書籍【戦わない採用~人材獲得競争時代の「リファラル採用」のすべて】読了
https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/B0BZCDZRCL
◎タイトル:戦わない採用~人材獲得競争時代の「リファラル採用」のすべて
◎著者:鈴木貴史
◎出版社:日本能率協会マネジメントセンター
採用は大変な競争環境になっている。過去のやり方では採用ができなくなっており、発想を変える必要がある。
労働人口が減少しているから当然であるし、少子化の影響で毎年社会人として出てくる人数も減少しているのだから、厳しくなっていくのは当然である。
この影響で、採用側の作業にも大きな変化が起きている。
教科書通りの作業を行えば、人材が採用できた時代はとっくに終わり、一見時代に逆行しているようではあるが、知り合いを熱意で誘ってくる方式に回帰しているのだという。
これは良く考えれば当然だ。
外部エージェントに大枚をはたいても結果が出ないのであれば、自分たちで足を使って営業するしかない。
まずは身内から協力してもらうということであるが、協力する社員は当然人事畑ではない。
知り合いを紹介するメリットが大きくなければ、手間を割いて協力してくれることはないだろう。
ここで大きなポイントは、手間の問題だけでなく、自社に相当な愛着がなければ、他人を紹介するはずがないという点だ。
これは最早リファラル採用のテクニカルな部分ではない。
人間の気持ちの根幹部分に触れるところが、実はリファラル採用では重要ということなのだ。
当然であるが、良い会社でなければ、自社に友人を誘うことはないだろう。
そうなると、リファラル採用の制度を整えることも重要だが、それよりも、在籍社員のエンゲージメントをどれだけ上げるかが重要となる。
採用担当者にここまでのことを負わせるのは現実的には無理で、理想を言えば、採用担当者とは別で社内エンゲージメント向上の担当者がいるべきだろうと思う。
手間ばかりかかっているように見えるが、正直言ってここまで採用に対して本腰を入れなければ、本当に優秀な人材は採用できない時代なのだ。
実はここにも落とし穴はある。
そもそも労働者不足なのだから、転職のハードルが下がっているのは時代の流れだ。
リファラル採用の有無に関わらず、社内エンゲージメント向上を図るのは当然で、既存社員だって他に良い転職先が見つかれば、容易に辞めていってしまうだろう。
穴が空けばふさぐ必要があるために、人員を採用しなければいけない。
しかし、なかなか埋まらない。
すると、今まで5人で行っていた業務を、一時的にでも4人でこなすことになり、1人当たりの負荷が増えることになる。
ここでいつまでも人員の補充がなければ、この4人の中からさらに1人が辞めないとも限らない。
今の人事は確かに採用が非常に大切で重要だが、社内のあらゆることに目を配って気を遣う必要がある。
人事担当者の人数を増やして、対応していくしかない。
社内のコスト部門であるから、本来は人員を増やすことが難しいセクションではあるが、ここは背に腹は代えられない状況だ。
人数が増えれば、連携するためのコミュニケーションコストも増大していく。
忙しさはなかなか解消されず、人員が増えても手が回らない状況はあまり変化がない。
ここだけ考えても、企業の経営戦略がイコール人材戦略になっている現在、経営者の判断は益々難しくなっていると思う。
リファラル採用は当然選択肢の一つではあるが、これだけで課題が解決するという話でもない。
現状はやれることを総動員して、人材獲得に奔走している状態だ。
大変な時代になったものである。
これからの企業活動は一事が万事こういう状態である。
採用については、過去の成功体験がほとんど役に立たないばかりか、下手に成功していると、昔ながらのやり方を踏襲してしまい、速やかなピボットができない。
その内に、他社の方が優位になり、益々人材獲得競争に負けてしまう。
悪循環に陥る前に、何としても企業としては競争力を高め、同時に良い人材を採用し、さらに社員の質を上げるべく育成にも力を入れていく。
改めて言葉で記せばこの通りなのだが、実行するのは相当に難しい。
本書はリファラル採用に関する指南書であるが、それ以前に人事戦略、経営戦略をどうするかが大きな課題だ。
社員はこの先10年以上働くかもしれないために、それこそ真剣に考えざるをえないが、未来を予測するのは本当に難しい。
答えは単純ではないが、人材が離れていく会社に未来がないことだけは確かだ。
「良い会社」に明確な定義はないのだが、少なくとも働いている社員が活き活きとやりがいを持って働ける環境を作りたい。
当たり前であるが、愚直にそれを目指すことが重要だと思っている。
(2024/8/25日)