\自転車用でないヘルメットを使うデメリット/【ゲストコラム】自転車用ヘルメット緊急事態宣言! (その3)
オートバイ用/自転車用ヘルメットのメーカーとして、各シーンで頑張っている「人」を通じ、ご本人によるレポートやコラムなどを掲載しています。
今回は自転車ジャーナリストの浅野真則さんによる、自転車用ヘルメットを取り巻く危惧すべき現状レポートの3回目。安心・安全なヘルメットの選び方について解説していただきます。
前回まででヘルメットには自転車用ヘルメット以外にもさまざまなヘルメットがあることが分かりました。では、自転車に乗るときに自転車用以外のヘルメットをかぶっても大丈夫なのでしょうか? そのあたり、徹底的に調査しました。
🪖そもそも法律で定められている自転車乗車時のヘルメットとは?
2023年4月1日から全年齢を対象に自転車乗車時のヘルメット着用が努力義務化されました。前回の記事で見たように、ヘルメットにはさまざまな用途のものがあります。
ここで次のような疑問を感じる人がいらっしゃるかもしれません。
「自転車に乗るときかぶるヘルメットについて、何か規定があるのでしょうか?」
「自転車用のヘルメットでなくても、ヘルメットであれば何でも大丈夫なのでしょうか?」
実は、自転車に乗るときのヘルメットの規定については、道路交通法に次のような規定があります。
📖道路交通法第63条の11
第1項
自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。
第2項
自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
第3項
児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
つまり、自転車に乗るときは「乗車用ヘルメット」をかぶるよう努めなければならないことが分かります。ただし、2023年7月現在、自転車乗車時のヘルメット着用は「努力義務」なので、かぶらなくても特に罰則があるわけではありません。
ところで、乗車用ヘルメットとは何でしょうか? これについては道路交通法施行規則第9条の5に記されています。
📖道路交通法施行規則第9条の5
法第71条の4第1項及び第2項の乗車用ヘルメットの基準は、次の各号に定めるとおりとする。
1 左右、上下の視野が十分とれること。
2 風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること。
3 著しく聴力を損ねない構造であること。
4 衝撃吸収性があり、かつ、帽体が耐貫通性を有すること。
5 衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること。
6 重量が二キログラム以下であること。
7 人体を傷つけるおそれがある構造でないこと。
一般的に乗車用ヘルメットと呼ばれるのは自動二輪(オートバイ)用のヘルメットですが、自転車用ヘルメットも同様の試験項目(※)が設けられていることから乗車用ヘルメットと総称されているのでしょう。
(※乗車用ヘルメットと試験項目がすべて同じという訳ではないそうです。)
ですので、乗車用ヘルメットに関しては、「自転車用ヘルメットとして安全規格をクリアしているものであれば問題ない」という認識で大丈夫です。
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🪖自転車を対象にした保険で定められている自転車乗車時のヘルメットとは?
ここでさらに疑問が出てきました。
条件さえ満たしていれば、カヌー用やスカイスポーツ用などのヘルメットを使っても問題ないのか?ということです。
自転車保険ではどのように自転車乗車時のヘルメットについてどのように規定しているのでしょうか?
一例としてau損保の「自転車向け保険」の「ヘルメット着用中補償」にヘルメットに関する規定を紹介します。
それによると、「対象となるヘルメットを正しくかぶっていないときは補償の対象外となる」とあり、対象となるヘルメットとして「同社の定める安全基準を満たした自転車用ヘルメット」または「二輪車用・原付用の乗車用ヘルメット」と明記されています。
二輪車用・原付用のヘルメットは、自転車乗車時にかぶるには重くてオーバースペックなので、現実的には自転車用の安全規格を満たした自転車用ヘルメットをかぶることになるでしょう。
同保険で紹介されている自転車用の安全規格としては、前回紹介したようなCE EN1078などの安全規格が挙げられていました。
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⚠安全規格をクリアしたヘルメットをかぶらないと事故の際に不利益が生じる可能性も…
自転車乗車時のヘルメット着用は、2023年6月現在、努力義務であり、もし着用しなくても道路交通法の罰則があるわけではありません。だからといって「かぶらなくてもよい」というわけではありません。
先ほど紹介したau損保の自転車向け保険のヘルメット着用中補償では、ヘルメットをかぶっていなかった場合は補償が受けられません。また、作業用ヘルメットやスキー用のヘルメットなど自転車用の安全規格をクリアしていないヘルメットをかぶっていた場合は補償が受けられないことになります。
そうでなくても、自転車乗車中の事故で、自転車用の安全規格をクリアしたヘルメットをかぶらなかったことでケガをするなどの被害が発生した場合、ヘルメット非着用だったことや適切なヘルメットを使っていなかったことが自転車側の過失として評価されることも考えられます。これによって事故の過失割合が増えるなどの不利益が生じる可能性があるわけです。
このことからも、自転車に乗る際のヘルメットを選ぶ際は、自転車用ヘルメットとして安全規格をクリアした製品を選ぶことが重要であると言えるのです!
次回はまとめとして自転車用ヘルメットの選び方についてお話しします。
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