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虎に翼で会社を辞めた2

5月半ばを過ぎた頃、次から次へと仕事を依頼され、心の不調と過労で疲弊しながらも一つ一つ捌いていく。一つ終わっても、また二つ三つ増え、もう一つは大幅に修正(だいたいロクに説明もなく丸投げされるので、趣旨を理解できていないまま成果物を出すと詰む)お客さんからの問い合わせや相談の電話も鳴る、頭の中がヒッチャカメッチャカで余裕のないわたしに放った社長の言葉でついに崩壊する。言った本人は記憶もないだろう、尊大で傲慢でわたしという存在を舐め腐っていることを表すには十分過ぎるくらい不愉快極まりないものだった。

日々迎合しているので、耐えて抑えて積み重ねた怒りでひたひたになっているビーカーの水が、心無い言葉で溢れだし、完全に自分の心が決壊したことがわかった。

怒りによるパニックでしばらく吐き気と頭痛が止まらなかった。帰り道は歩けずタクシーに乗ったくらい、それから何日か休んで、自分はこれからどうするべきか悩みに悩んだ。ただもう何事もなかったようにヘラヘラ笑って迎合しながら働かないといけないのなら死にたい、死のう。

この瞬間に、もう一人のわたしがピピーっと笛を吹いてレッドカードを出してきた。あの時の脳内は大真面目にこんな感じだった。

はい!退場〜!こんなかわいい子供たち置いて死ぬってバカなの?あんたそれでも母親?そんなになってまで仕事する意味ある?あんたにとっていちばん大事なのものは何?家族でしょ!今すぐ医者行って会社辞めなよ!

そこでようやく目が覚めて、メンタルクリニックを受診して、弁護士と連絡をとった、初めて家族に自分の状態と置かれている状況を伝えた、診断書を見た夫は驚いていたが、まぁとにかくゆっくり休みなよと言い、娘や息子も母親がいつもと違うことを感じとって優しく接してくれた。わたしには家族がいる、家族のために生きよう、まずは会社を辞めよう、もう迷いはなかった。

とはいえ一人で戦うのは無理だ。
よねさんは「本来法律は、力を持たない私たちがああいうクズをぶん殴ることができる唯一の武器」といい、寅子は「法は弱い人を守るもの。盾とか、傘とか、あたたかい毛布とか。そういうものだと思う」という。
そう、わたしのように病に冒された労働者が会社を辞めようと思ったら、法律が必要だ。
これは本当に虎に翼を観なければ、弁護士に退職の手続きやもろもろをお願いすることはなかっただろう。

つづく


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