自治体職員から被災地支援を学ぶ
今月初めにですね、防災関連の特別委員会で全議員対象(参加自由)の勉強会的なことを開きまして。勉強会というとなんか大袈裟に聞こえるかもですが、能登へ被災地支援に派遣された港区の職員さんたちの話を聞く機会が欲しくって。
一般人がボランティアで被災地支援に赴くことと、自治体職員が自治体職員しかできないことを任務として赴くことには、いくつもの違いがあると思います。どちらも大切なことですし、行かれた方々は「すげぇなあ」と感心するばかりですけれども、自治体職員の派遣というものは一般的にはほとんど知られていないんでないでしょうか。私も議員になるまでそういうの知らなかった方でありますので。
もちろんこれまでも国内自治体からたくさん支援が入る災害があり、港区からも職員さんが派遣されたことは報告として知っていました。が、どなたが何をしてきたのかを知る機会はまったくなくてですね。『罹災証明発行のお手伝い』ということを聞くことだけはあったんですけれども。この度の能登半島地震では罹災証明だけではなく、家屋調査支援と保健師派遣もあったために、『そうだ、特別委員会でまるっと講師としてお呼びしてお話聞こう』という運びになったわけです。
職員さんが被災地支援でどういうことやってるのか
そもそも、「どういう職員さんが被災地支援に行くの?」ということなんですが
被災地支援というものは都道府県単位で大きく関わることになり、東京都の中で「この順番で港区からも派遣」というようなシステムであったりもするものもあると。もちろん、「何か手伝えることがあれば」「自分の出身地付近で何かあったら行きたい」と個別に希望する職員さんもいるとのことで、結構前だけれども雑談ベースでそういうお話を聞いたことがありました。なんにせよ、手上げの職員さんにはありがとうという感謝以外にないですね。
港区はいわゆる「姉妹都市」「友好都市」的な自治体がなく、もしあればあったで「派遣しましょうか!?」的なオファーができたのかもしれないですけれども、市町村が個別に対応するよりは災害対応は都道府県マターです。みんなで助け合おうよと、東京都との調整でどこに派遣されるかが決まると。ということで港区は輪島市へ行かれたと(保健師派遣は金沢市)。
罹災証明発行業務
災害で被害があればその数だけ証明書が必要になるわけで、被災地の役場のみなさんも色んな業務でてんてこまいでしょうから全国から業務支援が必要になってくると。派遣された職員さんたち曰く、ピーク時は1日160人が来訪、1件処理に20分ほど、他の自治体から同じように派遣された職員さんたちとペアを組んで業務に取り組まれたそうです。
支援を経験されて、港区でどう対応するかも考えてくれて、本当にこういう経験者の提案というのは大切にして欲しい。時期を分けて港区からは3名派遣。課題となりうるキーワードは【受援体制】、【港区特有の住環境】、【アナログ周知】ということでした。これらは全部の業務支援にも共通することでしたので、後にまた。
住家被害認定2次調査
罹災証明発行に伴い、被害程度の調査が必要になります。ほら、皆さんよく見聞きするじゃないですか、全壊だの半壊だのとか。どのくらいの被害かを調査する人々も必要ですので、そういう支援も港区から時期を分けて2名派遣されました。
被害者立ち会いのもと、外観目視から内部の立ち入り調査まで、1件約1〜2時間ほどと。タブレット持って写真とったりデータとったり色々したようで、現場で調査してくる項目を別のPCに移すのが手間取ったというような、IT改善があるといいなというような報告も。
輪島市まで片道2時間を8泊9日で毎日毎日、泊まるところは合宿所のようなところの2段ベットがあるものくらいで、ご飯は支給されるわけでもなく各自コンビニ。初めましてと初対面の他のところから来る派遣職員さんたちと日々お仕事で、毎日クタクタで色々な意味で相当キツイものがありました、という報告に「あぁ職員さんってすげえなあ」と。質疑応答でもありましたが、こうやってみんなのために派遣される職員さんたちのケア(メンタル含め)も忘れちゃいけないんだなって、これは直接聞かないとわからない気付きもありました。
派遣された職員さんのお話の中で、「輪島市は一軒家がほとんどだったが、港区で被害調査で同じことをやるとすると、タワマン含めて外観調査は高いところ絶対ムリ」というようなことを話されてて。確かにそういうお話聞くと、マンションだって住居部分と共用部分とか色々あるわけだし、いざという時は「どうするんだろう?」「どうなるんだろう?」と感じてしまうわけ。
自分が今こういう立場なので、「区がすべきこと/しなきゃいけないこと」をきちんと整えてもらうことを伝えていかなきゃいけないわけだけど、ただ、我々議員なんぞその辺のおっちゃんおばちゃんであることも多々あるわけで、自治体職員さんの方がよっぽどプロフェッショナルな部分がめっちゃあるわけで、ただ単に「ああしろ」「こうしろ」と机上の空論と人気取りで架空の防災対策を要望しちゃいけないもんだよなあと改めて感じる次第であります。
1.5次避難所保健師支援
派遣への流れとしては、【石川県→厚生労働省→東京都→港区】と。被災地派遣経験豊富な方曰く、輪番制だから派遣の機会が少なくて、保健師の中でも経験者も実はそんなに多くないと。確かに、災害があると罹災証明発行支援はいつも聞くけれども、保健師というのは港区で聞いたことがなかったかも。
保健師派遣はチーム制。なので災害医療担当さんと、若手の保健師職員さんに経験してもらって港区の将来に貢献してもらいたいと、メンバー組んだということでした。全員で6名。
保健師さんたちの活動の中心はもちろん健康観察。1.5次避難所利用の85%くらいは1ヶ月以上滞在されているとのことで、もちろん高齢者がとても多いと。保健師だけじゃなく介護職の方も避難所には入られるようで、多職種入り混じっての被災者支援です。こういうシチュエーションと場所でとなると、介護を手厚くすると自立を阻害することにもなるし、とかいって逆のケースも出てくるし、バランスがとても難しいというようなお話も聞けました。
またですね、2次避難所に移動したけれども「やっぱり集団生活がいい」と1.5次に戻ってこられる方もいるようで、色々となかなか難しい。
都心部では何をどうできるんだろう
というのが、都心自治体の悩みです。今に始まったことじゃないけれども。ただ、こういう報告を聞ける会があったことで、一番肝となるのが【受援体制】だと改めて感じます。つまり、『全国から応援がくるような規模の災害が起きた場合、知らない人が入り乱れるからこそ、短期/中長期で何をどうしていくのか』が誰もまだよくわからないことが喫緊の課題なのかなって。
港区では一応【港区災害時受援計画】というものが作られる予定になっています。もうまもなく発表とかされるくらいなのかな。どうだろう。ただでされ、○○計画というのが溢れかえる自治体施策でありますが、実際何かが起きた場合はどれほどがこういう計画通りに物事が進められるのか正直わかんない。いや、そうするためにマニュアル作ってるんだよと怒られそうでありますけれども。
こないだの2月の定例会で、避難所運営について取り上げました。色んな人が入り混じるであろう場所で何をどうするのかイメージできるようにしてもらいたいとか、地域防災協議会でも色々あるよとか、要は街場任せは無理じゃね?というようなことを直接言うのは避けつつも、都心における災害対応って難しいよねというような。
いや、こちらも「こうしたらいい!」というアイディア出せたらいいんだけれども。ごめんなさい出せなくて。マンションごとに対応マニュアル作ればいいといういう考えを持つ方もいるんだけれども、タワマン乱立してそこだけですべて賄えて完結できる場所ならいいんでしょうけれども。そのタワマンすら例えば一部損壊とかで滞在は危険とかなったら、何百何千世帯がわーっとどこぞの一時避難所に押し寄せたらどうなるんだろうとか、色々考えちゃうじゃないですか。と、なんか悪いことばっかり考えちゃう。
いざという時は助け合いなわけですが、その助け合いの仕方のマニュアルがないというのが現状なんだろうかね、というのが正直な感想です。マニュアルあればすべてオッケーというわけじゃないけれども、行政が心得ておくマニュアルと、街場の一般民が心得ておくマニュアルはまったく別物なわけで。後者の意識が明らかに足りないとは思います。
職員さんたちの被災地派遣は一番早くて1月末、一番遅くて5月下旬だったわけで、こういうお話を聞けば聞くほど短期と中長期でやること考えることは別々なんだなあって感じます。「行政として何を整えなければいけないんだろう」ということの他に、「一般民はどう行動するべきだろうか」みたいなのももちろんセットで。あ、当然のことながら「急に乗り込んでくる議員が一番現場を混乱させるのではないか」という懸念もある。
心配事は尽きない。けれどもできることがあるのならそこから始めましょう。マンション多い都心ではまずもって【在宅避難】を推奨されてるわけですから、おうちの中で物が倒れて大変なことになるリスクを低くするためにも、家庭内でできることから。
お役所からもらわなくとも自分で買って付けるよというのもヨシ。1世帯1回貰えるなら貰っておこうもヨシ。
↑このタイトル、助成だと助成金のことだと思う人がいるのでもっと明確に【家具転倒防止器具等の無償提供のご案内】の方がよくね?
以上。