4)年にテレビ出演された時、小黒さんご自身が語っておられます。
というわけで、1970(昭和45)年に処女出版された童謡集:シツレイシマスで、この詩は発表されました。
(当館スタッフによる朗読です)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回は、童謡集:シツレイシマス をご紹介します。(S)
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