あなたに「自分らしさ」があると思ってる?オリジナリティに悩む大学生ズ◆自分らしさ【ぷろおご伊予柑の大預言】
「あなたらしさ」を問う人が知りたいことはなに?
伊予柑:はい。今回のテーマは、就活中の大学生ズがエントリーシートを書くときによく問われる、「自分らしいってなに?」です
ぷろおご:へー。書いたことない。エントリーシートってなにを書くんですか?
伊予柑:だいたい志望動機とかですね。いくつか企業からの質問があって、それで選別されるのでみんな必死に書くんです。このあいだ、電通に入りたい人がエントリーシートを書きながら「自分らしさ…ウッ…」って言ってたんですけど、ぷろおごさん、自分らしさとは?
ぷろおご:自分らしさって誰に向けたものかで、全部規定されますよね
伊予柑:そう。企業のエントリーシートに書く時にみんないきなり直面する
ぷろおご:それはつまり、自分らしさを問われてるんじゃなくて、「あなたは私たちを何だと思ってるんですか?」っていう話じゃん。なんだろう、「あなたは電通をどう思ってるんですか?」みたいな話で、自分らしさっていうより「私は電通をこういう会社だと思ってます」っていうのをたんに書くっていう話ですよね
伊予柑:そうですね。相手の商売がないと、自分はこういう商品でこういうスペックです。って規定できなくて、どうやって売り込めばいいのかわからない。たとえば相撲協会にだす自分らしさは「180kgです」って書きますけど、それを電通にはださないですね
ぷろおご:そうそう。だから、「あなたはそもそも我々をどういう視点で見てるのかな?見せてみなさい」みたいな、それだけの質問ですよね。それって自分らしさじゃなくないですか?
伊予柑:生まれてこのかた21歳まで自分らしさを問われることってないのよ。ないじゃん?それをいくつもの会社に問われて、「自分らしさってなんだ???」ってわけがわからなくなる
自分らしさに悩むときは、「商品としてのわたし」の売られ方を考えよう
ぷろおご:相手が企業でも、人でもそうですけど、調べたらわかるんですよ。たとえば、その相手がどういうパーソナリティを持ってるとか、会社だったらなにを売って、なにで利益をだして、どこに人間が必要でこれからどういう時代に向けてなにをしようとしているか、とか。こういうことをしたくて、こういうことをやっていて、で、若いやつにはこれをさせたいんだなってことはわかるじゃないですか
伊予柑:よくわからなくない?だって電通だよ
ぷろおご:電通とかね、大いなる存在だったらわからない。無邪気にいけばいいのかもしれないけど、若いやつにこれをさせたいとかってのはあんまり変わらないじゃないですか。だってできることがないんだから。そこで「やります!」って言うだけじゃないの?「自分、やれます!」って言うかどうか
伊予柑:そんな、やる気、勇気、元気!みたいな・・・
ぷろおご:これも友達の議論の延長だとおもっていて、「やれます!」は「わたしたち友達だよね」っておなじですよね。そういう外向けの表現じゃないですか。だから本質的にどうかっていうより、表面的にどういうふうにする覚悟がありますっていう話で。
「私はあなたと友達だとストーリーでみんなに広めることができます」っていうのと、「私はあなたがこういう会社だということを知っており、それに対してこれをやります。やれます!」はおなじで、それはあらゆる関係に対してもそう。
たとえば伊予柑とわたしがこうやって話し合っていますよね。伊予柑は裏方の人でお金は要らないけどなんか若い魂、新鮮な魂を欲していて、おれはネットで顔を出してて数字を持っている。わたしはあなたのほしいものを提供できます。こういうふうに自分らしさが生じているわけですよね
伊予柑:「え、提供できるんですね!なんてあなたらしいんだ。」
ぷろおご:伊予柑からすると、「お前からしか得られないかも…」みたいな、「お前と関係する理由があるわ」っておもってもらえるのは「らしさ」ですよね。自分が自分らしさをどう定義するかは関係ないじゃないですか。
おれは若者の魂を提供することになんのプライドも持ってないですけど、ただ、やれます!やります!ってスタンスをとって、で、結果として実際にそれが提供されました。ってなれば、らしさになるわけで
伊予柑:図書館メンバーのひとり、東大生が「東大生で武道をやっていて、わりとかわいくて、なんて自分は汎用品なんだろう」みたいなことを言ってたんですよね。自分らしさがないって・・・
ぷろおご:絵に描いた汎用品
伊予柑:たしかにそうだけど、そうじゃないんだよなっていう不思議な気持ちになった
ぷろおご:「誰にとって」っていうところがうやむやになってるとくるしいですね。自分らしさみたいなことを話すとき、みんな高尚な気持ちになるじゃないですか。なんか天井がなくなって、青空が見えてきて、大草原が広がっている〜みたいな感じになるけど、全然そんなことなくて、もっとビジネスライクだとおもうんですよね
「あなたじゃなきゃだめ」って認めてくれるのは誰?
伊予柑:私のオリジナリティみたいなものを問われると、ついそれについて考えちゃうんですけど、正直、「私のオリジナリティ」なんて友達同士であればまじで要らないんですよね。その人が東大生だから付き合うわけがなくて。
他方、企業から求められてるのは、「企業のほしいものをこういうふうに提供できますよ」っていうスタンスの表明となると、みんなが考えてるような自分らしさみたいなものって実は誰も求めてないですよね。お前のオリジナリティ、誰もそんなことを聞いてないよ、という話になってくる
ぷろおご:じゃあ友達とのあいだで自分らしさがまったく要らないかっていうとそんなこともないとおもいますよ。参入障壁の高さはオリジナリティの一部ですよね。5年一緒にいるとかはめちゃくちゃ参入障壁が高い。
だって、急に500万用意して、オレとお前5年一緒だよって言われても、そうはならないじゃないですか。おれと伊予柑はもう5年ほど一緒にいて、一緒にいたという事実は変わらないし、よほどのことがないかぎり、つぎの6年目をやるわけですよ。原理上、追いつけないわけじゃないですか
伊予柑:接触時間はめちゃくちゃ参入障壁が高いですね
ぷろおご:これこそ「らしさ」じゃないですか。お前じゃなきゃだめだ、という。思い出を共有してるとか、安心するし、オレたちもう5年の仲だからってなる。これは価値だし、オリジナリティですよね。たんにその生成コストが特殊な時間かけないとどうしようもないものになってるだけで、友達間でも「自分らしさ」っていうのはあるとおもうんですよ
伊予柑:前に、心とはふたりの秘密であるっていう議論があったんですけど
ぷろおご:なつかしい
伊予柑:電通のエントリーシートとわたしにとっての秘密みたいなものを定義するといいかもしれない
ぷろおご:「わたしは電通の株式を〇〇%保有しており・・」
おなじくらいの能力なのに、なぜか評価されてるアイツの仕事術
伊予柑:つまり、自分らしさを自分にあるものと捉えるとしんどくなる。そこで、エントリーシートに書く「自分らしさ」を「電通さんだけに教えるんですけど、」っていう二者間にあるもの、電通さんとわたしのあいだにある取引のような秘密のようなものとして定義する。
それなら、自分らしさって企業ごとにいっぱいあるにきまってるじゃないですか。相撲協会と私のあいだにある秘密と電通とわたしのあいだにある秘密は違うので。そういうふうに捉えたほうがいいかもしれませんね
ぷろおご:だから飲みに行かないといけないでしょ
伊予柑:どういうこと?
ぷろおご:だって能力とかできることなんて、ほかの新卒、あるいは2年目3年目と比べたときに、自分のほうができるわけないじゃないですか。ほとんどの人はね。だから飲みに行かないといけない。関係性をいろいろなバリエーションでつくっていく。そうすればオリジナリティを持てるわけですよね。
新入社員はいっぱいいるし、能力50なやつもいっぱいいるけど、「お前はこのあいだ飲んでて楽しかったなぁ」ってなったら、そこで優位性をとれるでしょ。そしたらほかの50のやつより仕事が多く振られて52になったりする。50のやつより52の方が強いので、ほかにも関係のないやつからの仕事がくる。それでまた仲良くなって、別の優位性を獲得して…っていうレースですよね。
能力が飛躍しなくても、別の優位性をもてれば自分より能力値の高いやつと一緒に仕事ができる。結局、能力値に全ツッパだと、どうしても50の横の関係性から抜けられないんですよ。それなら、能力は横並びなのに抜けてるように見えるやつは、なんで抜けてるのかというと、「あいつはなんか裏で仲良くやってるらしい」って
伊予柑:裏でチーム友達をしてたら、実際に仲良くなって抜きんでるわけですね
ぷろおご:地方の昼のドラマとか、ぜんぶ愛人とか縁故じゃないですか。女優偏差値としては50、あるいは45なんだけど、なんか65のやつと一緒にでてる。それは裏に関係があったりするわけですよね。飲みの上位概念ですよ。だから、飲みに行ったり、あそぶ
伊予柑:今の話は入社後の話で、入社前にらしさ、関係性を獲得するために僕が個人的におすすめしているのが、その会社の社史を調べる なんですね。その会社の歴史を調べて、そのなかで企業と私の関係性をつくっていく。なんの取引があってどうこうとか、数字スペックだと正直わからない。
でも物語としての社史みたいなものだと、まだもうちょっと共感ができるので。そうすると相手が企業であっても「その人と私のあいだ」が書きやすいかなと思います。時間はかかるんですよね
ぷろおご:法人、就活とかって考えるとややこしいけど、そこを言い換えるとシンプルですよ。初対面で会いました。みんなその時点での関係性はおなじなんだけど、「あれ好きなんですね」とかってツイッター見て言われたら、そっちのほうが優位性あるのでは?っていう話ですよね
伊予柑:もちろん
ぷろおご:就活もおなじだよね。おれは就職したことないのでわからないですけど
伊予柑:じゃあそろそろ質問にいきましょうか
Q.自分になにができるのか、わかりません
ぷろおご:あー、供給できるかどうかってこと?
伊予柑:うん
ぷろおご:気合いじゃない?
伊予柑:根性論がきました
ぷろおご:契約と気合でしょ。やりますって言ってやらなきゃいけなくなって、やる
伊予柑:海賊王に俺はなる!!!!!っていうことですよね
ぷろおご:誓約するから。「やべえ、どうしよう。言っちゃった。海賊王ってなんなんだよ。少なくともクロコダイルは倒しておかないといけない気がする。とりあえず倒すか・・・」みたいな。そうすると追いついてきたりする
伊予柑:手を挙げる はすごい大事ですね
ぷろおご:それはもう迫力なんで。要は宣言した段階で同じ能力のやつらからは抜きんでるわけですよね
伊予柑:そうなんですよね
積極性が推奨される背景と、上司の思惑
ぷろおご:おなじ能力値の「オレ、やります!」って言うやつと、言わないやつがいたら、やりますって言ったやつに一回やらせるじゃん。よほどバカじゃなかったらそれで上手くいくとはおもってないから、じゃあ、とりあえず一回やらせるかってなる。
だからそいつはやるって言った人になれる。それでやって、失敗した後に謝れるやつかとか、いろいろ後にも分岐はあるんだけどね。できなかったとしても、「やれませんでした、すいませんでした。どうしたらやれますか」って言いえばいい、そうしたらもうキャバクラになるわけで
伊予柑:イケてる後輩力はだいじですよね。可愛がられ力というか、はい!ってとりあえず大きい声で言うみたいな
ぷろおご:「ここまでやってて、どうしても間に合わなそうなんですけど、どうしたらいいですか?」
伊予柑:そうそうそう
ぷろおご:「こいつだめだった時にちゃんと報告をするんだ」ってなれば、「こいつは任せていいやつだ、」ってなるわけよ。これがたとえば、前日にやべえってなって飛ぶとか、ごまかしたりすると、こいつには任せられないナってなる。ここはちがいますよね
伊予柑:怒られたくなくてね。抱えてしまいがちなんですよね
ぷろおご:怒られる前提で、ごめんなさいっていう手札をちゃんと持っておけば、許してもらえる。さすがにそんなヤバい案件はまわってこないですよ。仮にそれを新人に任せるなら、新人にそのような能力があるのか、さいあく、だめだった場合でも上司が尻拭いしてくれるめちゃくちゃ強い兄貴な可能性が高いので。そういう意味でごめんなさいができたら、それでいい
伊予柑:ごめんなさいは大事ですね
ぷろおご:ごめんなさい、次からこうします。どうしたらいいんですかってアドバイスを求める。そこからはもうキャバクラですよ。「お兄さん!教えてください」って
伊予柑:体育会系後輩ムーブは習ってないとけっこうむずかしいんですよ
ぷろおご:まあ、ルールとしてはそれだけですね。できなくていい。「やります!」「できます」って言って、できませんでした、ごめんなさい教えてくださいっていうまでの型を持っておく
伊予柑:はい、次の質問いきましょう
Q.「あなたらしくいて」って言われたとき、どうすればいいですか?
ぷろおご:どうすればいいか。したいようにしたらいいけど、それも結局おなじです。その人があなたに「こうあってほしい」っていうのを言ってるだけで
伊予柑:そうですね。なんか気に食わないから言ってるんですよね。自分らしくあってほしい
ぷろおご:「それはあなたらしくない」みたいな
伊予柑:それはもうパワハラですね
ぷろおご:「悪口を言ったらあなたらしくない」「あなたは優しい子なので、あなたらしくいなさい」発言者によっていろんなパターンがありますね。まあ就活もそうですよね。「自分らしさを教えてください。優しくしますから、」みたいな。だからそれもおなじようなニュアンスのことが多いんじゃないですか
伊予柑:私にとって都合のいいことを言いなさいという言い換えであるというふうに・・・
(自分らしさ 完)
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