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書籍【「AIクソ上司」の脅威 2030年、日本企業の序列がひっくり返る】読了

https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/B0CPY18CFX

◎タイトル:「AIクソ上司」の脅威 2030年、日本企業の序列がひっくり返る
◎著者: 鈴木貴博
◎出版社:PHPビジネス新書


刺激的なタイトルだが、読み進める内に、自分自身の背筋が寒くなってしまった。
私自身「AIクソ上司」に片足突っ込んでないか?
これからの時代は、AIが数々の仕事を担っていくだろう。
職場の中は効率化され、少人数で生産性を上げることができるから、1人の担う範囲が大きく広がっていく。
それもAIを使いこなして対応するから、過度な負担になることは無いだろうと思う。
しかしながら、それは「その状況に対応できる人」だ。
AIを使いこなせば生産性は爆上がりする訳だから、担う仕事が多くても対応できるだろう。
AIを使いこなせない人は、非効率ながら人力で手計算で作業をしていくのだろう。
しかし、残念ながら手計算で対応できる仕事は、もはや未来にはほとんど残されていない。
その程度の計算こそAIが秒で完了するし、何ならすべて自動化されていて、秒もかからず瞬時に終了する。
そんなAIを器用に使いこなす上司が現れたら、部下は正直たまったものではない。
部下は経験が浅く仕事が遅いのは当たり前だからだ。
そんな部下にイライラして、上司がAIを使って仕事を瞬時に終わらせてしまう。
これでは部下が益々育たない。
上司が優秀という話ではない。だからタイトルが「クソ上司」なのだ。
結局、自分の部下を成長させずに、仕事の機会を取り上げて自分だけ生産性を上げて満足しているなんて、クソ以外の何者でもない。
こんな上司が、AIの進化によって、これから多数生み出されていくということなのだ。
確かに、部下に仕事を頼めば、出来上がったものをチェックしなければならないし、間違いを修正するのであれば、それは時間も手間もかかる無駄な作業だ。
だったら最初からAIにやらせてしまえとなるが、それでは部下は仕事の機会が益々奪われて、成長のチャンスが無くなってしまう。
この状況を覆すのは、実は相当に難しい。
仕事の中ではAIを使う機会が益々増えるからだ。
便利なツールは使った方が良いのだから、効率化は益々進んでしまう。
これはもしかしたら、資本主義を選択している以上、避けることができない命題なのかもしれない。
AIが奪うのは、仕事だけではないということだ。
AIによって、人間が成長する機会すら奪われてしまう。
人間を育成するという仕事も、AIが担っていく可能性はあるが、益々AIとどう対峙するかを真剣に考えて対応していかないと、取り返しのつかないことになりそうだ。
テスラのギガファクトリーの話は、本書内で初めて知ったのだが、益々「発想を変えていかなければいけない」と感じたエピソードだ。
確かに、工場をPC上でデジタルツイン化して、AIを使って何度もシミュレーションすれば、最適な工場ラインを組み上げることができる。
そのシミュレーション後から、実際の工場ラインを組み立てるなんて、本当にやることが賢い。
こんな当たり前のことすらも、今までは思いつかなかった。
SDV(Software-Defined Vehicle)について、現在盛んに議論されているが、本当に日本勢は出遅れてしまったのかもしれない。
正直私自身、その本質を理解していなかったし、本書がかなり勉強になった。
トヨタがテスラと比較して、SDVでは10年以上遅れているという指摘だが、これも日本固有の課題だと思う。
イノベーションのジレンマとも言えるが、今までハイブリッド車で世界を牽引していたのだから、全社の方針としてEV車に完全シフトする訳にはいかないのは理解できる。
トヨタは今でも全方位戦略を取っているが、この自動車産業を巡る戦いにおいては、実はEV車化することが本質ではなく、勝負はSDVだったということなのだ。
戦いが始まる前から、このことに気付くのは相当難しいだろう。
走り屋であり、車屋であり、ハードウェアの製造に誇りを持っていればいるだけ、戦いの場が実はソフトウェアだったというのは、盲点としか言いようがない。
これこそが、ゲームチェンジの怖さだ。
完全にテスラ&中国勢に殴り込みをかけられたようなこの新ゲームに対し、日本勢はどう対抗していくのか。
かつて日本の家電や半導体が世界を席巻したことがあったが、今では見る影もない。
自動車産業も同じ道を辿ってしまうのだろうか。
そう考えると、本当に恐ろしい。
将来日本に残る産業は、本当に観光業くらいしかなくなってしまうのかもしれない。
そうなると、経済的にはGDPランクでも世界の上位をキープするのは相当に厳しくなる。
世界における日本のプレゼンスが下がれば下がるほど、日本は二流扱いされ、後進国と見られていく。
その状況で、国内の日本人が、豊かに暮らし続けられるとは到底思えない。
自分自身、これからの未来にどうやって戦っていくかを真剣に考えてしまう。
「AIの台頭によって、意味のない仕事が益々増える」という指摘についても、その通りだと感じてしまった。
余計な仕事が増えるのはAIが作り出す訳ではなく、AIに仕事を奪われた人間が作り出すものだ。
確かにAIが進化して、仕事が効率化すれば、人員は余ってしまうだろう。
これが少子高齢化、労働人口激減化の日本であれば、仕事がさらに効率的になって、生産性が爆上がりしてハッピーになれるはずであるが、話はそんなに単純ではないということだ。
人間とはプライドの生き物だ。(AIにはプライドがないから、余計に面倒だ)
仕事がなくてブラブラしていると、後ろめたさがあるように、自身の尊厳に関わってくるのだろう。
みんなが働く必要がない未来であったとしても、結局は何か「やること」を見つけて、作業を行う。
究極の暇つぶしだ。
社会のためになることを淡々と行えればよいのだが、これも単純な話ではない。
人間とは、周囲の人から褒められたいし、認められたい生き物だ。
自分が何らかする行為に対し、直接誰も何も目を向けてくれなければ、その作業をし続けるモチベーションを維持することは相当に難しい。
結局、何の役に立つかは分からなくても、その人の尊厳を保つためだけの仕事が生み出され続けるのだと思う。
これは、AIが進化した未来の話だけではない。
今現在ですら、会社の中で何をやっているか不明な人が少なからず存在する。
ブルシットジョブとはよく言ったものだが、どうでもいい仕事が、日々生み出されていくのだろうと思うとゾッとする。
しかし、もし自分がAIに仕事を奪われて、その立場になってしまったらと思うと、さらにゾッとしてしまうのだ。
やはり時代がどう変化していくのか。その本質は何なのか。
見極める力を磨いていかなければいけない。
自分自身が「AIクソ上司」になっていないか、戒めなければいけないと思った。
(2024/10/16水)


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